幻に終わった「核禁条約会議」オブザーバー参加 核兵器「先制不使用宣言」こそ核廃絶への第一歩
与党公明党のスタンスも政府と違いはない。同党は2009年夏、アメリカに「核兵器の先制不使用」を宣言するよう働きかけることについてどう考えるかと尋ねたアンケートで、「条件付きで賛成する」を選んでいる。だが、その条件は「国際社会全般のコンセンサスが形成されることが先決」というものだった(ICNND日本NGO連絡会「各政党回答表」)。
要するに、アメリカが検討している一方的先制不使用宣言には反対ということだ。その政党が核兵器禁止条約を支持できるはずがない。2021年2月に筆者がこの条件を撤回してはどうかと問い合わせた際の公明党の核問題担当者の答えは条件なしでアメリカの一方的宣言を支持することはできないというものだった。
公明党の斉藤代表が核兵器禁止条約に反対していることは、核兵器禁止条約推進のためのプロジェクト「議員ウォッチ」のサイトで斉藤議員の項を見れば、すぐに分かる。核兵器禁止条約に「賛成」と回答しているが、「コメント欄」で紹介されている斉藤議員の発言(2019年3月17日)が、実際はそうでないことを示している。
「核保有国の不参加に関しては、条文の表現を変えるなど、保有国が参加できるような努力をもっとすべきだった…(中略)…唯一の被爆国として、核兵器禁止条約に参加すべき。一方で、核兵器禁止条約が日本の安保体制、核の傘と矛盾しないという論理構成がいる」
では、オブザーバー参加すれば、核兵器禁止条約の署名・批准や核廃絶が近づくと公明党は考えているのだろうか。
冒頭で触れた石破首相との面談で斉藤代表は、日本は「核保有国と非保有国の橋渡し役を担うべきだ」「被爆の実相を通して核兵器の非人道性の共有を図るなど積極的な役割を果たすべきだ」と主張した(公明党ニュース2024年11月28日)。ここからは、オブザーバー参加が日本の条約加盟や核廃絶を早期にもたらすという道筋は読み取れない。
立憲民主・岡田議員と公明党の主張の比較
ここで、公明党の主張の実態を浮き彫りにするために、比較対象として、旧民主党政権で外相を務めた立憲民主党の岡田克也衆議院議員の主張を見ておこう。先に触れた「議員ウォッチ」の岡田議員の項のコメント欄で紹介されている主張(2021年2月12日)は次の通りだ
「(日本は北朝鮮、中国、ロシアという3つの核保有国に囲まれており)日本自身の安全のためにアメリカの核の抑止に頼らざるを得ない現実もある。したがって核兵器禁止条約に参加できない」
これは上に見た斉藤議員の実際の主張の核心部分とほぼ同様と言えよう。
他方で公明党と岡田議員の大きな違いは、アメリカによる先制不使用宣言についての立場だ。岡田議員は、宣言を支持し、アメリカとともに核軍縮を進めることを提唱している。
毎日新聞のインタビュー(タイトルは「核の傘のもとでも『先制不使用宣言』は可能だ」)(毎日新聞2022年3月4日)において、岡田氏は次のように論じている。
「核は核攻撃を抑止するためにあるのであって、核以外の攻撃を抑止することまで核の傘に期待するのは、非人道的であり、おかしい」
「(就任したばかりの)バイデン大統領は核軍縮に強い思いを持っている。このチャンスに日本は米国が核の数と役割を減少させるための外交努力をしっかりと後押しすべきだ。米国とともに核軍縮の新たな流れを作り出す。それこそが『橋渡し』ではないか」
オブザーバー参加を求める関係者は、単に「オブザーバー参加を」「核兵器国と非核兵器国の橋渡しを」とのキャッチフレーズを繰り返すだけではなく、参加した場合に主張すべき点や先制不使用問題についての議論を深めるべきだ。これは第4回締約国会議に向けての課題だ。
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