「TBS辞めた男」ABEMAで"危険な番組"作る事情 なぜ"命懸けで国境を越える人々"を撮り続けるのか

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その内容は壮絶だ。

例えば、ベネズエラからコロンビアへと国境を越える移民に取材した第2回。経済状況の悪化から、コロンビア経由でチリへ向かうという若者は、大きな生ゴミのコンテナの中で食べものを漁る。5日ぶりの食事になるという。

ハエが飛び回るコンテナの中で、「食べてみなよ」と差し出されたネギに大前さんは食らいついた。その姿を見て、若者は「僕と同じ行動をとってくれて嬉しい」と微笑んだ。

国境デスロード
生ゴミの中から見つけたというネギに食らいつく大前さん(写真:ABEMA提供)

大前さんの持ち込み企画だというが、なぜABEMAだったのか。番組実現の背景には、入社局は違うがテレビマンとして同期の堀川恭平さん(前出)の存在が大きかった。

「テレビ関係の就活生同士の飲み会に1回だけ参加したことがあったのですが、そこで堀川くんと出会って仲良くなりました。

TBSを辞めてから、久しぶりに居酒屋で再会したんですが、そのときに『国境デスロード』の原型となる企画の話をしたら、『ABEMAで出してみなよ』と言ってくれたんです。趣味で撮ろうかなと思っていたので、驚きました。

堀川くんが高橋弘樹さん(ABEMAゼネラルプロデューサー)に繋いでくれて、パイロット版みたいなものを見せたところ、正式に採用していただきました」

堀川さんがABEMAでの番組制作に大前さんを誘ったのには理由があった。

「ABEMAでやる番組は企画の段階から視聴者ファーストで、視聴者が見たいものを作る、が大原則。でも、個人的にやりたいことでも熱量がある企画を形にして見せることは、結果的には多くの人が見たいものなんじゃないかと考えたんです。こういう番組がABEMAで配信されたら、もっと魅力的なプラットフォームになると思いましたし、高橋さんならわかってくれるのではと思いました」(堀川さん)

国境デスロード
『国境デスロード』の最終回(#8)は、メキシコ側から「トランプの壁」を突破してアメリカへ渡ろうとする移民たちに密着(写真:ABEMA提供)
国境デスロード
ベネズエラから来たという総勢17人の移民家族も壁の突破を試みる(写真:ABEMA提供)(写真:ABEMA提供)

僕は「ジャーナリスト」ではない

『国境デスロード』でゼネラルプロデューサーを務める高橋さんは、ABEMAで映像制作を手掛ける一方で、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いの経済動画メディア『ReHacQ(リハック)』を運営する、ネット配信における時代の寵児である。

大前さんは実際に、高橋さんと一緒に仕事をすることでその凄さを痛感している。

「高橋さんは、ロケ素材の肝となる部分や人間の本質を読み取る能力が極めて高い人です。人の細かい表情の変化や食べているもの、手に持っているものなどから、『これは寄ったほうがいいよ』『これがキーワードになるよ』と瞬時にポイントをつかむんです。

何回も編集しているはずの僕はそこに気づいていなくて、高橋さんから『もっと画面の隅々まで見ろよ、命懸けで撮ってきたんだろ』とめちゃくちゃ怒られましたね」

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