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今や錦の御旗となった「実質賃金の上昇」の残念感 抽象的すぎるフレーズ、実現の経路は複雑怪奇

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  • 唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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誰も反対しないスローガンではあるが……(撮影:今井康一)
※本記事は2024年12月19日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

「実質賃金の上昇」という論点が政治の舞台で頻繁に意識されるようになっている。先般の衆議院総選挙では自民党が政権公約において「あらゆる手段を講じて物価の上昇を上回る所得向上を実現する」とうたった。

また、今や政府・与党の政策に影響を及ぼすに至っている国民民主党が掲げた「手取りを増やす」は全政党の公約のうち最大の注目を集めたといっても過言ではない。「手取り」と実質賃金は同義ではないが、その後の議論を見る限り、ほぼ同じ意味と思われる。

これまであらゆるシーンで使われてきた「デフレ脱却」という錦の御旗が物価高にあえぐ現状と矛盾する中、「デフレ」に代わって「実質賃金の上昇」が政策目標として言及されやすくなっているのである。

「高く買って、安く売ってきた」日本

もっとも、実質賃金はそれ自体を議論することに大きな意味はない。「実質賃金の上昇」という抽象的な概念で言葉遊びを繰り返すのではなく、労働生産性、労働分配率、交易条件に要因分解したうえで、患部と処方箋を特定する必要がある。

基本的に日本の実質賃金にとってつねに足かせとなってきたのは交易条件だった。非常にラフにいえば、国全体として「高く買って、安く売る」ような取引が慢性化する中、海外への所得流出が拡大してきたといえる。

その背景も1つではない。交易条件それ自体は輸出物価と輸入物価の比率で決まる。輸入物価の要因が大きかったことは論をまたないだろう。

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