購買意欲を引き出したオリオンビールの成功事例 ゼブラが普通のボールペンに付けたプレミアム

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もうひとつ、文具メーカーのゼブラがおこなった「プレミアム」をご紹介しましょう。

さらさらとした書き味が特徴のゼブラ製ジェルインクボールペン『SARASA(サラサ)』。そのクリップに「赤い羽根」マークが付いている商品があるのをご存じでしょうか。

このマークが付いた『SARASA』(商品名:『サラサクリップ赤い羽根』)は、「中央共同募金会」と「ゼブラ」との協働で、ゼブラがユーザーに代わって、1本当たり一定額を中央共同募金会に寄付しています。

寄付金はその後、各都道府県の売上高に応じて全国の共同募金会に配分され、「地域の子供の学びを支援する事業」に活用されます。2016年2月の発売以来、累計で約2300万円が寄付されています(2024年3月末時点)。

『サラサクリップ赤い羽根』は、全国の大型文具店・ネット通販などで販売されているほか、自治体イベントや企業がお客さんに提供するノベルティとしてもよく利用されています。

ノベルティとして取引される商品は、購入ロットが大きい分、1個当たりの仕入れ価格を通常価格より割り引かれるのが常です。しかし、「社会貢献の商品である」として、営業担当者が自信をもって取引先と営業交渉できるようになります。

ひと言で言えば、この赤い羽根マークが「プレミアム」になっているのです。

本当の付加価値は何か

このプレミアムの価値は、赤い羽根マークを付けたデザインにあるのではなく、「少しだけでも社会貢献に参加できること」「ちょっといいコトをした気分になれること」にあります。

赤い羽根マークはそういう行動の証しであり、そのような気持ちをあらためて思い起こさせてくれるのです。

売れる「値上げ」
『売れる「値上げ」』(青春出版社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

購入したユーザーはもちろん、ノベルティとしてもらった人にとっても、ただのボールペンより赤い羽根マークの付いたSARASAのほうが、もっていてちょっとうれしい気分になるはずです。「誰かの役に立っているボールペン」なら、大事に使おうという気持ちにもなるでしょう。

この商品を介して、売る側と買う側が、その商品の「誰かのためになっている」という価値や意義を共有し、同じ未来・目標に向かって進むパートナーの関係にもなれるのです。

ただし、オリオンビールや『サラサクリップ赤い羽根』のような、売上の一部が寄付されるプレミアムをつけたりキャンペーンを行う商品を展開する際に、忘れてはならないことがあります。それは、そのプレミアムが商談を有利に、スムーズに進めるためのものでも、バイヤーに喜んでもらうためのものでもないということです。

プレミアムをつけたりキャンペーンを行うのは、お客さんに届けるため、また参加してもらうため。そこで喜んで楽しんで笑顔になってもらうため、です。

いまはモノをプレミアムにしても、CMなどを打っても、購買動機にはつながりにくくなり、お客さんの心には届かなくなっている時代です。

そんな時代にあって、これまでのモノやCMなどに代わるのが、お客さんに参加していただいて成り立つキャンペーンやイベントであり、そんなキャンペーンやイベントを通して得られる「ナカマ・ミカタ」たちからの情報収集と情報拡散なのです。

深井 賢一 リブランディングコンサルタント

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ふかい けんいち / Kenichi Fukai

事業コンサルタント、株式会社YRK and常務取締役東京代表、株式会社ウェーブ取締役。1989年4月 株式会社ヤラカス舘(現・株式会社YRK and)入社。リブランディングコンサルタントとして、メーカーのカテゴリーマネジメントやストアマーケティング、スーパーやドラッグストアなどの売場開発などを得意とする。 2017年より、ソーシャルプロダクツのマーケットプレイスを運営する株式会社SoooooS.カンパニー取締役。2019年より一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会事務局長として、ソーシャルプロダクツの適正な市場普及や、企業によるSDGsの本業化、サステナブルブランディングの導入に向けた、セミナー、研修、ワークショップ、コンサルティングに取り組んでいる。

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