「自動運転」進化の先にモビリティはどう変わる? 「モビリティ開発の今後」がわかるイベント開催

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
日立Astemo Mobility Solution ビジネスユニット 商品企画本部長の谷道太雪(たにみち・たいせつ)氏
「自動運転」「電動化モビリティ」開発に欠かせないソフトウェア開発・検証ソリューションを手がけるdSPACE Japan。ドイツに本社を置く世界的なエンジニア集団として、その高い技術力は日本の各メーカーにとっても今や必要不可欠なものとなっている。日立Astemo株式会社・Mobility Solution ビジネスユニット 商品企画本部長の谷道太雪(たにみち・たいせつ)氏に、dSPACEの技術とモビリティを取り巻く最新の状況について話を聞いた。

自動運転の進化で、変化するモビリティ

自動運転の進化に伴い、モビリティの世界が今大きく変わろうとしている。こうした中、自動運転技術開発のパートナーとして注目を集めるのがdSPACEだ。世界的な自動車メーカーや自動車部品メーカーをはじめとして、多くのクライアントを持ち、日本での存在感も高まっている。そんな同社の日本法人dSPACE Japanのクライアント企業の1つが日立Astemoである。

日立Astemo Mobility Solution ビジネスユニット 商品企画本部長の谷道太雪(たにみち・たいせつ)氏
日立Astemo
Mobility Solution ビジネスユニット 商品企画本部長
谷道太雪

日立Astemoは、日立オートモティブシステムズほか、ケーヒン、ショーワ、日信工業が2021年1月に経営統合して生まれたモビリティソリューション企業で、自動車分野では国内有数の存在感を放つ。同社で商品企画本部長を務める谷道太雪氏は国内外のメーカーを経て、1998年に日立製作所自動車機器事業部に入社し、一貫してADAS(先進運転支援システム)の開発に携わってきた。その間、「自動運転プロジェクト」のリーダーなども務め、2016年からは日立オートモティブシステムズアメリカズに出向し、19年に帰国後、再度ADAS開発に従事し、24年から現職を務めている。

「自動運転では、自動車を動かす、運転をするという部分に注目が集まりがちですが、実は重要になるのが、外の情報を認識する車載カメラなどの各種センサーです。私たちはカメラの映像から物体を認識し、コンピューターで計算する一連のアプリケーションを開発していますが、それにはパソコンを超えるような計算能力が必要です。それほど高度なシステムが自動車に搭載される時代となっています」

そう語る谷道氏は、自動運転を取り巻く自動車業界の状況についてこう説明する。

「自動運転の進化は、車載カメラなど各種センサーの技術が追いついてくるかどうかが重要となっています。日本、米国、欧州などの地域では、すでに高速道路のような決められた環境において、自動運転が可能となっていますが、一般道での夜間走行や悪天候時の自動運転走行に対応するセンサーはまだ登場していません。例えば、夜間でも人や環境をあらゆる走行状態で認識できる技術を備えたセンサーが出てくるか。今後、センサーの技術が高度化していくことで、より自動運転の精度は高まっていくとみています」

自動運転のレベルは日々進化しており、高速道路のような決められた環境を中心に、すでに自動運転が可能となってきている

自動運転の技術開発は世界的に過熱しているが、とくに勢力を増しているのが中国だ。日本も必死で開発を進めており、自動運転技術の5段階のうち、ドライバーが運転をバックアップする「レベル3」に到達。 米国では一部都市でドライバーのバックアップが要らない「レベル4」の車も走っている。現在、一般に市販されている車は、ドライバーが主な運転を実施する「レベル2」がほとんどだが、その進化は加速している。

そうした中で、日立Astemoの強みとは、日立グループで培われてきたR&Dの技術力を活用できることにある。また、経営統合によって自動車本体のノウハウも得たことで、さらなる自動車向け市場の拡大を図る体制が整ったことも大きい。

自動運転の先に、ユーザーが求めるものは?

「今後の課題としては、センサー、そして、AIを走らせるためのコンピューティングなどがありますが、いちばんの課題は何を作ったらいいのかが難しくなっていることです。つまり、自動運転はいいけれど、一般ユーザーは何を欲しがっているのか、何を作ればいいかが見えにくくなっているのです。自動車もマチュアな(成熟した)世界になっているため、そこをどうしていくのかが課題になっていると感じています」

「レベル4」「レベル5」の自動運転の実現はそう遠くない将来、バスやタクシーの一部で生まれるかもしれないと言う谷道氏は、dSPACE JapanとはADASをはじめ、制御ソフトウェアの開発で協力関係を築いてきた。

「初めてdSPACEの技術をツールとして使い始めたのは2000年ごろ。以来、制御ソフトウェアのテストを中心に活用しています。使い勝手がいいと感じるのは、その拡張性にあります。さまざまなタイプの自動車を同じプラットフォームで検証シミュレーションすることができるので、現在はセンサーの実車テストに加えて、データ収集でもdSPACEのツールを使っています」

dSPACEの強みである、自動運転技術開発向けに独自に開発されたHIL(Hardware-in-the-Loop)システム。膨大な要件を高速処理しながらのシミュレーションでは、まずソフトウェアをコンピューターやクラウド上で検証し、それを実際に自動車に搭載してさらに検証するが、そのときに必要なツールとなる

安全性の担保に欠かせない、検証シミュレーション

自動運転開発の世界では、dSPACEのツールはすでにデファクトスタンダードとなっていると感じているそうだ。その理由について谷道氏はこう指摘する。

「大手ならではのサービスに加え、社内外でもdSPACEのノウハウを利用しているエンジニアが多く、やはりインフラが整っていると思います。本当に現場では毎日のように使われていますね。現在は開発が高度化するにつれて、テストにかかる労力が非常に増えており、それをどう削減していくかが課題となっています。今後、AIの進展に伴い、テストの自動化についてもdSPACEには期待しています」

将来的に高度なレベルの自動運転に到達するには、複雑な技術と安全性を同時にクリアしていかなければならない。開発が高度になればなるほど、困難な要因が増してくる。開発を加速するには、走行データを基にしたスピーディーなシミュレーションと検証が不可欠。そのためのソフトウェア開発・検証ソリューションの中核的な役割を担っているソリューションプロバイダーが、dSPACEなのだ。

「私としても将来的にデファクトスタンダードとなるようなシステムを開発していきたいと思っています。現在、高性能半導体であるSoC(システム・オン・チップ)やOSの標準化が進んでいますが、これまでこうした競争で日本は負けてきたとよくいわれます。しかし、結局はエンドユーザーから見てよいものが標準となるだけなのです。とにかく標準となるようなすごいものを作ろうという意気込みで、日本の自動車業界の皆さんと協働できればと考えています」

dSPACE Japanは24年9月に「dSPACE Japan User Conference(JUC)」をオンラインで開催する。今年も「JUC2024 Digital」として、自動運転技術に関する各メーカーや学術分野のキープレーヤーらが集結し、モビリティの最新技術動向について紹介する予定だ。谷道氏が登壇する基調講演でもそのような話が聞けるのだろうか。

「今、注目されているのが、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)という考え方です。ソフトウェアを軸にモビリティのあり方を大きく変えようとするもので、私たちにとってどんな影響があるのか。そのいちばんの影響を受けるのはADASだと考えています。JUCではこうしたトピックスのほか、業界の動向や業界内のコラボレーションの可能性についてもお話しできればと思っています」

参加費は無料(事前登録制)。これから到来するモビリティ社会の将来像を見通すためにも、参加してみてはどうだろうか。

「JUC2024 Digital」の参加申し込みをする