経営企画「賃上げ」関連データ集計に手間取る背景 9割の工数を削減した、注目のクラウドとは?

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昨今、賃上げが重要な経営課題となっている。しかし、調査によると今春の「賃上げ実施の有無・賃上げ率」については、過半数の企業が「検討中」にとどまった(2024年2月16日~19日の調査時点)。その背景には何があるのか。クラウド経営管理システム「Loglass」を手がけるログラス・代表取締役CEOの布川友也氏に話を聞いた。

意思決定の遅れを招く、経営管理の現状

物価上昇や、流動的な労働市場の中で人材争奪戦となっており、賃上げが重要な経営課題となっている。そうした中で、適切な賃上げを実施できない企業は、人材確保・離職防止に支障を来すだろう。

ところが、売上10億円以上の企業の経営層・経営企画担当900名を対象に実施した調査※1では賃上げについて64.2%が「検討中」という実態だった。その背景には「手作業による煩雑なデータ集計を基に、経営管理を行っているため、迅速な経営判断が困難な状況がある」と同社の布川友也氏は指摘する。

ログラス 代表取締役CEO布川 友也氏
ログラス 代表取締役CEO 布川 友也
慶應義塾大学卒業後、SMBC日興証券でM&AやIPOアドバイザリー業務に従事。GameWithでIR・経営管理・M&A等を経験。2019年、ログラスを創業し代表取締役CEO就任。「Loglass 経営管理」等を提供

「賃上げは、給与総額が年間10億円の企業で一律5%賃上げすれば、0.5億円支出増というだけの単純な話ではありません。各部門の売り上げと人件費を含むコストを把握し、賃上げすると将来それらがどうなっていくかといったシミュレーションが必要です。例えばA部門は業績が上向きで利益率も高いから10%の賃上げをし、B部門は業績が低迷し赤字なので人員削減しつつ4%の賃上げにとどめる、といった議論をリソースアロケーションや配置転換も含めて本来は行うべきです。

しかし、実際にこれをやるには、個々の従業員の給与や所属、職種、等級、プロジェクト兼務比率など、表計算シートで数千行にも及ぶようなデータを集計・処理する必要があります。そのうえで、賃上げにより各部門でどの程度費用が増え、利益に影響するのか非常に複雑な計算をする必要があり、経営企画に重い負担がかかっている実態があります」(布川氏)

賃上げの実施可否・適正な賃上げ率を判断するために必要なデータ
「賃上げの実施可否・適正な賃上げ率」を判断するには、高度なデータ分析に基づく“情報の可視化”が求められるが、決して容易ではない(※2)

 意思決定の遅れは自社の競争力を弱める可能性があるが、この問題は賃上げに限った話ではない。

予算策定や予実管理、経営分析など、経営企画が担当する経営管理業務にも大きく3つの課題があると布川CEOは言う。

1つ目は経営管理に必要なデータの収集・統合コストが大きいという点。例えば100部署ある企業で予算を策定する場合、100部署から表計算ファイル等でデータを収集しなければならない。各部署バラバラのフォーマットで記載されたファイルが届き、本部で統合することも多い。また、連結子会社がある企業では使用している会計システムがそれぞれ異なるケースもあり、データを加工・修正する手間やヒューマンエラーが発生する。  

2つ目は、管理用マスタや表計算ファイルの保守コストが大きいという点。組織再編が実施されたら、後からデータを加工し直す手間が発生する。また、1つのシートを複数人で編集するため、フォーマット崩れや関数のエラーが発生し、対応に追われる。

経営企画はデータ集計時にトラブルを抱えているという調査
調査結果ではトラブルを感じていない経営企画は23.9%にとどまっており、実際には意思決定のためのインサイトが求められているにも関わらず、その前段階の「集計」フェーズでつまずいていることがわかった(※3)

3つ目は、意思決定の場面で経営者が欲しい情報がそろっていない点。データ収集・統合などに多くの工数がかかるため、経営企画は十分な経営分析ができない。経営会議で各部門の経営分析結果を報告したとき、社長に「この内訳は?」と聞かれても「わからないので調べておきます」としか答えられず、迅速な判断ができない要因となるのだ。

クラウドシステムとBPOで
経営企画の高付加価値化を支援

経営管理に関わるこれらの課題を解決するためには、どのような取り組みが必要か。

「社内の優秀層が集まる経営企画が、業務工数の重い作業に忙殺される状況は健全ではありません。このような状況に対しては、まずBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)や外部のコンサルタントを活用し、次にシステムやAIの導入によって作業量を圧縮する。それができたら、経営陣と合意して経営企画のリソースを付加価値の高い業務へシフトしていく。これらのプロセスができれば経営企画の戦力は増強され、ひいては『この会社の経営企画で働きたい』と採用にも効果が出るでしょう」(布川氏)

布川氏

ログラスではこうした取り組みをサポートするために、経営データ(財務数値/KPIの予算・見込・実績)の収集・統合・一元管理までを効率化し、高度な分析を可能にするクラウドサービス「Loglass 経営管理」や、精緻な人件費の予実管理を実現する「Loglass 人員計画」、経営企画領域のBPO・コンサルティングサービス「Loglass サクセスパートナー」などを提供。

中でも「Loglass 経営管理」は、これまで使ってきた表計算ファイルのフォーマットのまま同クラウドサービスにデータをアップロードすると、自動的にデータベースが構築される。使い易いインターフェイスにより、見たい数値を見たい切り口で簡単に分析・可視化できるようになり、経営判断の精度やスピードを高めてくれる。また、布川氏をはじめとして、ログラスには上場企業で経営企画担当を経験してきたスタッフが多数在籍しているため、実体験に基づくソリューションを提供できる点が魅力だ。KDDIや関西電力、コニカミノルタといった東証プライム上場企業でも導入されている。

ログラスのUI
利用者からは「使い慣れた表計算シートの運用を残しながらシステム化を実現できるので、導入しやすく、UIもわかりやすい」というレビューがあがっている

これらを組み合わせることにより、経営企画のリソースを付加価値の高い業務へシフトしたり、賃上げの精緻なシミュレーションができるようになったりするわけだ。

「Loglass 経営管理を導入したある企業では従来、50ファイルの表計算シートを各部署に配布し実績データを作成させ、経営企画が5営業日をかけて集計、統合していました。しかし、Loglass導入後はわずか半日で作業が済むようになったうえ、浮いた時間で以前は手つかずだった経営分析や改善施策の立案ができるようになりました」(布川氏)

導入後は10分の1にまで作業効率アップ

「また、会社の立ち上げ期からLoglassサクセスパートナーを導入したある大企業の戦略子会社では、われわれが予算フォーマットや管理指標の策定、親会社への報告形式等をコンサルティングするとともに、Loglass 経営管理を活用し、データを投入すれば一気に親会社に報告が上がる仕組みを構築しました。これにより『1年目から、まるで成熟企業のような経営管理体制が整い、新規事業のシミュレーション頻度を増やして経営層と深く対話できるようになった』との評価をいただいています」(布川氏)

さらに現在、ログラスでは生成AIが自動的に予実分析を行い、経営報告サマリーを作成するAI分析アシスタントの試験実装や、生成AIを使った自動フォーキャスティング(売り上げ予測)機能も開発中だ。将来的には数字だけでなく、個人のコメントなどの非定型データをも、経営分析に活用できる機能を実現したいとしている。

「企業経営には賃上げの判断をはじめ、根拠情報に基づく的確かつ迅速な意思決定ができる環境の整備が求められています。ログラスは経営者や経営企画にとって最高のパートナーになるために全力でソリューションの開発に取り組んでいるので、興味を持っていただけるとうれしいです」(布川氏)

久々に日経平均株価が最高値を更新したが、失われた30年を取り戻すためには企業の心臓とも言われる「経営企画」が健全な機能を果たしていく必要がある。それが実現できれば同社のミッションである『良い景気を作ろう。』を体現した未来につながるかもしれない。
⇒詳細を見る

※1,2 調査概要

調査期間:2024年2月16日(金)~2月19日(月) 調査方法:オンライン上でのアンケート調査 調査地域:全国 調査対象:売上10億円以上の企業の「経営層 450名/経営企画担当 450名 計900名」 調査割付:「①売上10億円以上~100億円未満/②100億円以上~1,000億円未満/③1,000億円以上」のそれぞれについて、「経営層/経営企画担当」を各150名ずつ回収 調査企画:株式会社ログラス 補足:本調査結果において、比率は小数点以下第2位を四捨五入しているため、必ずしも合計した数字が100%にならない場合があります

※3 調査概要
調査期間:2024年3月1日(金)~3月5日(火) 調査方法:オンライン上でのアンケート調査 調査地域:全国 調査対象:売上10億円以上の企業の「経営層 425名/経営企画担当 553名 計978名」 集計方法:調査終了後、「①売上10億円以上~100億円未満/②100億円以上~1,000億円未満/③1,000億円以上」のそれぞれについて、「経営層/経営企画担当」が均等比率になるようにウェイトバック集計を実施 調査企画:株式会社ログラス 補足:本調査結果において、比率は小数点以下第2位を四捨五入しているため、必ずしも合計した数字が100%にならない場合があります