「安価で安定した太陽光発電の供給」実現への挑戦 日本の再生可能エネルギー戦略、発展の鍵とは

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藤宮氏と上原氏
再生可能エネルギーの導入拡大が進む中、普及の牽引役として注目を集めるのが太陽光発電だ。今後も発展への期待が高まるが、国土の7割近くを森林が占める日本では、適地が限られるという地理的な問題がある。この難題の解決に取り組むのが、再生可能エネルギー業界の第一線で太陽光発電事業を展開するブルースカイソーラーだ。代表取締役の藤宮康洋氏をはじめとする同社のキーパーソンへの取材から、太陽光発電を通じたエネルギーの安定供給実現への道筋を探る。

太陽光発電が推進される「納得の理由」

少し意外に思われるかもしれないが、日本は太陽光発電において先進国という立ち位置だ。IEA(国際エネルギー機関)の調査(※1)によれば、日本の太陽光発電導入容量は中国・米国に次いで世界第3位。国土面積当たりの導入容量は主要国最大級で、平地面積当たりでの太陽光設備容量は世界でもトップクラスを誇る。

風力や水力、地熱、バイオマスなど多様な方法がある再生可能エネルギー分野において、なぜ日本では太陽光発電が伸びているのだろうか。まだ太陽光発電の認知度が低かった2009年に創業され、業界をリードするブルースカイソーラー代表取締役社長の藤宮康洋氏は、次のように分析する。

ブルースカイソーラー藤宮氏
ブルースカイソーラー 代表取締役社長
藤宮 康洋

「太陽光発電が日本で普及した最大の理由は、ほかの再生可能エネルギーに比べて圧倒的にコストと手間がかからないからです。また、海外で普及している水力発電や風力発電を日本で展開するには、台風などが頻発する独特な気象条件や生態系への影響などさまざまな課題が挙げられます。再生可能エネルギーによる安定的な発電を目指すうえでは、太陽光が有力な選択肢となるでしょう」

洋上風力発電といった、国土が海に囲まれている日本で有効な発電方法はあるが、まだ実証試験の段階で、実用化に向けては時間がかかると藤宮氏は話す。カーボンニュートラルに向けた動きが世界的に加速し、既存の発電方法から再生可能エネルギーへの転換を図るうえで、太陽光発電はそのカギを握っているといえるだろう。

避けられない経年劣化を解決する「リパワリング」

しかし、風力や水力に比べて省スペースでの展開が可能な太陽光発電とはいえ、そもそも日本の国土の7割近くは森林。設置に適した平地は限られている。スペースを確保したいからといってやみくもに森林伐採をするわけにもいかない。再生可能エネルギーが注目を集め、ニーズも高まる一方で、供給を増やすことが困難という状況に陥っている。

この難問をいかに解決するか。ブルースカイソーラー取締役で、同社の保有する太陽光発電所を管掌する窪村梨絵氏は「発電効率」をキーワードに挙げる。

「太陽光発電の機器はどうしても経年劣化していきます。平均して1年に0.7%のペースで発電効率が落ちるといわれ、10年以上経つと落ち込みが顕著です。しかし近年では技術革新が進み、機器のアップグレードやリプレースを行う『リパワリング』をすることで、中には約30%以上の発電量増加に成功したケースもあります。発電所を増やすのではなく、発電所自体の能力を高めることで、再生可能エネルギー供給のニーズに応えることができます」

リパワリング図解

同社も、この「発電所自体の価値を向上させる」取り組みに力を注いでいると窪村氏は次のように話す。

「古くなった発電所を積極的に買い取ってリノベーションを行う『発電所再生事業』を展開しています。発電効率を高めるだけでなく、より長期間にわたって再生可能エネルギーを供給できるようにするのが目的です。発電量が増加したことで、4年ほどで設備投資の回収が完了する発電所もあります」

近年においては、収益だけを目的とせずSDGsへの取り組みの一環として太陽光発電所を設置した企業も多いだろう。しかし、太陽光発電所の保守・運用はそれほど簡単ではない。太陽光パネルが汚れていたり、雑草が成長して日光を遮っていたりしたら、設置年数が浅くても発電効率が落ちる。また防犯対策を含めた地道な対応も必要だが、そこまで手が回らない企業や投資家は少なくないと窪村氏は話す。

「FIT(固定価格買い取り制度)が20年間で終了することもあり、その後の運営継続を迷っている方も多いのが現状です。弊社でリパワリングすることで、そうした発電所を再生させて従来以上の価値を生み出し、再生可能エネルギーの拡大に貢献したいと考えています」

対応力が強みのO&M事業

発電所自体も再生する、サステナブルな仕組み。ブルースカイソーラーがこうしたノウハウを持つのは、太陽光発電所の開発から維持・管理までワンストップで担ってきたからだ。23年末時点で91件を開発し、累計開発容量は約283MWp。これは、約3万5000世帯分の年間想定発電量に相当する。

「運用・保守を行うO&M(オペレーション&メンテナンス)事業では、低圧から特別高圧まで計1251件(24年1月時点)を受託してきました。件数でも容量ベースでも業界上位 (同社調べ)です。実際の業務を下請けに頼ることなく、ほとんどを自社グループで行うため迅速な対応が可能で、コスト競争力も高いのが特徴です」(藤宮氏)

O&M事業図解

最新テクノロジーも積極的に導入して効率的かつ効果的な管理体制を実現。発電所の全データを24時間365日リアルタイム遠隔監視できるシステムを整え、的確に監視できるドローンや除草ロボットなども活用して太陽光発電所運営のDX化を加速している。さらに専門的な知識や資格を保有する人材を積極的に採用し、日本全国の拠点に配置。関東や北海道では電気保安法人として認定され、保守管理の外部受託に対応できるのも同社の強みだ。

「発電所は設置して終わりではありません。安定的かつ効率的な電力供給を継続するには、O&M業務をしっかりと遂行することが重要です。ケーブルのアルミ化や分散型パワーコンディショナーの移行など、設備面の強化も進めています」(藤宮氏)

大阪ガスと共同開発で「非FIT」にも本格参入

既存発電所の再生を含め、発電効率の高い太陽光発電事業を展開する同社。さらに大阪ガスとの提携により、環境価値の高い電力供給の取り組みも進めていると、開発部門を率いる執行役員の上原美樹氏は説明する。

上原氏
ブルースカイソーラー 執行役員 開発部門 部門長
上原 美樹

「非FIT/非FIP(※2)太陽光発電所について、21年から大阪ガスとの共同開発の検討を開始し、22年より協働で取り組んでいます。電気は大阪ガスが買い取り、コーポレートPPA(※3)サービスとして提供する仕組みです。大阪ガスが持つ全国各地域の電力販売網と、弊社が持つ太陽光発電所の開発実績・ノウハウを組み合わせることで、FITに依存することなく再生可能エネルギー由来の電気を全国の企業・個人に幅広く提供することができます」

太陽光発電所に適した土地が減少する中、地域と共生しながら電気を供給できる点は、まさに両社のシナジーによって生み出せる価値といえるだろう。

「SDGsへの取り組みやESGへの意識の高まりにより、業種や規模を問わず再生可能エネルギーのニーズは急増しています。それに対応し、迅速かつ安定的に電気の供給量を増やしていくことが弊社の使命だと考えています。そのために現在、大阪ガスおよびJA三井エナジーソリューションズとファンド運用の共同事業を展開する予定で、再生可能エネルギーの発電設備を運用する上場インフラファンド設立を目指して、準備を進めているところです」

そう語る藤宮氏が将来的な目標として挙げるのは、発電所にさらなる価値を付与し、社会に貢献するインフラへと成長させていくことだ。

「発電所再生事業では、機器のアップグレードやリプレースだけでなく設置場所の最適化も行います。それによって生まれたスペースを活用して、蓄電設備の設置や農業を同時に行うソーラーシェアリングも進めていく計画を立てています」(藤宮氏)

すでにソーラーシェアリングはプロジェクトが進んでおり、ブドウやミョウガ、さかきなどの栽培実績をあげている。こうした価値創造の取り組みは個人を含む幅広い投資家に注目されており、ブルースカイソーラーは再生可能エネルギー事業の資金調達ニーズと投資ニーズをつなぐ存在としてもプレゼンスを高めつつある。

「既存の発電所の買い取りやリパワリングも含め、高い水準で管理された再生可能エネルギーへの投資機会を創出することも、われわれの役割だと考えています。今後も太陽光で社会を明るく照らすため、さまざまな取り組みを展開していきます」(藤宮氏)

限られた資源の有効利用が、世界中で喫緊の課題として捉えられている現代。再生可能エネルギーの活用は、これからの社会に必要不可欠なファクターだ。太陽光の可能性を追求する同社の取り組みに、注目していきたい。

※1 資源エネルギー庁「今後の再生可能エネルギー政策について」(2023年6月21日発表)参照

※2 再生可能エネルギーの発電において、FITの適用を受けておらず(非FIT)、かつ売電価格に対し、一定の補助額を上乗せするFIP(フィードインプレミアム)の適用を受けていない発電設備(非FIP)

※3 法人が発電事業者から再生可能エネルギーの電力を長期に購入する契約

ブルースカイソーラーのHPはこちらから