企業変革に「経費精算データ」を役立てるには? カードの不正利用を防ぐ新サービスも登場

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労働生産性を上げ、競争力を高めるにはどうすればいいのか。すべての企業が抱える普遍的な課題に対し、経費精算DXの観点から提案を行う三井住友カードとコンカー。「経費精算のない世界」を掲げ、戦略的業務提携を結んでいる両社のキーパーソンに、現在の日本のキャッシュレス化の状況から経費精算データを企業変革に生かす方法まで、話を聞いた。

進む経費精算DX、進まないキャッシュレス

――日本企業のDXならびにデジタル化の進展状況をどのようにみていますか。

足立 経費精算領域においては、かなり整備が進んできていると感じます。2024年11月現在、国内時価総額上位100社のうち68社でコンカーの経費精算ソリューションを導入いただいています。従来の紙や表計算ソフトによるアナログ業務がデジタルに置き換わって、可視化されたデータをいかに活用するかを模索するフェーズに入ってきているのではないでしょうか。※コンカー調べ

コンカー
パートナー&カスタマー統括部 デジタルエコシステム部 パートナーセールスチーム
パートナービジネスマネージャー
足立 安希夫 氏

前田 法人カードの利用データからも、デジタル化が進展していることは見て取れます。例えば、企業間取引の決済において、ITサービスの利用料が増えています。具体的には、チャットツールやWeb会議システムなど、さまざまなSaaSサービスです。業務をデジタル化しようという動きが活発化しているのは間違いないでしょう。

また、お客様企業へのヒアリングなどを通じて感じるのは、デジタルに対する捉え方の変化です。以前は、コーポレートカードの導入理由が、立て替え払いをなくして経理業務の効率化を図りたいという企業が中心でした。今はそれらに加え、カードの利用データを自社の仕組みに取り込み、業務効率化を実現したいというニーズが高まってきています。

三井住友カード
ビジネスマーケティング統括部 兼 デジタルソリューション営業部 グループ長
前田 祐 氏

――他方で、経費精算DXを実現するうえで重要なキャッシュレス化についてはどうでしょうか。

足立 キャッシュレス決済比率は右肩上がりに伸びています。経済産業省によれば、2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%で、25年までに4割程度にするという政府目標は達成できる水準です。ただし、主要先進国の中ではまだまだ低いのが現状です。

前田 足立さんがおっしゃったように、経費精算システムの導入は進んでいますし、決済のキャッシュレス化ができる法人カードの導入企業数も増えています。とりわけ企業間取引に利用されるパーチェシングカードの導入企業数は、19年に比べて約3倍となりました。ただし、実態をよく見ると、意外と法人カードによるキャッシュレス化は進んでいません。

よくあるのは、役員など限られた従業員にしか法人カードを貸与していないケースです。法人カードを持っていない従業員は個人のクレジットカードや現金での立て替え払いになりますので、結果、企業内で経費利用・精算方法が異なる事象が発生しております。

その背景として、法人カードを全従業員に貸与することに対する抵抗感を払拭できていないことがあります。従業員が1000人規模であれば、1000枚のカードを管理しなくてはならないと考えるのは無理もありませんし、不正利用のリスクに対する警戒心もあるのでしょう。

日本のキャッシュレス決済比率を高めるために

――コンカーと三井住友カードが戦略的業務提携を結んで5年目になりました。これまでどのような取り組みをしてきたのでしょうか。

足立 たとえ法人カードでキャッシュレス決済をしたとしても、経費精算の際には購入金額などを手入力しなければならないのが大きな課題でした。決済データを経費精算システムと連携することで、「キャッシュレス」「入力レス」「ペーパーレス」「承認レス」「運用レス」の5つのレスによる経費精算業務の完全自動化を目指しました。

まず取り組んだのは、ETCの出入り口情報の連携です。社用車で発生した経費の事後申請の入力と、経理担当者の突合業務を削減しました。同様に、少額で利用頻度の高いタクシーや飛行機、新幹線の利用情報の連携も実現しました。

前田 三井住友カードとしては、そうした取り組みと並行して、お客様企業からの要望が多い不正利用を防止するサービスの開発に力を注いできました。不正利用検知システムを継続的にレベルアップしたほか、2024年6月に提供を開始したのが「三井住友カードパーチェスプラス」です。

企業の管理者が、利用期間や利用上限金額、利用回数や利用地域に制限をかけたカード番号を即時発行できるようになりました。例えば、プロジェクトごとにカードを発番し、プロジェクトの予算内に利用上限金額を設定するなどです。

利用明細にプロジェクト番号なども付与できるため、突合・管理も容易にできます。

――管理の煩雑さや、不正利用リスクに対して警戒する企業の担当者にとっては朗報ですね。

前田 手続きのデジタル化にも力を注いでいます。旧来は、カードを発番するごとに当社へご連絡をいただく必要がありましたが、管理者であるご担当者様ご自身でオンラインで発番できるようになり、紙のやり取りがいっさいなくなりました。人事異動に伴い、カード使用者の追加申し込みや退会手続きなどの負担も軽減されました。

足立 三井住友カード様の、そうした積極的にデジタル化を推進する姿勢に共鳴したことも、戦略的業務提携に至った大きな理由の1つです。現在、SAP Concurと接続している三井住友カード様の法人カード導入企業数は2割以上伸びて約8割となり、社内のキャッシュレス決済比率が90%を超えている企業も増えてきています。

まだまだ「経費精算のない世界」を実現するための課題はたくさんありますが、三井住友カード様とならば解決していけると思っています。

経費精算データからインサイトを導き、企業変革へ

――現在取り組んでいることを含め、今後の展望をお聞かせください。

前田 現時点で、法人カードで取り込めない経費の代表例は、電車やバスなどの近隣交通費です。そこで、2025年以降には、「stera transit」を活用したクレジットカード等のタッチ決済による乗車サービスの広がりを踏まえ、法人カードによる交通利用データをSAP Concurと連携させ、近隣交通費のキャッシュレス化を実現させる予定です。個人の交通系ICカードなどで従業員が立て替え払いをすると、申請された金額を都度支払わなくてはなりませんが、法人カードに支払い手段を一本化することで、精算業務自体をなくすということが現実のものとなります。

足立 もう1つの課題は、データ通知の速度です。カードを利用しても、その購入データが通知されるのが数日から1週間後ということもあり、お客様企業からは「その日のうちに経費精算を済ませたい」など、改善のご要望を多数いただいていました。国際ブランド様をはじめ、三井住友カード様とも協働し、「データ即時反映」を早期に実現させたいと考えています。

――実現すれば、従業員がストレスなく経費精算ができるだけでなく、管理者側は経費額をリアルタイムで把握できるようになりますね。

足立 経費データをリアルタイムで把握することで、企業は経費削減に関するPDCAをよりスピーディーに回していくことができます。

例えば、同じ目的で、同じ時期に海外出張に行っているのに、部署間でかかっている経費に差があった場合。データを確認することで、航空券のチケットを取るタイミングが遅かった部署が、チケット代によって経費が膨らんでいたことなどが判明します。都度把握していれば、別の海外出張案件の際に、チケットを早めに取るように促すことができます。

――経費データを把握することで、企業変革にもつながっていくということでしょうか。

足立 おっしゃるとおり、先の例は、社員への注意喚起のみならず、出張に関する規定の見直しなどにつなげることも可能でしょう。

また、SAP Concurはグローバルでさまざまな企業の経費データを蓄積しています。そのため、業種・業界ごとに、従業員1人当たりの宿泊費や接待交際費、タクシー利用料金の平均値など、ベンチマークとなるデータインサイトをご提供することができます。自社内での比較分析にとどまらず、業界の経費動向も併せて把握することで、社内規定を柔軟に変更するなど、企業ごとの適切な働き方を見つけるお手伝いができればと思っています。

前田 お客様企業へそうした付加価値を提供するためにも、カード会社として正確なデータをスピーディーに還元することが重要だと考えています。そうやってお互いに強みを磨き合い、選ばれる経費精算プラットフォームであり続けることが、お客様企業の生産性向上に貢献し、競争力強化につながると確信しています。

三井住友カード×SAP Concurによる経費精算の「完全自動化」はこちら

【SAP Concur Fusion Exchange】
SaaSベンダーであるコンカーが、年に1度、バックオフィス部門を対象に開催する大型カンファレンス。 2024年は「AI・データ時代の日本企業の成長戦略〜間接費管理から起こす戦略的業務改革とは〜」と題して開催された。
多岐にわたるセッションの中、9月17日(東京会場)に開催されたスポンサーセッション「企業変革へ導くデータ活用成長戦略」では、本タイアップに出演の三井住友カード前田氏、コンカー足立氏を含めた5名が登壇。日本のデジタル化の状況から、コスト削減やESGに資する経費データの活用法まで、熱い議論が交わされた。
当日の来場者に対しては、スマホで簡単に回答できるアンケート調査が実施され、「従業員にカードを持たせづらいと考える理由」「経費に関する不正で多いと思う事柄」などの回答をその場で開示しながら議論を展開。双方向にコミュニケーションを取りながらのセッションとなった。
働き方改革やコスト削減、データ活用、未来の決済のあり方など、バックオフィスの担当者には耳よりな情報の多いSAP Concur Fusion Exchange。来年の開催にも期待したい。
※SAP、SAPロゴ、記載されているすべてのSAP製品およびサービス名はドイツにあるSAP SEやその他世界各国における登録商標または商標です。またその他記載された会社名およびロゴ、製品名などは該当する各社の登録商標または商標です。