東日本の玄関口「さいたま市」 都市間連携による広域ビジネス拠点

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さいたま市長 清水勇人氏、会津若松市長 室井照平氏、函館市長 大泉潤氏の3名と、さいたま市、会津若松市、函館市の風景との合成画像
北陸新幹線の金沢延伸や北海道新幹線開業を契機とし、さいたま市では2015年から「東日本連携・創生フォーラム」を開催。新幹線でつながる東日本の各都市と、広域連携による経済の活性化を図っている。東日本連携では、物産・食などの地域資源の販路拡大やその資源を活用した観光PRを各市と実施しているほか、産学官連携による事業拡大も図っている。今回は東日本連携に積極的に取り組んでいるさいたま市長の清水勇人氏、会津若松市長の室井照平氏、函館市長の大泉潤氏の3氏が、都市間連携による相互メリットやビジネス環境、企業における事業拡大の可能性について語り合った。

東日本の「ヒト・モノ・情報」の交流・発信を促進

さいたま市長 清水勇人氏
さいたま市長
清水 勇人氏
1962年埼玉県生まれ。 2003年埼玉県議会議員就任、 2009年より現職(現在4期目)

清水 北陸新幹線の延伸や北海道新幹線の開業は、沿線地域の経済圏を広げ、新たなビジネスチャンスを生み出しました。そのような中、さいたま市は2015年より、「東日本連携・創生フォーラム」(以下、フォーラム)を開催しています。ビジネスや観光、物産など、新幹線沿線自治体における広域連携を目的に、現在では29の自治体が賛同しています。  

大泉 函館市は、16年の北海道新幹線開業のかなり前から、市の観光・物産のPRを行ってきましたが、開業間近の時期に、さいたま市からお声がけいただいたことがきっかけで、第1回フォーラムから参画しています。「首都圏から近くなる函館・東日本」としての北海道新幹線の利便性や魅力を広めるのにぴったりだと思いました。

室井 会津若松市は、18年10月からフォーラムに参画しています。東日本大震災以降、本市の産業復興に支援をいただいているイオングループが、さいたま市のまちづくりにも深く関わられていた縁で、17年に両市の連携についてのご提案をいただきました。さいたま市と会津地域は以前から相互交流が行われており、また両市の重点施策がスマートシティであること、観光・経済分野等の連携が両地域の活性化に有効であることが協定締結の決め手になりました。

清水 東日本連携の拠点として、大宮駅前に、東日本連携センター「まるまるひがしにほん」があります(図1)。交通結節点というさいたま市の地の利を生かし、「ヒト・モノ・情報」の交流促進や情報発信を行っており、22年度は92万人もの方にお越しいただきました。

室井 同センターでは、会津清酒や会津塗などの地場産品をテーマとしたプロモーションを行いました。また、会津の民芸品「赤べこ」を、さいたま市と連携し、Jリーグクラブチームのライセンス商品化し、埼玉県内のイオンの一部店舗で販売しました。

浦和レッズとのコラボ赤べこ
会津若松市とさいたま市の連携で誕生した
浦和レッズとのコラボ赤べこ

大泉 函館市は19年から「函館物産展」を同センターで開催しています。週末には1日5000人を超える来場者数で、PR効果をひしひしと感じています。逆に、当市の食のイベントである「はこだてグルメサーカス」には、さいたま市伝統産業の1つである浦和のうなぎを弁当にして出品いただき、東日本連携として相互にPRを行っております。

広域連携によるビジネス環境

函館市長 大泉潤氏
函館市長
大泉 潤氏
1966年北海道生まれ。 函館市職員を経て、 2023年より現職(現在1期目)

大泉 函館市は地域ブランドイメージが高く、国内屈指の観光地でありながら、サテライトオフィスやコワーキングスペースも充実しており、ビジネス環境も整った街です。夏は涼しく、冬は北日本地域としては積雪が少ないなど、自然災害の影響もあまり大きくありません。また、市内には「公立はこだて未来大学」や「函館工業高等専門学校」など、街の規模と比較して高等教育機関が充実しています(図2)。さらに、新幹線、飛行機、フェリーと、陸海空の交通・輸送体系が有機的に交差し、利便性に優れていることから、東京、大宮へのアクセスがよく、相互往来もしやすい環境です。

室井 会津若松市も大宮から約2時間半でアクセスできます。本市は、世界的に不足しているSMACS関連スキルを持つICT人材の育成拠点として会津大学を有しており、こうした人材が地域内にとどまれる選択肢を増やしていくことで、優秀な人材や先端ICT・アナリティクス産業が集積しやすい環境が整いつつあります(図3)。また、現在、新たな工業団地の造成も進めており、地理的にもさいたま市や北関東とは 親和性が高いことから、広域的な企業活動につながると考えています。

清水 東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県に加え、大宮と新幹線でつながる道県の人口を足すと、日本全体の約50%になることから、さいたま市に拠点を設ければ、東日本全体をビジネスエリアとすることができると考えています(図4)。さいたま市はオフィスビルの建設も活況を呈しており、人口でも全国トップレベルの転入超過自治体であるなど、働き盛りの子育て世代に選ばれ、優秀な人材を確保しやすいという大きなメリットがあります(図5)。BCPの観点では、内陸都市かつ安定した地盤の上に立ち、将来的な災害リスクも低い想定となっていて、企業がバックアップ拠点を構えるのにもふさわしい場所ではないでしょうか。

産学官連携による、東日本のビジネス強化

会津若松市長 室井照平氏
会津若松市長
室井 照平氏
1955年福島県生まれ。 1999年会津若松市議会議員就任、 2011年より現職(現在4期目)

室井 地域に新しい仕事や雇用を生み出すことも重要です。私たちは「魅力的な働く場のある会津若松」を目指す中で、スマートシティの取り組みを始めました。産学官の連携を深め、会津若松発の標準的なモデルを構築し、国内の他地域に横展開していくことを心がけてきました。その結果、デジタル田園都市国家構想の申請・採択につながっています。

大泉 産学官の連携は都市を活気づけてくれますよね。函館市の主要な産業である漁業は、主力の魚種であるイカやコンブの漁獲量減少や、後継者不足が深刻な課題となっています。そこで、「つくり育てる漁業」への転換を図り、国の交付金を活用して、北海道大学などとの連携による日本初となるキングサーモンとコンブの完全養殖の研究を実施。22年、キングサーモンの人工授精に成功したほか、天然・養殖コンブを人為的に成熟させ、早期に種苗を生産する技術を成功させるなど、研究開発に着実に取り組んでいます。

清水 さいたま市では、芝浦工業大学、埼玉大学とそれぞれ覚書を締結し、産学官の共同研究、社会実装のための産学協働、企業人材の育成や活用などを推進しています。また、産学官に金融機関を加え、広域的な連携を目指し、「東日本イノベーション・ハブ構想」を掲げています。本市をハブとして、信州大学など東日本地域のさまざまな大学との連携に取り組んでおり、将来的には本市への事業拠点進出の可能性が広がるよう、進めていきます。

今後期待される、ビジネスチャンス

室井 これまであまり接点がなかったさまざまな特性と魅力を有する自治体同士が、協力し、施策を推進することで 、魅力ある東日本地域として価値を向上できそうです。フォーラムは有効なスキームなので、この枠組みを生かし、さいたま市や函館市などの構成自治体と上手に連携することが、ビジネスチャンスの創出・拡大につながると期待しています。

大泉 「函館物産展」では、目玉企画の1つとして、新幹線を使った輸送による朝捕れ生鮮品の販売を行いました。朝、函館市の入舟沖で漁獲した鮮魚をすぐに加工・輸送すると、新鮮な状態で大宮でも食べられます。今後も新幹線を使った取り組みを拡充したいと考えています。

清水 東日本連携は、地域の経済圏が広がることで、各都市のポテンシャルが高まり、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。新幹線延伸の機を逸することなく、さいたま市が各都市の地域活性化をリードしていくとともに、企業を含め多くの皆様にお越しいただきたいと考えています。さいたま市は東日本の玄関口、交通結節点であり、企業の事業拠点や取引先がある各都市までのアクセスは抜群です。また拠点進出後もビジネスが拡大できるよう、さまざまな支援メニューを取りそろえています。事業活動拠点として、ぜひご活用ください。
⇒東日本連携・創生フォーラムについての詳細はこちら
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⇒【会津若松市】「スマートシティ会津若松」についてはこちら

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※SMACS:Social、Mobile、Analytics、Cloud、Sensor(またはSecurity)の頭文字を取ったもの。 ITの進化を議論する際の6要素といわれている