「例えば」「要するに」駆使する人の言語力が高い理由 "抽象"と"具体"の往復が言語脳を鍛える
しかし、実際は飲酒マナーが悪い若者ばかりではなく、むしろ中高年世代の飲み方に辟易している20代や30代は少なくない気がします。そう考えれば、この60代男性の「抽象と具体」の思考は正しくできていないということになるわけです。
「たとえば」「要するに」で思考力を鍛える
具体と抽象の往復をより耳慣れた言葉で言い換えれば、「具体」⇔「抽象」=「たとえば」⇔「要するに」ということになります。特に小中学生にこの概念を教えるには、こちらのほうがいいでしょう。
子どもの頃からこの思考トレーニングができていると、小学校の低学年でも論理的でわかりやすい話ができるようになり、必然的に国語力も上がっていきます。国語力が上がれば算数や理科の問題を読む力も上がるのです。もちろん、世の中の見方も具体と抽象を往復しながら、深掘りして考察できるようになるでしょう。
練習法とすれば、2人1組で「要するに」側と「たとえば」側に分かれ、交互にお題を出して答えをいい合います。
B「(要するに、)明治の文豪!」
A「ピンポン!」
B「手塚治虫作品といえば……」
A「たとえば……ブラック・ジャック、火の鳥、鉄腕アトム」
B「正解!」
これを繰り返すわけです。こうしてみると「要するに」側のほうが簡単そうに見えますが、少し複雑なワードを繰り出されると、瞬時に答えを見つけるのは簡単ではないと思います。たとえばビジネスパーソン同士であればこんなやり取りでもいいでしょう。
B「(要するに、)経済用語」
A「括りが大きすぎ! ダメ」
B「えーと、要するに金融商品!」
A「まぁいいでしょう!」
これをある程度繰り返したら今度は役割を交代して、具体と抽象の両方の脳を鍛えていけばいいでしょう。これが完全に身についてくると、会話力も文章力も底上げされ、商談でも雑談でも、相手にうまく伝えられる力が養われます。
以前、私は大学で学生たちに「何か最近あったおもしろい話を10秒でお願い。はい、そっちから順番に」と無茶ぶりして何度かやってもらったことがあるのですが、上手に話せる学生は10秒でも具体と抽象をうまく使いこなします。
「こんな事件があった。それって結局、これの一部なのでした」とか、「ずっとモヤモヤしてたことの答え、それは要するにあれのことだったんです」といったように、具体や抽象をどれほど意識しているかはわかりませんが、彼ら彼女らなりにおもしろくまとめてくれます。
いずれにせよ、具体的思考と抽象的思考の両方をバランスよく往復することで、私たちの思考は磨かれていきます。そして、それには言語化力が求められるということを、ここであらためて理解してください。
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