ドコモ通信網、進化する「24時間監視」の最前線 AI予兆検知で故障防ぐ、能登の教訓を活かす
「AIの活用をさらに進め、より複雑な障害ケースにも対応できるよう取り組んでいます」と、サービスマネジメント部オペレーションシステム担当部長の鈴木啓介氏は説明する。AI技術の導入により、異常の早期発見や予兆検知が可能になっただけでなく、生成AIを活用することで、経験の浅い作業者でも過去の対処実績やノウハウを参照しながら、確実な復旧作業が行えるようになった。

監視の目は通信設備だけでなく、SNSにも向けられている。オペレーションセンターの大画面には、X(旧Twitter)での「ドコモ つながらない」といった投稿がリアルタイムで表示される。同業他社に関する投稿やAWS(アマゾンのクラウドサービス)の状況も監視対象だ。日中は45名ほどのオペレーターが、これらの情報とトラフィックのデータを組み合わせて分析。装置からの異常アラートがなくても、SNSでの投稿急増とトラフィックの異常を総合的に判断することで、サイレント障害の早期発見につなげている。

こうして得られたSNSの声は、週単位でエリア品質部門とも共有される。投稿から場所が特定できる場合は現地での品質確認に活用。トレンドをグラフ化して過去比較を行うなど、長期的な品質改善にも役立てている。「SNSの声は切り捨てることなく、すべての情報を有効活用しています」と小川部長は説明する。

さらにドコモは、人手を介さない完全自動化の取り組みも進めている。基地局などの無線アクセスネットワーク(RAN)については、すでに故障時の復旧作業を自動で行える体制が整った。例えば、法人向けのエッジコンピューティングサービスでは、以前は夜間のソフトウェアアップデートに作業員を張り付けていたが、現在は作業日時を予約するだけで、更新作業から正常性確認まですべて自動で実行される。
「次はコアネットワーク(通信を制御する中核システム)の自動化に取り組みます。複数の装置から同時にアラートが上がるような複雑な障害にも対応できるよう、エンドツーエンドのデータを活用した自動化を目指しています。2025年前半までに故障時の復旧時間を60%短縮することを目標としています」と鈴木担当部長は説明する。
重層的な災害への備え
通信インフラの強靭化は、平時からの備えも重要だ。ドコモが全国105カ所に配備する大ゾーン基地局は、その代表例だ。通常は電波を停止しているこの基地局は、災害時に半径7キロ圏内をカバーできる広域基地局として機能する。また、山の上や高層ビルの屋上には2000局以上の中ゾーン基地局を設置。普段は一定の角度のみをカバーしているが、災害時には遠隔でアンテナの角度を変更し、より広いエリアをカバーできる。
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