4655mの峠越え「タジキスタンの温泉」入ってきた 美しい風景が続くも過酷な道のりに四苦八苦
ホログの街中で車を探していると、偶然この温泉に行くというタジク人の男性2人と遭遇。相乗りすることにする。現地の事情に通じており言葉の壁もない彼らも車をつかまえるのに苦労している。
1時間ほど待った末、ようやく1台のタクシーを確保して温泉へ。車は対岸のアフガニスタンを横目に未舗装道を疾走していく。ガードレールなどはもちろんない。
やっと念願の温泉へ
やがて川から内陸に入ったタクシーは1時間ほどでガラム・チャシュマ温泉に到着した。近くにはホテルや飲食店が数軒ずつある小さな温泉街という趣きだが、人の姿は多い。いったいどうやってここにたどりついたのだろうか。
パミール高原にはいくつか温泉があるが、最も有名なのが、ここガラム・チャシュマ温泉だ。かなり昔から硫黄泉が出ていたそうだが、1957年に旧ソ連がサナトリウムとして開業した。
男女入れ替え制となっており、女性の入浴時間残り10分の間に妻が駆け込む。わずかな時間になってしまったのは、もちろん車がなかなかつかまらなかったことが原因だ。
すぐに男性の入浴時間が来た。脱衣所は貴重品を隠すスペースもないが、10m四方ほどの湯船の目の前なので盗難もできない仕組みだ。乳白色の硫黄泉でタジキスタンの乳頭温泉といった塩梅(あんばい)である。
硫黄泉といってもさほどにおいも強くない。温度も40度ちょっとで長湯がしたくなる。旅行者にも人気と聞いていたが、筆者が訪れたときは地元の人ばかり10人ほど入浴しており、しかも皮膚病を患っている人が少なくなかった。サナトリウム時代の湯治という本来の役割をいまも受けついでいるのだろう。
富士山の高度をはるかに上回る峠道を越え、ネットもつながらない民泊を経由してたどりついた温泉。それだけに湯船につかったときの安堵感はひとしおだった。
だが、この翌日、ムルガブから空港のある首都のドゥシャンベまで、車の助手席に2人着座で17時間という過酷な移動が待っていた。
アクセスの不便さでは類をみない秘湯といえるが、温泉好きならぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか。
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