花王とAmazon Adsがタッグを組んで新商品企画 生活者研究からリーチまで広告を超える存在感
花王が生活者インサイト起点の商品企画に挑戦した背景
――2024年3月に「サクセス」からAmazonと共同企画した新商品が発売されました。
林裕也氏(花王「サクセス」ブランドマネジャー/以下、林) 「サクセスブラック ふんわり仕上がるカラートリートメント」を発売しました。そもそも、「サクセス」は、1987年に誕生し、頭皮・髪・肌をケアするためのシャンプーや育毛剤をはじめとする多彩な商品を展開しています。白髪ケアの新商品の発売は久しぶりです。
――なぜこのタイミングで新商品を企画・発売したのでしょうか。
林 まず、Amazonのオンラインストアにおいて「白髪」に関する商品へのお客様のニーズが非常に多く、さらに年々増加傾向にあることが明らかになりました。実のところ、最初から「サクセス」ブランドで白髪ケア商品を発売すると決めていたわけではありませんでした。しかし現在、男性向けのブランドは数多く誕生しており、「サクセス」ならではの価値づくりが不可欠となってきていたので、いいタイミングでしたね。
――マスマーケティングから、パーソナライズ化へ舵を切るためにAmazon Adsとの共同企画に取り組まれたのですね。
林 そのとおりです。花王とAmazon Adsの強みを融合することで、お客様の潜在的な悩みやニーズに刺さる新商品を企画できるのではないかというアイデアに至りました。花王には専門領域(清潔・美・健康)における研究知見が豊富にそろっています。一方、Amazon Adsは、Amazonのオンラインストアに来訪するお客様を通じて、ブランドや商品の認知、興味喚起、比較検討、購入に至るまでのお客様の購買行動のプロセス全体をカバーし、お客様がどんな流れで最終的に購入に至ったのかというインサイトを蓄積しています。
生活者の潜在的課題に迫る
Amazon Adsのインサイト分析
―― 今回は、Amazon Adsが「商品企画」をサポートしています。
石井哲氏(Amazon Ads ジャパンカントリーマネージャー/以下、石井) Amazonのオンラインストアにはありがたいことに日々多くの方にお越しいただきお買い物をしていただいています。
そんなAmazonだからこそ蓄積される生活者の購買、検索行動の情報量は膨大で、さまざまな商品カテゴリにおいて生活者のニーズ理解に役立ちます。このインサイトから、これまで解決できていなかった生活者の課題を解決できるマーケットを見つけ出すなど、「商品企画」の領域でも広告主様をサポートしていきたいと考えているんです。
――実際には、Amazon Adsとどのように取り組まれたのでしょうか。
林 まず、Amazon内のビューティカテゴリに関する情報を提供していただきました。Amazon Adsのコンサルテーションチームの知見を借りながら、検索ワードの履歴を参考に、お客様がよく検索するブランドや商品、キーワードを分析。どのようなジャンルや訴求が伸長しているのか、ディスカッションを重ね、商品の方向性を絞り込みました。
男性の「白髪の悩み」発掘で「サクセスブラック」誕生
――インサイトの分析とディスカッションを経て、どのようなことが見えてきたのでしょうか。
林 Amazonオンラインストアでビューティ製品を探すお客様は、具体的なブランド名や商品名で検索する傾向があるのですが、白髪関連商品については、「白髪染め1日」や「黒染め」などの商品の特徴や目的などのキーワードで検索している傾向が顕著でした。それだけでなく、前年比で白髪関連商品の検索量の絶対数が増加しており、ニーズがあることを確信したんです。
――商品企画はどのようなプロセスで進んでいきましたか。
林 まず、白髪ケアとして花王の技術を使ってできることを洗い出しました。そこから、白髪を徐々に染める技術、手軽に染められる技術と、ハリコシにつながる技術を応用することでお客様のニーズに合った商品を企画しました。パッケージのデザイン検討フェーズでは、Amazon Adsのコンサルテーションチームと協力して、魅力が伝わる訴求内容を一緒に検討しました。
さまざまな調査や分析を経て、最終的に「徐々に自然な黒髪になる」「ボリューム感のある髪」などのキャッチコピーがお客様にとって魅力につながるということがわかりました。
――Amazon Adsの広告ソリューションと、活用理由を教えてください。
林 今回、「カスタムランディングページ」「Amazon DSP」というAmazon Adsの広告ソリューションを活用し、「Amazon Marketing Cloud※1」を使ってキャンペーンの分析や最適化を行いました。
Amazon DSPへの出稿では、お客様の悩みに合わせてバナーのクリエイティブを複数作り、ABテストを実施してクリエイティブごとに異なるお客様の反応からインサイトの深掘りをしました。この深掘りしたインサイトを基に仮説を立て、商品の訴求の方向性やデザイン、キャッチコピー、商品名などを固めていきました。
――商品企画の第一歩で、Amazon Adsを活用していたんですね。
石井 Amazon Adsは、広告ソリューションとして、広告主様とお客様をおつなぎする「接点」としての役割はもちろんのこと、その広告媒体としての役割を超えて、広告主様のビジネスの成長をサポートすることを目指しています。花王様との取り組みは、まさにAmazon Adsが目指す姿を体現しています。
Amazon Adsは、「Amazonで購入いただくことを目的とした広告」というイメージを持たれるかもしれませんが、実際には広告主様の課題や目標に合わせた、多岐にわたるソリューションを提供しています。
Twitch広告で若年層にもリーチし、
全方位の打率を上げる
――Amazon Adsを活用した成果はどうでしたか。
林 1つ目はAmazonの生活者データから、商品企画のアイデアにつながったことです。購入意欲の高いお客様にリーチできる手段は限られるため、当初からAmazon Adsへの期待は大きかったのですが、Amazon Adsコンサルテーションチームのフォローは大変心強かったです。
2つ目はAmazonオンラインストアでの売り上げ規模から、市場全体の傾向を把握し、目標販売数量の精査ができたことです。商品企画前のさまざまな検証のプロセスは、戦略の実現可能性を確認するために不可欠です。今回Amazon Adsを活用したことで、その検証作業を驚くほど短時間で完了することができ、商品企画においても迷いはありませんでした。
日々多くの人が訪れるAmazonオンラインストアだからこそ、そこでメッセージを打ち出すことはマスメディアのようにボリュームリーチをして認知を獲得する機能を果たしながら、かつ、そこに訪れたお客様の傾向を理解したり効果検証を進めていくこともできるんです。そのような環境下でスピーディに仮説検証できた点は、新商品の目標達成率を上げるためには重要な要素でした。
3つ目はAmazon Ads広告ソリューションを提案してもらえたことです。Amazonのオンラインストアでプロモーションの展開や購買のファーストステップを検討できました。
――経緯に対する社内からの評価はいかがですか。
林 販売時の施策を企画段階から営業部門と議論することで、バケツリレー型ではなくスクラム型で商品企画に取り組めました。
また、商品のニーズから逆算して商品企画を進めることができたことは、流通の観点でメリットがありました。特に、発売前からランディングページに目標とする訪問者数を呼び込むためにどのくらい広告を出すべきか、そしてAmazonオンラインストアに訪れたお客様にいかに購入してもらえるようにするかをAmazon Adsのコンサルテーションチームにシミュレーションしてもらったことは大きな助けになりました。
結果、初期の発売段階で目標設定を上回るスタートができています。今後もAmazon Adsのサポートを踏まえて課題を見つけ、対策を講じていきます。このサイクルを確立することが非常に重要です。
石井 商品開発は仮説検証の連続で課題は絶えません。想定していたとおりの結果を得られることもあれば、予期しない結果となることもあります。そのどちらも大切にしながら、適切な結果を見極め、仮説を再び練り直す作業が必要です。仮説検証を継続し、インサイトが深まることは、未知のニーズの掘り起こしや、次の商品開発へのヒントを得ることに直結すると考えています。
――Amazon Adsとしてさらに強化していきたいことはありますか?
石井 Amazon Adsは、Amazonのオンラインストアの中だけでなく、Amazon外にも広告主様とお客様をつなぐさまざまなタッチポイントを提供しています。その1つがTwitchです。Twitchは、Amazonが提供するインタラクティブなライブ配信サービスです。毎日、世界中から約3500万人もの視聴者が集まり※2、ゲームをはじめとして、音楽、アートなど、さまざまなジャンルの配信が行われています。
Twitchに掲載する広告と聞くと、ゲーミング向けのニッチな広告と思われがちですが、実際にはゲームが好きな層のお客様もゲーム以外のさまざまなカテゴリのブランド・商品に興味があるわけです。さらに、視聴者の約7割が18~34歳のZ世代、ミレニアル世代で構成されている※3ので、さまざまなジャンルのトピックに興味がある若年層にリーチするにはとても効率がよいのです。
さらにTwitchならではのポイントとして、Twitchに集まる配信者と視聴者との間の絆がとても強く、単に動画を視聴するだけでなく、ライブ配信中のやり取りやコメントを通じて非常にエンゲージメントの高いコミュニティを形成しているというのも特徴の1つです。エンゲージメントが強いからこそ、何か新しいブランドを知る、商品に出合う場所として受け入れられているのだと考えています。
林 現在「サクセス」でもTwitch広告の施策を開始しています。「サクセス」は30代以下のお客様の構成が低く、主に50代以上が中心です。この状況を打開しようと、20〜30代のお客様に広告を届ける取り組みを進めています。特に、シェービング剤やこの春リニューアルする「サクセス24」シリーズの広告キャンペーンにおいて、Twitch広告が若年男性層との相性がいいことに注目しています。今後、Twitch広告を取り入れることで、この年齢層へのアプローチを加速していく計画です。
今後はTwitch広告も活用しながら仮説検証を繰り返し、ほかの媒体ではリーチしきれない層を取りこぼしなく確実に捉えていきたいです。デジタル上で大量の情報が行き交う中、広告を通して、本当にお客様が求めているニーズに関連性の高い情報をお届けすることが重要になっていくのではないでしょうか。
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※2 Amazon調べ (調査年月:2024年1月, 調査対象国:グローバル)
※3 Amazon調べ (調査年月:2024年1月, 調査対象国:グローバル)