幻に終わった「核禁条約会議」オブザーバー参加 核兵器「先制不使用宣言」こそ核廃絶への第一歩

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オブザーバー参加を要求する人々は、マスコミも含め、ドイツが堂々とオブザーバー参加しているのだから日本もそうすべきだと主張することが多い(中国新聞社説2024年11月20日)。その際、ほとんど触れられないのは、ドイツが何を「堂々と」主張したかだ。

北大西洋条約機構(NATO)の加盟国であるドイツは、アメリカの核爆弾の領土内配備(約15発)を受け入れ、いざとなったら自国のパイロットが投下の役目を担うという体制にある。この「核共有」と呼ばれる体制の下で、ドイツ保有の核・通常兵器両用航空機(DCA)を使った核爆弾の模擬投下訓練を、ドイツのパイロットがアメリカから定期的に受けている。

ドイツのオブザーバー参加が発表されたのは、連立政権(当時)の与党を構成するドイツ社会民主党、緑の党、自由民主党の3党による連立合意書においてだった。

2021年11月24日のこの文書には、オブザーバー参加と、老朽化した核共有体制用航空機の後継機をアメリカから早期に購入するという2つの決定が記されていた。

反核・軍縮運動の側にしてみれば、核共有体制を継続しないと宣言したうえでオブザーバー参加するというのが理想的だった。しかしそれはかなわなかった。その意味で、この合意書の決定は、反核運動の敗北を意味するものだと言える。

現に2022年6月の第1回締約国会議に参加したドイツ代表の発言は、核共有体制維持の決定を反映したものだった。そのことは、当時の各紙の報道を見ればすぐに分かる。

「核兵器が存在する限り、NATOは核同盟であり続ける」「核抑止を含め、NATO加盟国としての立場と一致しない核禁条約には加盟できない」「(核廃絶・軍縮は)すべての核保有国が信頼性のあるステップを踏んで初めて達成できる」。ドイツはそう主張したうえで、核兵器禁止条約の加盟国との「建設的な対話に関与し、実際に協力する機会を模索していく」と述べている(毎日新聞2022年6月22日)。

石破首相はドイツの発言に関心

石破首相は、2024年12月6日の参議院予算委員会でオブザーバー参加を真剣に検討するとの立場に変わりはないかと問われ、「核共有国」のドイツに触れつつ、「オブザーバー参加した国がどういうふうな議論を展開しているのか、核抑止というものと核廃絶というものをどうやって論理的につなげていくかということをきちんと考える」と答えている。

石破首相は長年、日本でも核共有の導入を検討すべきだと主張している。その首相のもとでオブザーバー参加が実現した場合、日本はドイツにならって、「核抑止を必要とするから条約に参加することはできない」と、“堂々と”主張する可能性があった。

岩屋外相は、オブザーバー参加という選択肢は、「我が国の核軍縮外交の考え方を不明瞭なものとし、その主張や取組の訴求力を損ねかねないという判断をした」と述べている。

では、オブザーバー参加が実現した場合、核兵器禁止条約への日本の署名・批准や核廃絶は近づくのか。オブザーバー参加を要請する人々は、きちんと議論すべきだろう。でなければ、参加要求が自己目的化してしまう可能性があると言えよう。

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