「TBS辞めた男」ABEMAで"危険な番組"作る事情 なぜ"命懸けで国境を越える人々"を撮り続けるのか

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映像ディレクターとして、その学びはとてつもなく大きいという。

「僕は自分や取材相手がどう思ったのかということをつねに意識して制作してきたのですが、高橋さんからは主語を“視聴者”に置き換えるように言われました。僕の主語が自分になっていること、視聴者のことを考えて制作する意識が足りないことを見抜かれていました。仕事のときだけでなく、日常生活からも人間の心理や行動を読み取れるようにしておくということを教えられたと解釈しています」

『国境デスロード』は人の感情の機微を大切にして制作した、極めてドキュメンタリーに近い番組だが、大前さんはその過程で心がけてきたことがある。

「『バラエティー番組であることを忘れない』ということです。僕たちはジャーナリストではなく、バラエティー番組のディレクターなので、そこは意識して作っています。あと、MCの東野さんや視聴者がVTRを見たときに、『この人たち大変やな』という感想が出てくる映像は絶対に作りたくない。

貧しい地域や生命の危機を感じるような場所に生きる人たちであっても、『大変そうだね』と距離がある感想を持たせたくないんです。『国境デスロード』に登場する皆さんは、日本で暮らす僕らとは境遇こそ違うけれど、同じ人間だということを自分事のように感じられるような番組にしたいですね」

国境デスロード
深夜、アメリカとの国境に向かうため、寒さに震えながら移動する子どもたち(写真:ABEMA提供)
国境デスロード
深夜に冷たい川を渡ったことで低体温症となり、命の危険に晒された移民。移民家族と一緒に患者をロケ車に運ぶ大前さん(写真:ABEMA提供)

友だちを作りにロケに行っている

そして現在、最終回が配信されている『国境デスロード』。

編集作業の佳境も越え、“無職”に戻る大前さんだが、今後どうしてもやってみたいことがあるという。それは当初、趣味で撮ろうと考えていたあの企画だ。

「『国境タクシー』という企画なのですが、僕がタクシー運転手になって国境を回り、乗ってきたお客さんの話を聞いていくんです。どんな面白い人たち、さまざまな人生と出会えるのか。極論をいえば、僕は友だちを作りにロケに行っていますから。大層な志なんてないですけど、1人でも多くの友だちを作って、その人たちが幸せになるお助けができたらいいなと思っています」

つねに綱渡りの生き方をしているようにも見える、さすらいの映像ディレクター・大前プジョルジョ健太さん。手掛ける映像には、彼にしか描けない世界が写っている。”最高の粗削り”を映像表現する彼の人生は、今後どのような場所へ向かうのか、楽しみでならない。

ジャスト日本 ライター

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じゃすとにほん / Just Nihon

ライター、プロレス考察家。1980年福岡県出身、和歌山県在住。プロレスからビジネスジャンルまで、幅広く執筆活動を展開。現在アメブロで「ジャスト日本のプロレス考察日誌」を更新中。 著書に「俺達が愛するプロレスラー劇場 Vol.1」(ごきげんビジネス出版)「インディペンデント・ブルース」「プロレス喧嘩マッチ伝説」(いずれも彩図社)ほか多数。

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