「SIGGRAPH Asia 2024」に世界が熱視線 MICE開催地として存在感を増す東京

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「SIGGRAPH Asia 2024」ウェルカムレセプションの様子
立錐の余地もないほどの参加者で熱気に包まれたウェルカムレセプション
コンピューターグラフィックスとインタラクティブ技術の国際会議および展示会「SIGGRAPH Asia(シーグラフ アジア) 2024」が、昨年12月3~6日まで、世界60の国と地域から8415人が参加して開催された。MICE(※)開催地として人気が高まる東京で対面による開催が復活した会議には、新たな技術や人との出会いを求める参加者が世界中から集まり、連日熱気に包まれた。
※MICE:会議(Meeting)、報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を取ったビジネスイベントの総称

リアルな情報や交流を求め世界の研究者が東京に集結

「SIGGRAPH」は、コンピューター科学を対象とした国際学会ACMの中でCGを扱う分科会と、同会が主催する国際会議や展示会の通称である。展示会は1974年から開催されており、2008年からはアジア地域で「SIGGRAPH Asia」が毎年開催されている。

近年は18年、21年と東京開催が続いており、東京都および東京観光財団のサポートを受け一体となって誘致から開催まで成功を収めている。ただ前回はコロナ禍の影響で国内の参加者に限定されたため、世界中から集まった参加者が対面で発表や議論、交流ができる今回は開催前から注目度がアップ。会場周辺に掲げられたバナーにより会議への機運が一層高まりを見せ、初日から多くの参加者でにぎわいを見せた。

本会議は若手の育成にも力を入れている。今回の学生ボランティアプログラムの募集には定員の約2倍の応募があり、選出された約200人の学生ボランティアが会議をサポートした。学生にとっては、コミュニケーションやチームワークのスキルを身に付けながら、世界的なイベントの運営に携わる貴重な体験が成長の機会となっており、海外から参加したボランティアの一人は「東京は産業界からの参加者も多く、対面のイベントで人脈が広がるのが魅力。ボランティアとして参加する意義はとても大きい」と期待を寄せた。本会議のようなリアルでの偶然の出会い(セレンディピティー)は、技術の発展につながる可能性を秘めていることも魅力の1つ。そうした視点からも、産業界やアカデミアから多くの参加がある東京はリアルな開催の場として注目されており、会場で話を聞いた若手研究者の「ここで得られた最新の情報を、自分の研究室の成長に役立てたい」という声にもうなずける。

研究者やボランティアにほかではできない体験を提供

こうした参加者の期待を裏付けるように、開催日の夕方から催されたウェルカムレセプションには大勢の参加者が詰めかけ、出会いや再会の場となった会場全体が初日特有の活気に包まれ笑顔があふれた。さらに、日本の代表的な文化の1つである歌舞伎の連獅子を舞うショーも行われ、会場を大いに沸かせ、参加者は東京開催ならではの魅力を堪能した。

キーノートセッションの注目度も高く、会議2日目の12月4日には「イッセイミヤケ」のデザイナーとして知られる宮前義之氏が講演。現在同氏は「エイポック エイブル イッセイミヤケ」ブランドで専門家チームを率いて研究開発に取り組んでおり、発表の最後には、高温の蒸気を当てて布を縮めることで独自のストレッチ素材を生み出す「スチームストレッチ」のデモを実施。満員の会場からは大きな歓声と拍手が送られた。

左:「イッセイミヤケ」の宮前義之氏 右:「スチームストレッチ」のデモの様子
左:キーノートセッションの講演後、壇上に詰めかけた多くの参加者の質問に答える「イッセイミヤケ」の宮前義之氏
右:スチームストレッチのデモで服が完成すると会場は拍手に包まれた

最終日には、企業と若者や学生が交流する「プロダクションミートアップ」を開催。企業は自社の技術や魅力をアピールし、学生らは自らのキャリアデザインの参考にすべく、熱心に話し合う姿が多く見られた。大学2年生だという女子学生は「本格的な就活が始まる前に、業界についての知識を得たり、こうしたイベントの雰囲気を体験しようと参加した。SIGGRAPHは初めてだが、VR(仮想現実)などを体験させてもらい非常に興味深かった」と目を輝かせた。

今回の「SIGGRAPH Asia」に限っても、2018年からの短期間に3回にわたり開催地となっている東京。本会議の取材においても、主催者・参加者双方にとって魅力的な都市として捉えられていることが伝わってきた。国際会議の開催地を探すのであれば、やはりまずは「東京」を検討してみる価値は大いにあるだろう。

都市のスケールが大きく 世界中から参加する東京

東京開催の「SIGGRAPH Asia 2024」が成功裏に閉会したのを受け、カンファレンスチェアを務めた東京大学の五十嵐健夫教授に話を聞くことができた。

SIGGRAPH Asia 2024カンファレンスチェア 東京大学大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 教授 五十嵐建夫
SIGGRAPH Asia 2024
カンファレンスチェア
東京大学大学院情報理工学系研究科
創造情報学専攻 教授
五十嵐 健夫

――今回の会議を振り返っての感想は。

五十嵐 前回はオンラインで人と人のつながりをつくるのが非常に難しかったので、今回世界中から多くの参加者に来ていただき、リアルに情報交換やネットワークづくりができたのは非常によかった。

――東京で開催された経緯は。

五十嵐 誘致活動を展開したわけだが、東京の産業自体のスケールがほかの都市に比べて大きく、多くの参加者が見込めること、東京都や東京観光財団による資金面のサポートや海外参加者向けの観光プログラムが手厚いことが優位に働いた。観光ツアーの多様さや、風呂敷の包み方といった日本文化体験が参加者の満足度向上につながっている点も強みだ。

――若手の研究者やボランティアにとって参加の意義は。

五十嵐 私自身、1998年に北米で参加したとき、著名な先生と話をすることができ、デモをして「面白いね」と言っていただいたことで共同研究をするようになった経験がある。そうした研究上の貴重な出会いや、終生の友情をここで築ける点でも意義が大きい。

――今回とくに印象に残っているのは。

五十嵐 どのプレゼンテーションもデモンストレーションも非常にすばらしく、とくに何千人もの人が同じ部屋で同じ経験をしている一体感は、オンラインでは絶対味わえないので、改めてリアルのよさを実感した。

――本会議を含め、MICE開催地としての東京の魅力は。

五十嵐 今回の「東京国際フォーラム」に関して言えば、交通アクセスの面でもロケーションがよく、建物自体も光が入るグラスビルでデザインも魅力があり、さらに季節的に中庭の紅葉が美しくとてもよかった。東京の魅力は、都市と産業自体のスケールが大きく、多くの参加者が見込める点にある。世界から直行便のある空港が近郊に2つあるのも大きい。また、海外の友人の多くは観光面や食べ物のおいしさを高く評価している。そうした総合的な魅力がやはり強みといえるだろう。

お問い合わせ
公益財団法人 東京観光財団(TCVB)
コンベンション事業部
TEL.03-5579-2684
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