人と企業が選ぶ「さいたま市」職住近接の可能性 働きやすさと暮らしやすさを両立する都市

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さいたま市のイメージ合成
新型コロナウイルス感染症の5類移行などをきっかけに、多くの企業でオフィス回帰への揺り戻しが見られている。注目は、オフィスに「コミュニティハブ」としての機能を強化する動きが顕著なことだ。景気動向をつかむ指標となるオフィス空室率の最新動向や、企業の抱える人材確保の課題などの観点から、オフィス市場の情勢と企業が注目するさいたま市について、不動産のプロや実際にさいたま市に立地した企業の声を聞いた。

オフィスづくりのキーワードは「コミュニケーション」

コロナ禍の収束に伴い、テレワーク中心からオフィス回帰の動きがあり、ビジネス環境の変化が見られる。この状況について、法人向け不動産サービス大手CBREの日本法人、シービーアールイーのリサーチディレクター、岩間有史氏は「オフィスの役割が今まで以上に明確になってきた」と分析する。その役割を示すキーワードは「コミュニケーション」だ。

シービーアールイー リサーチディレクター 岩間有史氏
シービーアールイー
リサーチディレクタ―
岩間 有史氏

「コロナ禍の在宅勤務を経て、社内のコミュニケーションを重視する企業は多くなっています。当社が2023年8月に実施したオフィス利用に関する意識調査では、『コロナ禍以降、増強した・増強を予定しているスペース』(複数回答)として77%が『1人で電話やWeb会議を行うスペース』、次いで40%が『コラボレーションスペース』、39%が『コミュニケーションスペース』と回答しています」

企業の意欲は、オフィス市場にも大きく影響。23年からの本格的な回復基調につながる。

「オフィスをコミュニケーションやコラボレーションのための空間と考える企業が増え、拡張移転や館内増床の需要が高まっています。とりわけ24年に入ってからは企業規模や業種を問わず広がり、それが全国的なオフィス空室率の低下にもつながっています。東京のオフィス空室率は4期連続で下がり、足元の24年第3四半期は4.0%でした」

多くの企業から選ばれるさいたま市

「堅調なのがさいたま市です。2024年第3四半期のデータでは0.9%と、国内主要都市で最も低い空室率となっています」(図1)

さいたま市オフィス需要の底堅さは、23年に大宮駅近くに相次いで竣工した大型オフィスビルがすぐ満床となったことにも表れていると岩間氏は分析する。

「空室率の推移を見ると、16年以降は3%を下回っています。コロナ禍で多少上昇しましたが、23年に2棟の大型オフィスビルが竣工してもなお低い水準となっています。大宮駅周辺からのグレードアップ移転や、近隣エリアからの立地改善拡張移転、新たな拠点開設と幅広い需要の受け皿となりました」

なぜさいたま市は、オフィスの立地として人気なのか。岩間氏は「人材を確保しやすい地域であることが理由の1つだ」と分析する。

「人材確保や離職防止は企業にとって重要な課題です。それがオフィスの拡張移転や環境改善意欲を押し上げています」

人材が集まり職住近接も実現

さいたま市は人口増加数・転入超過数ともに全国トップクラスだ。とくに0~14歳の転入超過数は2023年まで9年連続で全国1位。文部科学省の「令和5年度英語教育実施状況調査」(図2)では、中学3年生の英語力が5回連続全国1位となり、教育に力を入れていることも働き盛りである子育て世代から選ばれている要因の1つとなっている。

加えて、職場と居住地がどちらもさいたま市内にあることで「職住近接」も可能である。通勤時間の短さが従業員の満足度向上につながり、ひいては企業にとってサステナビリティやイノベーション創出の土台になることが期待される。前出の意識調査によると、オフィス選びで企業が最重視する項目は「立地」だ。立地選定においては「従業員の通勤利便性」が最重視されている。(図3)

また、一般消費者を対象とした別の調査では従業員側も職を選ぶ決め手としてオフィスの通いやすさを重視している。(図4)

「働き手は職場への通いやすさを重視していますので、交通利便性に優れたさいたま市はとくにオフィス需要が高まっています。市内には住宅地も多く、職住近接の環境が整っていることから人材採用面で期待できるでしょう。23年に竣工した2つのオフィスビルには、さいたま市内の郊外からの移転事例もあります」。また、立地選定では『災害に強い街』であることも重視されている。さいたま市はおおむね安定した地盤で形成されているため、BCPの観点からも適したエリアである。

アクセス抜群でオフィス・物流拠点として高いポテンシャル

今後、さいたま市では大宮駅周辺やさいたま新都心駅周辺を中心に、大型オフィスの供給が予定されている。2025年度にはさいたま新都心駅近くで(仮称)OMIYA SOUTH GATE増築プロジェクト(図5)が、その後大宮駅東口大門町3丁目中地区、大宮駅西口第3‒A・D地区で再開発ビル事業の計画が進められている。

(仮称)OMIYA SOUTH GATE増築プロジェクト

「まとまった供給となりますが、さいたま市は需給バランスがタイトなオフィス市場であることからも空室率も低い水準で推移することが予想されます。多少供給が増えても、潜在需要が喚起されると考えられるため、さいたま市におけるオフィス市場の伸びしろは大きいですね」

新幹線やJR在来線、私鉄など複数の路線が主要駅に乗り入れ、各方面へのアクセスが良いことも企業からの評価が高い要因の1つである。また、オフィスの立地だけではなく高速道路も首都高、外環道、東北道へのアクセスにも優れていることから、広域的なビジネス拠点となり、物流の要衝としてもポテンシャルが高いと岩間氏は話す。

「さいたま市が交通の要衝にあるということは、製造拠点にとっても大きなメリットが期待できます。製造拠点の国内回帰が進む中で、工場や研究開発拠点の立地としても魅力があるといえるでしょう」

24年度から企業誘致のための賃借料補助金が拡充され、さいたま市へのオフィス移転を検討する企業にとっては追い風だ。(図6)

企業立地に関する補助制度

移転後も、市とその外郭団体であるさいたま市産業創造財団などがビジネスマッチングをはじめ、ブランディング支援や経営相談、新事業の実施に向けた海外展開や産学連携などの手厚い支援を実施している。(図7)

さいたま市の手厚いビジネス支援

人材を確保しやすく、持続可能な成長戦略を自在に描ける拠点として、「さいたま市」は有効な選択肢となりうる。
⇒さいたま市の詳細を見る

さいたま市に立地した企業の声

エンプラス半導体機器

エンプラス半導体機器 代表取締役社長 竹内洋一氏
代表取締役社長
竹内 洋一氏

当社は、世界14の国と地域で事業を展開する精密プラスチックメーカー、エンプラスの半導体関連事業を担っています。エンジニアリングプラスチックの成形技術で培った技術を生かし、半導体テスト用ソケットの設計開発・製造・販売を行っています。

以前の事業所が手狭になってきたことに加え、高付加価値な製品を提供し続けるため、2022年8月に事務所を大宮駅西口に移転しました。設計開発から営業、生産管理、間接部門まですべての機能を集約した近代的なオフィス環境を整備することで、部門の壁がなくなり、活発なアイデア出しができる働きやすい職場が実現しています。

立地環境もオフィス選定の重要な要素でした。通勤の利便性が改善されたことで仕事の質も向上しています。各方面への出張もしやすくなり、海外からの来社も増えました。人材採用面でも会社への交通アクセスの良さは強みになっています。

 

本田技研工業

本多技研工業 チーフエンジニア 石井健一郎氏
チーフエンジニア
石井 健一郎氏

車やバイクなどモビリティやサービス事業を展開する当社は、IT企業との協業パートナーシップ締結を機に、シナジー効果を最大化するため協働オフィスの設置を企画しました。候補地の検討にあたっては、協業パートナーは都内に拠点があり、一方Hondaの実車開発拠点は栃木にあるため、開発連携がしやすいエリアということで、双方からアクセスしやすい大宮駅近くで23年に竣工したオフィスビルを選びました。東京都心と比べてオフィス賃料が低く、開発業務ができる広さを確保できたことも決め手となりました。

立地は、「住みやすい街ランキング」も考慮して選定しました。とくに大宮駅近くは、人材確保のポテンシャルが高く、居住環境も充実しています。実車開発拠点がある栃木エリアから新幹線やJR在来線で通勤できるなど、高い交通利便性も備えています。落ち着いたビジネス街で、開発業務に集中しやすいと社員にも好評です。