オリジナル「コアラのマーチ」通常品との違いは? ノベルティグッズとして企業からのオーダー増

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鬼頭真氏と立花至氏
2024年に発売40周年を迎えたロッテのチョコレート菓子「コアラのマーチ」。今、人気を集めているのが、世界で1つだけのコアラのマーチを作成・購入できる「オリジナルコアラのマーチ」だ。2023年12月には法人向けサービスもローンチし、イベントや周年記念のノベルティ、従業員へのプレゼントなど幅広い需要に対応している。この「オリジナルコアラのマーチ」、実はパッケージだけでなく製造工程も通常品とは異なる。はたしてどこがどのように違うのか?企画・運営に携わるキーパーソンを直撃した。 

「幼い頃の思い出がよみがえる」と喜びの声 

40年以上売れ続けているロングセラー、コアラのマーチ。1984年10月のコアラ初来日に先駆けて、同年3月に発売された。商品名の由来について、ロッテ マーケティング本部コミュニケーションデザイン部EC企画課課長の鬼頭真氏はこう説明する。

「コアラは一日の大半を寝て過ごす動物で、あまり動きがありません。そこで、より楽しそうなイメージにするため、『マーチングバンドを組んでオーストラリアからやってくる』という設定にしました。『マーチ』という名前はそこからきています」(鬼頭氏)

鬼頭真氏
ロッテ
マーケティング本部 コミュニケーションデザイン部 EC企画課 課長
鬼頭 真

チョコレート入りのビスケットに描かれている絵柄は現在365種類だが、最初は12種類。さまざまな楽器を持っていて、マーチングバンドを組んでいることがわかる。1990年ごろには、トランペットを吹いているコアラの眉毛が太くてかわいいとされ、「まゆげコアラを見つけると幸せになれる」という噂が広まったこともあった。

このように愛されてきたコアラのマーチの「オリジナル」を作ることができるサービスは、2019年10月にスタートしている。きっかけは「オンラインショップ」だった。

「ロッテオンラインショップは2011年にローンチしたのですが、ラインナップは一般に販売されている商品の詰め合わせなどが中心でした。せっかくお客様とダイレクトにつながることができるチャネルなので、バリューアップしたサービスを提供したいと考えたのです」(鬼頭氏)

それまでロッテでは、バレンタインデーなどに、店頭でガーナチョコレートの「Ghana」部分を希望する名前に変えてその場で印刷し、スリーブ(かぶせるカバー)にするといった期間限定の施策は展開していた。

しかし、ガムの名入れ以外の恒常的なオリジナル商品はなかったため、どのような需要があるか読みきれなかったと、鬼頭氏と共にオリジナルコアラのマーチを展開するEC企画課の立花至氏は話す。

「当初は、結婚式などお祝い事での引き菓子で活用していただければと思っていました。ところが、そういったケースは少なく、逆に多かったのが子ども・犬・猫などご家族の写真をパッケージに入れたいというご要望でした」(立花氏)

立花至氏
ロッテ
マーケティング本部 コミュニケーションデザイン部 EC企画課
立花 至

こうしてオリジナルコアラのマーチは、誕生日や七五三といった記念日だけではなく、さまざまな思い出を写真とともに残しておきたいというニーズに応える形となった。40年にわたるロングセラーで、コアラのマーチという商品自体が深い思い出につながっている味わいなのも、人気の理由だという。

「お客様からは、『幼い頃に食べてうれしかった思い出がよみがえった』といった声もいただいています。写真が入るだけでなく、商品名のところに名前を入れられるので、親しんできたパッケージなのに、自分だけのオリジナルになることが非常に喜ばれています」(立花氏)

「破らず残しておける」パッケージの繊細な工夫

オリジナルとしての価値を発揮できるように、プロダクトに工夫を凝らしているのも見逃せない。特筆すべきはふたの部分だ。通常のコアラのマーチは、横にミシン目が入っていてピリピリと破って開けなくてはならないが、オリジナルコアラのマーチはふたをあえてのり付けせず、ツメで閉めるタイプにしている。

「中身のお菓子を食べても、写真や名前、メッセージが入ったパッケージはぜひ残していただきたいので、ふたを破らなくても済むようにしています」(立花氏)

お菓子を食べ終えても、「世界に1つだけのコアラのマーチ」を持ち続けられる。名入れだけでも特別感があるのに、家族の写真や名前、イラストがあしらわれているのだから、作るのはもちろん、もらうのも楽しいという声が多いのも納得だ。

「結婚式で配ったお客様のおばあ様が、うれしくてずっと神棚に飾っているという話も聞きました。実は私も自分の結婚式でオリジナルコアラのマーチを作ったのですが、両親が実家に飾ってくれています」(立花氏)

パッケージだけではなく、印刷や中に入れるお菓子の袋、それらをアッセンブリする(組み立てる)工程も、通常のコアラのマーチとは別の生産ラインで行っている。

「中に入っているお菓子は、通常は銀色の袋にひとまとめにして入っています。しかし、オリジナルコアラのマーチは各お客様のご要望にお応えするため、通常の生産ラインでは対応できません。そこで、同シリーズとして販売しているミニパックを2つ、外部でアッセンブリしています」(鬼頭氏)

オリジナルコアラのマーチのパッケージ
オリジナルコアラのマーチの中のお菓子
オリジナルコアラのマーチは、ふたを破らずとも開閉できるように工夫が施されている。中に入っているお菓子も銀袋ではなく、ミニパック2つとなり「特別感がある」と好評だ。

パッケージングされている商品を入れるだけ、と思いがちだが、事はそう簡単ではない。ご存じのようにコアラのマーチにはチョコレートが中に入っているからだ。

「チョコレートは非常に繊細で、温度を一定に保たなくてはなりません。業界内では『定温』と呼ばれていますが、これを実現する倉庫を見つけるのは非常に大変でした。トラックからの搬入・搬出を行うプラットホームも、トラックの荷台にぴったりと付けられないと『定温』をキープできないからです」(鬼頭氏)

エンゲージメント強化が期待できる法人向けオリジナル 

バリューアップの源泉であるパッケージだけでなく、ベースとなるお菓子の品質も守り抜く。こうした姿勢が、企業の関心を集める。法人メニューがなかったにもかかわらず、問い合わせが次々に寄せられるようになったのだ。

「アッセンブリは外部パートナーに委託していますので、大口の対応は難しいと考えていました。個人向けを1セット10箱入りで、1回に8セットまでしか注文できないようにしていたのもそのためです」(立花氏)

しかし、ニーズがあるならば応えたい。ユーカリの木をモチーフにしたユニークな箱の形と、親しみのあるコアラの絵柄は、誰もが知っているといっても過言ではないだろう。オリジナル性を加えれば、企業のブランディングや福利厚生のツールとして役立つのは明白だ。

そこで、パートナー企業と協議し、体制を拡充。法人向けサービスとして、デザインから完全なオリジナルのフルオーダー(1万個から)と、約60種のデザインテンプレートから選べるセミオーダー(400個から)の2パターンを用意したところ、大きな反響を呼んでいる。

法人向けオリジナルコアラのマーチ
セミオーダー(左)は約4週間、フルオーダー(右)は約8週間で作成可能。詳細は「法人向けオリジナルコアラのマーチ専用サイト」

「法人向けにオリジナルコアラのマーチを作れることを知らなかったという声をたくさんいただいています。イベントや展示会、販売促進などに利用されているだけでなく、会議室や応接室に置いて、商談時のアイスブレイクに活用しているというお話もよく聞くようになりました」(鬼頭氏)

あるサービス業の企業では、オリジナルパッケージの候補案を3つ制作し、社内投票を実施。決定したものを社員や顧客企業へ周年記念のノベルティとして配布、日頃の感謝を伝えた。制作段階から社員が参加することで、エンゲージメント強化につなげているのが興味深い。

別の製造業の企業では、マーチくんに作業服を着せたデザインのオリジナルコアラのマーチを作り、所在地の自治体を通してオーストラリアの姉妹都市に贈呈。ビジネスの枠を超えた国際交流にも貢献している。

「今後は、コアラのマーチだけでなくチョコパイやパイの実などアイテムの幅を広げて、より細かく目的や用途に合わせられるオリジナル商品をご提案していきたいと思っています」(鬼頭氏)

事業を成長させ、採用活動を後押しし、組織のエンゲージメントを上げる――。これらは企業活動に必須であり、いずれも人のつながりがベースだ。オリジナルコアラのマーチのように、お菓子とパッケージがもたらす心の豊かさは、想像以上の効果につながるのではないだろうか。

>>「法人向けオリジナルコアラのマーチ」について詳しくはこちら