「人と地球の幸せ」を追求するMIRARTHの挑戦 マテリアリティを再特定し「ESG経営」を推進
「未来環境デザイン企業」として地域社会のタカラに
「あっという間の2年間でした」。2024年10月に、誕生から2周年を迎えたMIRARTHホールディングスの歩みについて、代表取締役の島田和一氏はこう振り返る。
MIRARTHホールディングスの前身は、マンションブランド「LEBEN(レーベン)」などで知られる不動産総合デベロッパーの「タカラレーベン」である。
1972年の創業以来、新築分譲マンションをはじめとする不動産事業を主軸にビジネスを展開してきた同社だが、太陽光発電を中心とするエネルギー、J-REIT(不動産投資信託)や私募ファンドを運用するアセットマネジメントなども第2、第3の事業の柱とすべくビジネスを展開。
不動産だけに依存せず事業の多角化を進めてきた中で、ガバナンスの強化とより迅速な意思決定ができる体制の構築を図るため実施したのが、2022年10月の持株会社体制への移行だった。
その際に、長年親しまれていた「タカラレーベン」から、Mirai(未来)と Earth(地球)を由来とする「MIRARTHホールディングス」に社名を変更。 同時に「サステナブルな環境をデザインする力で、人と地球の未来を幸せにする。」というパーパスを策定、発表した。
それは、従来の不動産総合デベロッパーの枠を超え、「未来環境デザイン企業」として社会課題の解決に貢献していくという“宣言”でもあったという。
「このパーパスを具現化するため、昨年10月には30年3月期を見据えたあるべき姿として、『地域社会のタカラであれ。』という長期ビジョンも策定しました。このメッセージには、当社グループの社員が自らに問いを発し続け、地域社会に資する存在になってほしいという想いを込めています。
この2年間でパーパスにひも付くさまざまな施策を打ってきましたので、社員にもそれぞれの役割の中でパーパスを意識し、事業に生かしていこうという姿勢が少しずつ見えてきました。パーパスの実現に向けて、着実に進んでいると感じています」(島田氏)
なお、「タカラレーベン」の社名はなくなったわけではない。旧タカラレーベンの事業および子会社の再編を通じて誕生した新生タカラレーベンが、MIRARTHホールディングスの主軸である不動産事業を担っている。同社の「不動産」の看板は引き続き「タカラレーベン」であるというわけだ。
そんな同社が経営の中核に据えているのが、社会課題の解決やSDGsの達成に寄与するESGの取り組みだ。気候変動をはじめとした地球環境問題は年々深刻化。国内では少子高齢化に伴う人口減少、都市部への人口集中による地方の過疎化や産業構造の変化なども起き、同社を取り巻く事業環境もさまざまな変化にさらされている状況にある。
「事業を通じてこうした社会課題の解決を図っていくことが、人と地球の幸せな未来の実現とともに、当社の持続的な成長にもつながっていくはずです。そのために、迅速かつ柔軟な経営判断と、何よりもESG経営をさらに強化することが必須であると感じています」(島田氏)
サステナビリティ活動で見せるESGへの「本気姿勢」
MIRARTHホールディングスは、2022年3月期から25年3月期までを対象にした中期経営計画において、「ESGへの積極対応」を7本の柱の1つに掲げている。サステナビリティ重要テーマの下、マテリアリティ(重要課題)を特定し、グループ全社で事業を通じたサステナビリティ活動を推進してきた。
エネルギー事業の取り組みもその1つに当てはまる。かねて太陽光発電所の開発に積極的に取り組んできたほか、最近ではバイオマス発電にも参入し、温室効果ガスの排出削減に寄与する再生可能エネルギーを活用した事業の拡大を進めている。
また、過疎化が進む地域社会の課題に対しても、住まいを開発し供給していくことで、街づくりや地域の活性化を支援している。
そうした中で、23年度にはマテリアリティの再特定を行った。その背景について島田氏は、「ホールディングス体制への移行や、パーパスと長期ビジョンを策定したこともあり、当社グループとしてどのように地域社会と向き合い、事業を展開していくべきかを改めて見つめ直す必要があったのです」と語る。
マテリアリティの再特定に当たっては、グループ各社の経営陣で社会における自社の役割や関係性を整理したうえで優先課題を洗い出し、ワークショップの議論を経て、とくに重要な社会課題を選定した。
そうした検討プロセスを経て、新たにサステナビリティの重要テーマと位置づけたのが「脱炭素社会の実現」「サステナブルな街づくり」「Well-beingの向上」「ガバナンスの強化」の4つだ。
「ESGのうち、『脱炭素社会の実現』は“E(環境)”、『サステナブルな街づくり』と『Well-beingの向上』は“S(社会)”、『ガバナンスの強化』は“G(ガバナンス)”に当たるテーマです。それぞれに基づく10のマテリアリティを特定し、具体的な成果を測定するためのKPIも各年度目標として掲げています」
サステナビリティ担当役員を務めるMIRARTHホールディングス常務執行役員の中村大助氏はこのように説明する。
「サステナビリティは額に入れて飾っておくような特別なものではなく、すでに社会全体がサステナビリティを前提に物事を行うことが求められる時代になっています。
また、企業にとってのパーパスや長期ビジョンは一種の普遍的な概念といえますが、マテリアリティは社会の変化とともに柔軟に見直し対応していくものであり、両方がうまく掛け合うことで、生み出される効果が高まっていくと思っています」(中村氏)
サステナビリティ重要テーマやマテリアリティを見直したことは、決してそれらを絵に描いた餅にせず、本気で実現を目指して取り組んでいく、同社グループのコミットメントといえよう。
今後の活動方針として、温室効果ガス排出量の削減に向けては、省エネの実施、再生可能エネルギーの活用、不動産の建築・運用時の排出削減といった各種施策に取り組んでいく。また、人権デューディリジェンスの体制構築や、多様なステークホルダーとの連携によるサプライチェーンマネジメントの推進にも注力していく考えだ。
「まずは当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス排出量について、30年度までに45%削減(22年度比)の実現と、50年度までのネットゼロ(実質ゼロ)に向けて施策を実施していきます。そのほかにも引き続き、サステナブルな未来をつくり出すために当社グループとしてどのような価値を提供できるかを考え、実行していきます」(中村氏)
「MIRAI for EARTH」の旗印でパーパスを伝える
2年前、「MIRARTH」という新しい社名と、「サステナブルな環境をデザインする力で、人と地球の未来を幸せにする。」のパーパスを“宣言”することで、会社としての目指す姿を示したMIRARTHホールディングス。
「2022年の『MIRARTH』の誕生から2年間は“宣言期”と位置づけています。そしてこれからの2年間を“理解期”、さらにその先を“浸透期”として、社内外に当社グループの事業活動とパーパスのつながりを発信していきます」と島田氏は力を込める。
そこで同社が24年10月から開始したのが、「MIRAI for EARTH」プロジェクトだ。このプロジェクトでは、MIRARTHホールディングスグループが掲げるパーパス、およびその軸となるサステナビリティに結び付く事業やESGの施策を社内外に発信するブランディング活動を行う。この活動を通じて、同社のパーパスとその実現に向けた取り組みについて、世の中に広く知ってもらう狙いだ。
社名をひもといた「MIRAI for EARTH」を旗印に、対外向けのプロモーションや社内コミュニケーションを実施していく。プロジェクトのシンボルデザインは、「MIRARTH」のレインボーカラーとシャボン玉をモチーフに、はっきりと見えない靄(もや)の中にある未来の形を有機的に変え、進んでいくイメージを表しているという 。
「サステナビリティの取り組みを個々の施策だけではなく、グループとして一貫性のある大きな活動として、さまざまなステークホルダーに訴求していきたいですね。社内においても、パーパスをグループ全体に浸透させ、一体感を醸成したいと考えています」と島田氏は想いを語る。
グループの社員一人ひとりがモチベーション高く取り組むことで初めて、本当の意味で同社が掲げるパーパスが実現するということだろう。「人と地球の未来の幸せ」を徹底的に追求し続けるMIRARTHホールディングスのこれからの取り組みにも期待が高まる。
「サステナビリティやESGの取り組みは一過性のものではなく、これから先も長きにわたって継続していくものです。未来環境デザイン企業として、50年先、100年先にも『MIRARTHっていい会社だね』と言ってもらえるような会社を目指したい。そうなれるよう、パーパスを念頭に社員一丸となって挑戦し続けていきたいと思います」(島田氏)