来たる2020年、そしてその先のために
日本の玄関口「羽田空港」に、
今何が求められているのか。
国土交通省
このためには、羽田空港のさらなる機能強化による空港処理能力の拡大を図ることが不可欠である。「ただし、現在、羽田空港における国際線の発着回数は約9万回ですが、羽田空港は深夜や早朝を除いてほぼフル稼働といった状況で、これ以上国際線を増やすことができないのです」と杉浦氏が言うように、処理能力拡大のための方策は喫緊の課題と言える。
新たな飛行経路によって国際線増便が可能に
「羽田空港には現在、4本の滑走路があります。発着回数を増やすために、滑走路を増やせばいいという人もいるかもしれませんが、それは現実的ではありません。現在、羽田空港の飛行経路が集中する東京湾上空はとても混雑しており、大きな費用をかけて新たな滑走路を建設しても、飛行経路は複雑化する一方、処理能力の大幅拡大は難しいと思います」(杉浦氏)。実際に、首都圏空港のさらなる機能強化方策を検討するために学者や専門家で構成された「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」では、さまざまな方策が検討された結果、羽田空港については、東京湾上空以外に新たな飛行経路を設定する以外には、選択肢が見当たらないことが分かった。たとえば、夏場に多く見られる南風時(年間平均で運用全体の約4割)に、15時から19時の4時間に限って都心上空を通る新しい飛行経路を導入する等を行うことで、2020年までに約3・9万回の処理能力拡大が可能となるとのことだ。
「羽田空港の機能強化が実現すれば、ビジネスや観光の利便性が増すだけでなく、重要な国際会議の開催や、スポーツの世界的イベントに東京がより組み込まれやすくなることなども期待されます。このように、幅広い領域で、東京、ひいては日本の競争力アップにつながると考えられます」と杉浦氏は今後への期待を語る。
騒音の影響と安全確保 それぞれの対策も万全に
飛行経路の見直しは、羽田空港の機能強化を実現する大きな可能性があると言える。だが、一方で騒音や安全対策の心配もある。騒音について杉浦氏は、「現在運航されている航空機の騒音は、約30年前と比べ30デシベルも低くなっています。10デシベル下がると体感的には2分の1になると言われているので、かなり静かになっています。また、最近ではボーイング787-8型機など、より低騒音の機体も登場しています」と説明する。
国交省ではさらに、音の静かな航空機の空港使用料金を安くするなど、より低騒音化を進める方策を検討しているほか、空港に近い地域では、必要に応じ防音対策なども行う考えだ。安全対策に関しては、機体のチェック、パイロットの養成、地上からの支援をさらに強化する。また、天候不良や機材トラブルなどが発生しても、安全な離着陸を行うための対策を実施している。
日本が引き続きグローバルに存在感を発揮するためには、海外とつながり、海外の成長力を取り込むことが必然である。羽田空港の機能強化により生まれる新たな都市の価値創造に大いに期待したい。