「TAKANAWA GATEWAY CITY」がまちびらき ルミネが手がける「ニュウマン高輪」の挑戦とは

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ルミネ 代表取締役社長 表 輝幸
JR東日本が高輪ゲートウェイ駅周辺で進めている「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」が3月27日、まちびらきを迎える。同社子会社のルミネの新しい商業施設「NEWoMan TAKANAWA(ニュウマン高輪)」も同日、2ショップが先行開業する。ルミネ代表取締役社長の表輝幸氏はJR東日本出身だが、JR東日本でさまざまな改革を推進してきたほか、ルミネ社長就任後は売上高過去最高更新などを牽引してきた実績がある。「ニュウマン高輪」でどのような挑戦をしようとしているのか取材した。

ルミネ史上最大規模となる「ニュウマン高輪」が開業

――3月27日のTAKANAWA GATEWAY CITYのまちびらきと同時に一部開業する「ニュウマン高輪」は、TAKANAWA GATEWAY CITYの3つのビルにまたがり、延べ床面積約6万平方メートル、店舗数約200と、ルミネ史上最大規模となります。どのような商業施設になりますか。

ルミネ 代表取締役社長 表 輝幸
ルミネ
代表取締役社長
表 輝幸

 TAKANAWA GATEWAY CITYは、延べ床面積約84万5000平方メートルもの国内最大級、東京で最後ともいわれる大規模なまちづくりです。既存の街を変えていくにはさまざまな制約がありますが、ここではまさにゼロから街をつくることができます。

私は東京駅丸の内駅舎の保存・復原プロジェクトにも携わっていましたが、100年以上前の先人たちが東京駅建設に懸けた思いや努力を知り、非常に感銘を受けました。高輪ゲートウェイ駅周辺でも、工事中に日本初の鉄道開業(1872年)の際に造られた「高輪築堤」の遺構が見つかりました(2021年9月に国の史跡に指定。日本で初めての鉄道が海の上を走ったイノベーションの地)。

TAKANAWA GATEWAY CITYは、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」として新たなビジネス・文化が生まれ続ける街を目指しています。私たちも既存の「LUMINE(ルミネ)」や「NEWoMan(ニュウマン)」でできなかった新たな挑戦をしたいと考えています。

――ルミネでは中期経営計画で「グローバル&サステナブル」を掲げています。どのような考えなのでしょうか。

 一言で言えば、日本を元気にしたいということです。残念ながら今、日本は国際競争力のランキングも低下していますが、長い歴史と文化があります。200年以上の社歴がある企業が日本には1300社以上もあり、世界ダントツ1位の数を誇っています。まさにサステナブルです。

当社は24年8月、シンガポールにルミネのグローバル旗艦店をオープンしました。そうしたこともあり、私も海外視察に行く機会が増えたのですが、そのたびに、日本の文化や感性・精神性など日本の強みを感じます。日本から発信できることがまだまだたくさんあると考えています。

ニュウマン高輪イメージ画像1
※画像はイメージです

広く地球を見ればさまざまな課題もあります。例えば、ファッション産業は環境への負荷が大きいとされており、環境負荷低減は私たちの使命の1つだと考えています。昨年6月から、不要になったファッションアイテムを買い取り・回収して、リユースやリサイクルを行う「anewloop(アニューループ)」も行っています。また、日本では、毎年約2万トン以上のコスメティックが廃棄されていますが、ルミネではこれらのコスメの再循環を目指す販売イベント「COSME Re-Go-Round STORE」(コスメ リゴランド ストア)なども行っています。

いずれにしても大切なのは、楽しみながら地球課題・社会課題解決に取り組むことだと思います。「やらされ感」では長続きしませんから。「ニュウマン高輪」でも、楽しく地球課題・社会課題を解決できる仕掛けをつくり、TAKANAWA GATEWAY CITYが目指す地球益(ちきゅうえき)の実現の一助になればと考えています。

「ニュウマン高輪」におけるルミネの3つの挑戦

――「ニュウマン高輪」では既存のルミネやニュウマンでできなかった新たな挑戦をするとのことですが、具体的にはどのような試みですか。

 「100年先へ継承する、“まだ見ぬ生活価値づくり”への挑戦」「生活価値を基軸にした、“地球価値づくり”への挑戦」「地域社会と共に歩む、“まちづくり”への挑戦」の3つを掲げています。

“まだ見ぬ生活価値づくり”への挑戦では、大型サウナや高層建築物では世界でも珍しい、本物の植物に包まれた空間、散策から食事までペットと1日過ごせるペットフレンドリーな場などを設けます。

“地球価値づくり”への挑戦では、先ほどご紹介した衣料品などの資源循環のほか、アクアポニックス栽培を採用した循環型ファームでは、障がいのある方たちが自分らしく働き、地域の方々と一緒にブランドや商品をつくるなどさまざまな取り組みを行います。

“まちづくり”への挑戦では、3300平方メートル以上の書店・アート・遊び心を刺激するプレイゾーンと、今までありそうでなかった大人と子どもが融合する空間や、住宅街に隣接するこの場所ならではの新しい取り組みを展開していきます。地域の方々に参加いただけるお祭りやイベント、ワークショップなども開催する予定でさまざまな交流機会も創出します。地域の中学生や高校生向けに当社の社員が講師になって行う出張授業を行ったり、100年先の未来づくりに向けたディスカッションなども行っており、地域と共に皆でまちづくりに挑戦してまいります。

ニュウマン高輪イメージ画像2
※画像はイメージです

2ショップ先行開業、融合エントランス空間にも特色

――3月27日には、「ブルーボトルコーヒー」「ニコライ バーグマン」の2店が先行開業しますが、両店の立地にも特色がありますね。

 従来の複合ビルエントランスは、オフィスエリアと商業エリアが明確に区分されてきました。「ニュウマン高輪」では、オフィスエントランスとして必要な機能は備えながらも、ショップとエントランスの境がない新たな融合空間を提案します。地域のお客さまもいらっしゃればベンチャー企業の人たちも来られる、そこで掛け算が起こるような、まさにオープンイノベーションの実験場です。

実はブルーボトルコーヒーには、私自身がサンフランシスコの本社に行って、ぜひ出店してほしいと交渉しました。意図を伝えたところ賛同してもらえました。同店以外にも国内外の意欲ある店舗にさまざまな提案を行っています。これから面白いことがいろいろとできるのではないかと期待しています。

オープンイベントでは、「高輪リンクライン」と呼ばれる約300メートルのストリートを活用したマルシェを開催する予定です。日本の文化や精神性を感じられるイベントも定期的に開催する予定です。直近では、日本各地の酒蔵を応援するイベントなども計画しています。

まちびらきマルシェの写真
※画像はイメージです
※画像はイメージです
※画像はイメージです

100年先の未来を見据えたまちづくりを目指す

――表さんは、JR東日本で東京駅内の商業施設「グランスタ」の開発などを牽引し、ルミネ有楽町やニュウマン新宿の立ち上げにも成功されました。さまざまなDXを実現してきた秘訣はどのような点ですか。

 成功ばかりではありません。失敗もしました。そのたびに、部下やパートナー企業の皆さま、お客さまに助けていただきました。そこで感じたのは、大切なのは「何のためにやるのか」という「思い」で失敗を恐れず挑戦することです。

私は36歳のとき、JR東日本の駅弁事業子会社の社長にグループ最年少で就任しました。当時は業績も悪く、立て直しが必要でした。社内では「もっと安くすべき」という声が多かったのですが、私はむしろ「高くても、ここでしか食べられないようなおいしいお弁当を作ろう」と提案しました。なぜなら、東京駅に来られる多くのお客さまは新幹線でおいしいお弁当を食べるのを楽しみにされているからです。

「旅に出るお客さまにワクワクしていただく時間価値を提供するのが私たちの仕事じゃないのか」という思いで、社員を説得しましたし、社員たちも腹落ちして、考え挑戦してくれました。今では、「グランスタ」での駅弁事業は収益の柱になっています。

――「ニュウマン高輪」においても、その思いを大切に、挑戦を続けていくということですね。

 ルミネのコーポレートメッセージは「わたしらしくをあたらしく」、理念は「お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみたす。」です。ルミネで売っている商品は、ネットでも買えるかもしれません。それでも足を運んでいただけるのは、ここに来ると、お客さまがワクワクドキドキし、自己発見や自己実現ができ、さらには幸福を感じられるからだと自負しています。

「ニュウマン高輪」も、お客さまの期待を超えるような感動を提供する場にしたいと考えています。もちろん、それは私たちだけではできません。さまざまな企業、パートナーの皆さまにぜひ応援団になっていただき、一緒に100年先に続く未来の姿を描き、実現していきたいと願っています。「こんなことをやってみたい」という提案があればぜひご相談いただきたいですね。3月27日の開業は決してゴールではなく、これからどんどんアップデートしていきます。「実験場」ですから、失敗を恐れず積極的に挑戦を続けていくつもりです。