NHKドラマ「脚本の完成前でも対価」に見る"覚悟" 連ドラ界を変える画期的な取り組みが始まった
「WDRでの活動期間中は、内規に従ってお支払いします。ただし、会議への欠席や提出物の遅延が続く場合は、この限りではありません。途中で参加をとりやめていただく可能性もあります。また、放送が決定した脚本については、通常の番組制作と同じように内規に従って脚本料を支払います」
一般的には完成した作品にのみ対価が支払われる業界において、きわめて誠実な企画であった。しかも、この不景気の時代に、である。
第1期の応募総数は2025人。そこから10人が選抜され、7カ月の開発活動を経て、『3000万』を作るために絞られたのは弥重早希子、名嘉友美、山口智之、松井周の4人。
松井は演劇界では著名な作家であるが、テレビドラマの世界では実績はそれほどなく、4人ともほぼ無名と言っていい。そんな彼らをフィーチャーするために、クレジットは太い大きな文字にした。何から何まで脚本家に光を当てるプロジェクトだったのだ。

『3000万』の成功によってWDR第2期の活動が決定、追加メンバーの募集をかけている。なぜ、このようなドラマとプロジェクトが生まれ、継続できたのか。企画者であるディレクターの保坂慶太さんとプロデューサーの上田明子さんに聞いた。
主人公が決して悪を懲らしめる立場ではない
地方都市で共働きしている夫婦(安達祐実、青木崇高)はある日、ソラ(森田想)と接触スレスレの交通事故を起こす。ソラが持っていたカバンを息子(味元耀大)が家に持ち帰ると、そこには3000万円が入っていた。そこから間の悪いことばかり起こって、夫婦はとんでもない恐怖を体験していく。
好評の要素としては、以下のようなことが挙げられる。
・夫婦を支える刑事を演じる野添義弘の人情味
・3000万円をめぐる犯罪者たちを、森田想、木原勝利、内田健司ほか、芝居(心理)が読めない新鮮なキャスティングにすることで生まれた、底知れない怖さ
・ハラハラドキドキ感。スピーディーに勢いよく転がっていき、それでいて単純でなく練られているストーリー
・題材が闇バイトでタイムリー。ほどよい社会性
無料会員登録はこちら
ログインはこちら