「会話を生み出すコンテンツ力」が重視されていることは、日本のNetflixコンテンツを統括するNetflix コンテンツ部門 バイス・プレジデントの坂本和隆氏のコメントからも裏付けることができます。
日本のNetflix会員数が1000万世帯に到達したことを受け、インタビューした際に「Netflixのようなクローズド(有料)メディアは、会話を生み出す企画性が如実に求められます。オーディエンスはまだ見たことのない新しさを体感し、それが感情移入につながっていくことが重要だと思っています」と答え、「あいの里」をその一例に挙げていました。
実際に番組では独身中年の名言が並んでいます。家庭をおざなりにしていた過去を持つ相手に「家族に向き合ってなかった自分を恥じてくださいね」と諭す言葉は共感ができるもの。ちなみにこれは、参加者の1人だったタレントの藤田ニコルの母親であるパチゆみ(51歳・出演当時)の発言です。
ただし新しさと言っても、「あいの里」は過去にあった人気番組のリブート版でもあります。平成11年から21年までフジテレビで放送された「あいのり」が元です。当時、番組を企画した西山仁紫プロデューサー自ら「あいの里」のプロデュース・演出を務めています。親しみやすさが強みになっているのは確かですが、アップデートしたことが何よりも勝因にあるのではないでしょうか。中年の恋愛という新しいコンセプトに思い切って変えたことが功を奏したと思います。
躊躇なく人間の“ダサさ”を映す
とは言え、まだ見たことのないような新しさだけでバズリを期待できるほど甘くはありません。全話視聴した後、熱量高く語りたくなる中身があるからこそです。もちろん中身があるのは当たり前のことですが、「あいの里」は言葉を選ばずに言うと、人間の“ダサさ”を躊躇することなく映し出しているのです。愛情を持って中年の“ダサさ”を見つめている番組なのです。
シーズン1では“中さん”(60歳・同)がなりふり構わず“あいの鐘”を鳴らした姿に象徴されます。シーズン2では北海道で音楽教室の先生をする“ギタりん”(52歳・同)と大阪出身の秘書“あやかん”(35歳・同)が主役でした。泣きじゃくって子どものように鼻水を垂らす“ギタりん”や美人の参加者が追加されて動揺する“あやかん”の言動だけを指しているのではありません。
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