ゼロゼロ融資で増えた「ゾンビ企業」の生存戦略 資金繰りに苦しむ企業はどうすればいいのか

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こうした3年半分、先送られた予備群に加えて、平時でも発生してきた年間5万件程度の企業の資金繰りが一斉に困窮した場合、金融現場における融資業務にとって大きなしわ寄せが発生する。現場窓口には、返済を延滞する懸念がある企業からの資金繰り、事業継続に関する事前相談が急増するであろうし、ある日突然、延滞したり、倒産してしまうケースも増えるだろう。

資金繰り困窮に関する条件変更対応(返済条件を緩和して返済を少なくしたり、一時繰り延べること)や延滞、倒産といった手続きは、平時に融資を審査し、実行する手続きよりも何倍、何十倍も手間がかかる、というのが実情である。

近年、倒産件数の減少もあって、金融現場では条件変更や企業破綻対応に習熟した人材は多くはない。バブル崩壊直後の金融界では、こうした債権管理回収の熟練者が多数いたのだが、20年たった今、彼らのほとんどが定年を迎えて金融の現場にはいない。特に信用金庫といった地域密着型の中小金融機関は人材が豊富とは言いがたく、元気な企業の資金調達を支援する前向きの余力を失わせる可能性さえある。

ここからやってくる本当の「融資審査」

ここまで聞いていると、ゾンビ企業を産み出したゼロゼロ融資が悪の根源であり、政府の無策が混乱を引き起こしたように聞こえるかもしれない。国が100%保証したことで、金融機関の審査や経営管理が甘くなったからだ、という指摘もあるが、この融資が「災害対応」として緊急的にすべての企業の時間を先送ることを目的としていたのであり、そんなことは当たり前なのである。先送れば、必ずその分の審査や経営管理を、後でまとめてやらねばならない、というだけだ。

中小企業サイドとしても、ここから本当の「融資審査」をクリアせねばならない。借りたときには審査対応で大した手間もかからなかったはずなのだから、かなりの労力がかかったとしても生き残るためには仕方がない。

そして、そのためには、金融庁が定めたルールや、金融機関の論理については、よく把握したうえで交渉に臨むべきだ。みずから調べるなり、対応可能な相談者を探すなり、ここは手間を惜しんではいけない。

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