都心型エリアMICE※で世界が「有楽町」に熱視線 三菱地所が目指す「地球規模で選ばれる街」
※MICE:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)のこと
2023年4月、大丸有は医師や一般市民でにぎわっていた。国内最大規模の学会である日本医学会の総会が開催されたからだ。
総会は、医師らが情報交換する学術集会と一般市民らが医学に触れる博覧会の2つからなる。それぞれ規模が大きいため従来は別のエリアで開催していたが、今回は東京国際フォーラム、KITTE、丸ビルなど大丸有一帯を使って学術集会と博覧会の両方を同じエリアで開催。日本医学会として初の試みだったが、学術集会は4万人、博覧会の来場者(オンライン除く)は約36万人と大盛況だった。
活用したのは建物だけではない。三菱地所エリアマネジメント企画部理事でMICE誘致の窓口となる「DMO東京丸の内」事務局長の藤井宏章氏は次のように明かす。
「丸の内仲通りのアーバンテラスで白衣を着た医師が綱引きをしたり、丸ビル前に救急車を展示してお子さんに体験してもらったり、まさに街全体を使ってMICEを実現できることが大丸有の魅力です」
有楽町の街ならではの独自の都心型エリアMICE
現在、世界の各都市でMICEの誘致が盛んだ。MICEはその都市にお金を直接落とすだけでなく、人や情報が集まることで産業力が強化されたり、都市のブランド力が高まるといった効果がある。
各都市のMICE戦略は、大まかに2つに分かれる。1つはシンガポールやソウルのような統合リゾート型。もう1つが、特定施設内だけでなく街全体で開催する都心型エリアMICEだ。例えば映画祭で有名なカンヌや、クリエイティブな人々が集まる領域融合型イベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)」を開催するオースティンが後者の代表例だ。
冒頭に紹介した開催例からわかるように、再開発を控える有楽町が目指すのは後者の都心型エリアMICEである。ほかにも都心型エリアMICEを展開する都市がある中で、有楽町にはどのようなアドバンテージがあるのか。三菱地所都市計画企画部ユニットリーダーの重松眞理子氏は、次のように解説する。
「有楽町はビジネスセンターでありつつ、帝国劇場や出光美術館など文化芸術を楽しめる施設や飲食店が多く、仲通りはアーバンテラスと称して気軽に休憩できるベンチやテーブルをたくさん用意していますので、会議後にネットワーキングするのにも便利です。ウォール街などの世界のビジネスセンターと異なりミックスドユースな成り立ちからも、有楽町は都心型エリアMICEができる希有な街といえます。東京国際フォーラムといった大規模なコンベンションセンターがMICEの核となるのはもちろん、徒歩圏に数ある施設やパブリックスペースが一体となって展開できること、日比谷公園と連携した展開も期待できるエリアであることが強みです 」
「ライバル」の施設同士、街のために連携できる訳
充実した施設、ビジネスセンターとの近さ、文化や飲食などのコンテンツ――。MICE開催地としての優位性にあふれた有楽町だが、魅力を支える要素がもう1つある。エリアマネジメントだ。
「コンベンションセンターやホテルなどのMICE関連施設は、普段ライバル同士です。街ぐるみで連携しようとしても、隙間で汗をかく組織がいないとうまくいきません。私たちは大丸有エリアマネジメント協会設立の02年以来、20年にわたってその役割を担ってきました。地権者や自治体、テナントなど、さまざまなステークホルダーと築いてきた信用を生かして、今後も有楽町の発展に貢献していきます」(藤井氏)
23年10月に開催されたMICEプランナーとのネットワーキングイベント「DMO東京丸の内Day」では、エリア内各ホテルの食事が一堂に並び、その場限りの特別な空間が出来上がっていた。海外のビジネスパーソンが多いイベントでは、各ホテルの一流バーテンダーが集結し、日本酒・焼酎をベースにしたカクテル開発でしのぎを削る場面もあるという。
このように多くのプレーヤーが連携する際には、核となる理念やビジョンも欠かせない。23年11月、公民一体で策定した「有楽町まちづくりビジョン」が発表され、40年に向けた将来像が示された。新ビジョンによると、有楽町が目指すのは「新たな出逢い・交流・発信の拠点」。MICEも、出逢いや交流の機会創出を担う機能の1つとして期待されている。重松氏は最後に有楽町の街づくりへの思いを語ってくれた。
「MICEだけでなく、例えばアーティストのように街に刺激的な変化をもたらす多様な主体と持続的に対話をするなどの仕組みも大切です。さまざまな取り組みと連動させることで、有楽町はもっと魅力的な街になるでしょう。この挑戦は、エリアマネジメントの歴史的な転換点になりうる。三菱地所としても、しっかり取り組んでいきたいですね」