今から準備するわが家の相続
2015年1月の税法改正も影響を受ける人は意外に少ない
内野 確かに、今回の相続税の改正により、一定の資産までは課税されない基礎控除が4割削減されました。また、最高税率は50%から55%になりました(6億円超の場合)。
ただし、国税庁の発表によれば平成24(2012)年中に亡くなった人(被相続人)は約126万人で、このうち相続税の課税対象となった人は約5万2000人で、課税割合は約4.2%にすぎません。これが1.5倍になっても6%程度です。つまり、ほとんどの人が課税対象にならないわけです。
さらに「小規模宅地等の特例」もありますので、「相続税を払うために、現在居住している自宅を手放さなければならないのではないか」といった心配もほぼ無用です。
課税対象者が拡大するという情報だけにまどわされずに、正しい知識を得て落ち着いて対処してほしいと思います。
―「小規模宅地等の特例」の制度を利用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
内野 「小規模宅地等の特例」は、個人が相続などにより取得した財産のうち、事業用の宅地や居住用の宅地は、一定の限度面積までの部分について、相続税課税評価額を減らすことができる制度です。前述したように、生活の維持や事業の継続に必要な宅地等の基盤を守るのが目的です。
たとえば居住用の宅地の場合、330平方メートルまで評価額が8割減額されます。これまでは、適用面積は240平方メートルまでだったのですが、今回の改正により引き上げられました。「小規模宅地等の特例」を利用すれば、評価額1億円の宅地でも、特例による減額で2000万円の部分にのみ課税されることになります。お父様が亡くなってお母様が相続する場合、よほどの豪邸でもない限り、「配偶者の税額の減税(1億6000万円)」の範囲に収まるのではないでしょうか。
ちなみに、改正により面積以外の要件についても緩和されています。これまでは、玄関が別々にあったり外階段のような独立型の宅地は二世帯住宅でも適用されていませんでしたが、改正後は適用されるようになりました。また、親が介護施設などに入所しているような場合でも、自宅を貸していなければ適用が認められるようになりました。
ただし、注意しなければならないのは、「小規模宅地等の特例」は相続税の申告が必要なことです。明らかに納税額がゼロという場合でも、申告書を提出し、特例選択の意思表示をしなければ、そのメリットを受けることはできません。