性別問わず「自分のキャリアは自分で決める」時代 エリクソン「⼥性少ない」通信業界の変⾰に挑む

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エリクソンのアドリアナ・ガリード氏とグレース・スモト氏
情報通信業における女性比率が深刻だ。理系を選ぶ女性が少ない、ワーク・ライフ・バランスの観点からキャリアを諦めてしまうなど、行く手を阻む理由が数々ある。そこに一石を投じるのが、スウェーデンの通信インフラ大手の日本法人、エリクソン・ジャパンだ。2030年までに女性社員比率30%達成を目指し、文系出身者の積極的な採用、キャリアを選べる社内公募制の実施、女性リーダーの育成プログラムなど、D E&I(ダイバーシティー・エクイティ&インクルージョン)実現に向けたさまざまな取り組みを行っている。自らも上級職に就き、家族との時間も大事にしている、女性リーダーの2人に話を聞いた。

女性社員の割合が低い情報通信業界に革新を

現代社会をリードする情報通信業界だが、そこに女性の数は少ない。総務省が発表した2022年の労働力調査では、情報通信業における女性の割合は全体の28.31%にとどまった。その背景には、理系に進む女性の比率が低いことが挙げられる。

経済協力開発機構(OECD)の2021年のレポートによれば、日本人女性の高等教育新規入学者で工学、製造、建築を専攻する者のうち女性が占める割合は16%と、加盟38カ国で最下位という結果になった。
※経済協力開発機構「Education at a Glance 2021」

スウェーデンの通信インフラ大手のエリクソン・ジャパンは、この課題に真摯に向き合ってきた。自身も2児の母であり、エリクソン北東アジア地域の日本・韓国クラウドソフトウェア&サービス部門責任者のアドリアナ・ガリード氏は次のように話す。

エリクソン 北東アジア地域 ⽇本・韓国クラウドソフトウェア&サービス事業部責任者 アドリアナ・ガリード氏
エリクソン 北東アジア地域 ⽇本・韓国クラウドソフトウェア&サービス事業部責任者
アドリアナ・ガリード氏
1997年エリクソン入社。以来複数の上級職を歴任。現職に就任する前は、スウェーデンでソリューションおよびグローバル・マーケット・エンゲージメントの責任者、スペインでプロジェクト・オフィスおよび検証の責任者など、社内の研究開発におけるさまざまな上級管理職を経験

「私がエリクソン・ジャパンに来た2019年は、女性社員比率が19%でした。現在は約24%と順調に上昇しているものの、私たちが目指すDE&Iの実現においては、まだ道半ばだと感じています。2025年までに女性社員比率を25%に、2030年までに同比率を30%にすることを目標としています」

近年では、新卒採用者における女性の割合は6割ほどまでに伸びているが、女性リーダーの割合は2割程度だと話すのは、エリクソン・ジャパン人事総責任者のグレース・スモト氏。女性管理職が増えない実情について、次のように教えてくれた。

エリクソン 北東アジア地域 人事部 エリクソン・ジャパン人事総責任者 グレース・スモト氏
エリクソン 北東アジア地域 人事部 エリクソン・ジャパン人事総責任者
グレース・スモト氏
日本の外資系企業や広告会社でさまざまな人事管理職を歴任し、2023年エリクソン入社。7人のメンバーからなるチームを率い、1,000人を超える日本の従業員の人員計画、組織設計、人材獲得、人材育成・開発、キャリアアップなどをサポートしている

「結婚や出産、育児といったライフイベントと仕事とのバランスをどう取るかは大変に難しい問題です。当社はグローバル各地に支社を持っていますが、他国と比較して、日本はまだまだ子育てや介護など家庭の仕事を女性が負担するケースが多いように思います。家庭とキャリアの両立が難しく、やむをえず途中でキャリアを諦める人もいます。そこで当社では、女性のワークライフバランスを向上させるため、さまざまな取り組みを行っています」

「自分のキャリアは、自分で決める」が合言葉

エリクソンには、文系を卒業した学生でもエンジニア教育を受けられる仕組みがある。女性の採用を積極的に行っている同社だが、前述したとおり、大学で工学・製造・建築へ進む女性は全体の16%にすぎない。その中から情報通信業を目指す割合はさらに少なくなる。

「当社では、意欲がある文系出身者も積極的にエンジニアに採用し、OJT(職場内訓練)の講習や実践を通して、仕事に必要な技術を獲得してもらっています。実際、2024年入社の新卒採用では6割が女性です。エンジニア兼プロジェクトマネジャーとして活躍する文系出身の女性社員も増えています」(グレース氏)

エリクソンでは、入社後もスキルアップとリスキリングに対してのさまざまなプログラムやツールが用意されている。例えば、社員が自由に受講できるリスキリングのプラットフォームでは、個々人の経歴や職種などに合わせて、キャリアに必要な研修項目が自動で推薦されるようになっている。グローバル全体で、他国の同世代の社員と共に学べるプログラムも開催されている。これらの取り組みにより、社員は自らのキャリアを積極的に考え、必要に応じてスキルや知識を習得できる。

教育を受けた文系エンジニアが業務で活躍する様子
教育を受けた文系エンジニアが業務で活躍する様子

さらに、社内公募制度を活用し、部署を超えた異動が可能な点も大きな強みだ。「You are the CEO of your own career」(自分のキャリアは、自分で決める)の考えの下、社内で求人が出た際には、社員が閲覧できる求人サイトに掲載され、一般職からトップマネジメントの役職まで、誰でも自由に応募できる仕組みが整っている。「例えば、私がアドリアナさんのポジションに就きたいと思ったら、求人さえ出ていれば今すぐにでも応募ができるんですよ」とグレース氏は笑って話す。

また、アドリアナ氏はこれまでスペイン、スウェーデン、日本のエリクソンで働いてきたが、彼女のようにグローバルに働きたい社員にも、そのチャンスは平等に開かれている。多くの企業で、異動は会社からの辞令によるものがほとんどだが、エリクソンでは自分のキャリアパスを自ら選び取ることができる。

これまで海外赴任においては、夫に妻がついていくというパターンを想像する人が多かったのではないだろうか。アドリアナ氏は夫と子どもと共に来日し、家族で暮らす。今の時代は女性の海外赴任者も珍しくなく、アドリアナ氏の夫のように、妻の働き方を理解し、そのキャリアを支える男性も増えている。

社員一人ひとりが学び続けられるサポートを

1997年にエリクソンに入社して以来、スペイン、スウェーデン、日本の3カ国で上級管理職を務めてきたアドリアナ氏。キャリアアップを図るうえで、会社からのサポートは欠かせなかったと話す。

「さまざまなポジションに応募し就任する機会、仕事と家庭のバランスを取れる柔軟な職場環境、キャリアアップに必要なスキルを習得するための継続的なトレーニングといった複数の要因のおかげで、エリクソンでキャリアを積むことができました。

最近はビジネススクールでリーダーシップとセールスのトレーニングも受講しました。すばらしい講師陣や世界中から集まった受講⽣たちから多くのことを学びました。テクノロジーが進化していく中で、つねに通信業界のリーダーであり続けるためには、社員⼀⼈ひとりの学び続ける姿勢が重要だと考えています」(アドリアナ氏)

とはいえ、子育てや介護との両立などのさまざまな事情で、アドリアナ氏のようなキャリアアップを望まない女性もいるだろう。

「もちろん、さまざまな理由でキャリアを追求しない女性もいます。仕事上の要請と家庭における責任の両立という課題があるのかもしれません。ただ、個人の選択がどうあれ、社会や企業は、性別を問わず、キャリアを追求するかどうかを決める自由と柔軟性を提供するよう努力すべきだと思います」

キャリアを諦めないためには、女性が直面する固有の悩みを共有したり、活躍している同性のロールモデルを見つけたり、職種の異なるメンバー同士で情報交換をし、互いにエンパワーメントしたりすることも重要だ。

国際女性デーの日に開催された社員総会での集合写真
国際女性デーの日に開催された社員総会での集合写真

そうした家庭との両立に対する理解やサポートの場として「Ericsdotter(エリクスドッター)」という女性社員の活躍を推進するコミュニティーも機能している。1993年にスウェーデン本社で設立され、現在では1500人以上が加入する大所帯だ。

「エリクスドッター・ジャパンは2年前に設立。エリクソンという社名が創業者である『エリックの息子(Ericsson)』を意味していることから、『エリックの娘(Ericsdotter)』と命名されています。日本における一番の悩みの種はやはりワーク・ライフ・バランス。どのようにキャリアと家庭とを両立しているか、当事者同士で情報交換がされています。弊社にはワーキングマザーをサポートする制度もあり、コミュニティーを通してそうした制度の周知も図っています」(グレース氏)

また、女性のリーダーを育成するための「ALTitudeプログラム」も実施。約10カ月間、座学や演習、コーチングなどを通し、女性がキャリアアップをするうえで必要なスキルをハードとソフトの両面から学んでもらう。2021年の参加者のうち71%は、コース修了後の1年間で昇格など何らかの成果を挙げている。

「過去に私のチームからは、2人の女性リーダーがALTitudeのトレーニングプログラムに参加しています。トレーニングプログラムでは、成長をサポートするシニア・リーダーとペアを組み、仕事のさまざまな側面について話し合います。自分のキャリアの方向性、リーダーシップを発揮する方法、人格の修養といった分野について熟考するチャンスを得るのです」(アドリアナ氏)

アドリアナ⽒は、「多様性を受け入れてインクルーシブな職場文化を育むことは、倫理的に正しいだけでなく、ビジネス上も理にかなっており、組織の成功、イノベーション、持続可能性に長期的に貢献する」と語ってくれた。エリクソンでは女性ばかりがキャリアを諦めなくてもいい、多様な働き方が広がっている。

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