みずほ銀行×デロイトがタッグ、新ポータル構築 「まず世に出し、改善を繰り返す」手法を採用
![デロイト トーマツ 丸山 由太氏(左)、みずほ銀行 元島 大輔氏(右)](/mwimgs/b/1/1140/img_b1933997858fe358253856bdd579b226301922.jpg)
「リアルとデジタル」両方の選択肢を用意したいと考えた
――2024年10月にリリースした「M’s Palette」の概要を教えてください。
みずほ銀行・元島 M’s Paletteは、端的に言うとオンライン上のみずほ銀行窓口です。法人のお客さまが場所を選ばずに各種申し込み・レポート閲覧などをご利用いただけるようになりました。
現在備えているのは、インターネットバンキングの申し込みや、帳票・調査レポート閲覧サービスとシングルサインオンで連携する機能などです。シンプルなサービスから始め、定期的に機能を追加して磨き上げていきます。
コミュニケーションチャネルはリアルとデジタルの両方を用意し、お客さまに自由に選んでいただくのが理想形です。お客さまの働き方が変化する中で、当社のデジタル化の遅れに対して厳しいお言葉をいただくようになってきています。個人向けに比べて法人向けのデジタルサービスが不十分であったことも深く反省し、開発を決意しました。
![みずほ銀行 デジタルマーケティング部 業務革新チーム 次長 元島 大輔氏](/mwimgs/4/1/1140/img_413ec480138036b28f0d24861a0fc119279423.jpg)
元島 大輔氏
また、当社の社員からも改善を求める声がありました。例えば、お客さまの届け出情報に変更が生じた場合、ご来店いただいて変更内容を書面で提出していただく必要があります。デジタルを活用すればお客さまや社員の負担を解消できるのではないかというものです。
お客さまの取引状況に応じて手続き内容が異なるため、お客さまや対応する社員に対しても大きな負担をかけていました。社員の負荷も軽減し、お客さまのコンサルティングに専念できるようにしていきます。
認知度向上と、コンテンツ拡充がカギになる
――顧客を惹きつけるポータルサービスを開発するに当たり、デロイト トーマツがパートナーとして伴走しました。
元島 この取り組みは当社にとっても超巨大プロジェクトとなりますので、立ち上げ時からパートナーとしてデロイト トーマツに伴走してもらうことにしました。お客さまが真に望んでいるサービスを構築するためには、第三者の視点も必要だと考えました。
当社では従来、最初から完成したサービスの提供を目指す手法を取ってきました。お客さま・社員の要望は刻々と変化していきますので、サービスの基盤をまず世に出して、お客さま・社員からのフィードバックを得て継続的に磨き上げていく手法にしています。
デロイト トーマツ・丸山 当社はM's Paletteの構想を策定する段階からシステムを構築する段階まで全期間にわたって支援しました。具体的には、法人ポータルならびにデータ活用による法人ビジネスToBe像の策定、法人ポータルを使い始め、使い続けてもらうためのマーケティング施策とコンテンツの検討です。
さらには、法人ポータルを利用いただくことで蓄積されるユーザーの利用履歴や興味・関心に関するデータを活用した法人営業のあり方についても共に考えました。
![デロイト トーマツ コンサルティング ディレクター 丸山 由太氏](/mwimgs/3/4/1140/img_34ca1150aebe069a7e7897ee4d12374d253535.jpg)
ディレクター
丸山 由太氏
丸山 ポータルサイトは、たくさんのユーザーに一定以上の頻度で使ってもらってこそ、興味・関心などのデータが充実していきます。そのためには十分な認知と、利用頻度を維持できるようなコンテンツのラインナップが重要です。
その結果、ユーザーの興味・関心の変化をタイムリーに捉え、法人営業の提案スピード・質の向上につなげることができます。こういった戦略を明確に描きながら開発することが非常に重要だと考えています。
開発のベースがあるからこそ、機動的に構築できる
――M’s Paletteは、デロイト グローバルのアセットである「BankingSuite」を利用して構築されました。
丸山 BankingSuiteは、海外金融機関で導入実績が豊富なテクノロジーアセットです。今回は国内での初導入事例となりました。
BankingSuiteは、いわゆるパッケージのソフトウェアではなく、開発のベースとなるテンプレートです。案件ごとの状況や条件に合わせてカスタマイズすることで、ゼロから作るより効率的にシステムを構築できます。
コンセプトは「できるだけ作り込まない」。画面をボタンやフォームなどの部品に分け、それぞれを独立して使える仕組みになっており、画面デザイン・実装の修正が機動的にできます。この技術をマイクロ・フロントエンド・アーキテクチャーと呼んでいます。
元島 システム要件検討段階から、デロイト トーマツ自ら「ファーストユーザーになる」と手を挙げていただきました。使う側の目線で「ここを直したほうがいい」と意見をいただけて、ありがたく思っています。
サービスを継続的に磨き上げていくうえでは、システムを機動的に修正できることが重要です。デロイト トーマツの協力を得て、当社の将来構想を含めて実現していける基盤を構築することができました。
![法人向けポータル「M’s Palette」の画面](/mwimgs/7/8/1000/img_78c577ba97f7d47d57e69e21faea961b122665.jpg)
法人向けポータル「M’s Palette」の画面
丸山 既存サービスを超える、使いやすいシステムを作りたい。その狙いに向けて、構築時にもトライ・アンド・エラーを重ねました。例えば、要件定義はもちろん、ユーザーにとって使い勝手のよいUI/UXデザインをご提案するなど、全体的なサポートを行いました。
時代が変われば、常識も変わります。最先端のものが必ずしもユーザーにとっての最適とは限りません。だからこそ、まずは世に出してフィードバックを得て、それを取り込みブラッシュアップしていきたい。M's Paletteは、今、その過程にあるのだと思います。
元島 大規模なシステムであるがゆえに開発難易度が高かったですし、業務プロセス・業務処理体制の変更にも踏み込むプロジェクトであるため、変化に対する社内での抵抗もありました。そこを乗り越え、プロジェクトを動かしていくところに熱量が必要でした。
立ち上げは容易ではありませんでしたが、M's Paletteという、法人のお客さまに向けた一つの大きな転換点となるシステムのリリースを無事迎えられたと思っています。一度世に出してから磨き上げるというやり方自体、当社にとって新しい挑戦です。
ユーザーの声を基に、よりよいものに磨き上げる
――現在の反響と、今後の展望をお聞かせください。
![みずほ銀行 デジタルマーケティング部 業務革新チーム 次長 元島 大輔氏、デロイト トーマツ コンサルティング ディレクター 丸山 由太氏](/mwimgs/c/0/1140/img_c04768bc5d2476ace04811d706b4cee1289225.jpg)
元島 M’s Paletteによってこれまでの不便が改善されていく、とお客さまから声をいただいています。今後レベルアップする予定の機能を含めての評価であり、確実に開発を進めていきます。
2025年には届け出事項変更手続きメニューをリリースする予定です。そのほかにもM’s Paletteで申し込みができるサービスを拡充し、インターネットバンキング・融資申し込みサービスとの連携を開始する予定です。
地域金融機関からもお問い合わせをいただいています。法人のお客さま向けのデジタル化については、業界全体で課題感があるテーマだと痛感します。
丸山 さらに次のステップでは、デジタルマーケティング機能を強化していくことも考えられます。ユーザーごとにコンテンツを出し分けて発信したり、デジタル上で得たデータを営業活動に還元したりすることを想定しています。
そして、デロイト トーマツとしては、地域の金融機関の支援に取り組みたいと考えています。お困り事があれば、われわれの経験を基にお役に立てるはずです。
法人ポータルの仕組みで銀行の企業に対する課題解決・競争力強化の力を後押ししていく。それによって、企業の成長はもちろん、ひいては地域の活性化にも貢献できるのではないかと思います。