ダヴ「ルッキズムに異議」が皆の怒りを招いた根因 「啓発キャンペーン」がなぜ批判されてしまったのか
今回の批判は、1の要素が強い。つまり、外見に関する表現が(たとえそれが否定されていても)明示されることで顕在化してしまい、かえって人々が意識するようになってしまったということである。
SNS上では、外見に関する表現が一般的とは言えず、「むしろ広告を見て知ってしまったものも多い」という意見も散見された。
類似した事例に、2020年にナイキジャパンが公開した、日本での人種差別問題を扱った動画「動かしつづける。自分を。 未来を。The Future Isn't Waiting.」がある。
「日本に人種差別はない」と断言できる人は少ないかもしれないが、「取り立てて問題にするほどのことでもない」と思っている人は少なくないだろう。そうした中で、この広告は日本の人種差別問題を顕在化させて、物議をかもした。
この動画には賛否両論あったが、批判的な声のほうが優勢だった。ちょうどこの時、ブラック・ライブズ・マター運動が盛り上がっていたが、ナイキの本拠地がアメリカであっただけに「(人種差別を行っている)お前らに言われたくない」といった声も目立っていた。
筆者の評価としては、動画のメッセージには共感はするが、広告・宣伝として効果的であったかは疑問が残るといったところだ。
なお、ナイキジャパンはこの動画を公開したことについて謝罪はしておらず、取り下げもしていない。
今回のダヴの広告に対しても筆者としては同様の評価である。ただし、ナイキと同様、広告を取り下げる必要も、謝罪をする必要もないと考えている。この広告は10月13日までの期間限定のものであるし、伝えようとしているメッセージ自体は不適切なものとは言いがたいからだ。
ダヴの広告は世界で称賛されてきたが…
ダヴ社は、2004年から「リアルビューティー・キャンペーン」を世界で展開してきた。このキャンペーンでは、人工的な美しさではなく、自然であること、自分らしくあることが「真の美しさ」であることを訴え続けてきた。
外見の美しい女優やモデルではなく、一般人や化粧をしない素顔の人たちを広告に登場させるなど、有言実行の取り組みを続けており、全世界で支持を集め、世界の広告賞も多数受賞している。
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