激増するデータ量にも対応する「5G SA」の正体 日本の5Gビジネスを進展させる突破口とは

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エリクソンが提供する「よりよい5G体験」とは何か?
日本で高速通信規格「5G」の商用化がスタートしたのが2020年3月。それから3年が経過した23年3月末の5G人口カバー率は96.6%(※1)に達した。しかし、総務省のワーキンググループが取りまとめた報告書(※2)では、「ビジネスが十分に進展しているとはいえない状況」と分析している。人口カバー率が高いのに、5Gのビジネスが進まない理由はいったい何か。そして、突破口を開くには何が必要なのだろうか。
※1 総務省「5Gの整備状況(令和4年度末(2022年度末))」より
https://www.soumu.go.jp/main_content/000894733.pdf
※2 総務省「デジタル変革時代の電波政策懇談会 5Gビジネスデザインワーキンググループ報告書」(2023年7月公表)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000894450.pdf

データ量の急増でネットワーク強化が急務

総務省が公表した調査結果(※3)によれば、2023年度6月末の5G携帯電話の契約数は約7476万。前年同期比44.8%増と急速に伸びている。5G商用ネットワークを提供するエリクソン・ジャパンの代表取締役社長、ルカ・オルシニ氏はこの状況について次のように話す。
※3 総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ(令和5年度第1四半期(6月末))」https://www.soumu.go.jp/main_content/000902619.pdf

「人口カバー率も高く、日本における5Gの整備は非常に進んでいるといえます。ただ、総務省のワーキンググループが報告書にまとめているように、5Gに関わるインフラ整備や機器・端末、ユースケースのそれぞれが『鶏と卵』の関係になっているという指摘が一部であるのも事実です」

エリクソン・ジャパン 代表取締役社長 ルカ・オルシニ氏
エリクソン・ジャパン 代表取締役社長 ルカ・オルシニ氏

人口カバー率は高くとも、ビジネスにおける5Gのユースケースが創出されなければ、インフラ整備への投資インセンティブが少なくなり、機器・端末の普及も進まない。 一方で、加速度的に進むデジタル化を背景に、データトラフィックは急増している。

「1人が複数の端末を保有し、クラウドサービスなどオンラインシステムの利用も増えている今、データトラフィックは年々急増しています。ネットワーク容量を拡大して対応するために、『基盤としての5G』から、『よりよい5G体験』が可能となるネットワーク環境の整備を進めていくことが求められています」(オルシニ氏)

高速大容量だけではない5Gのメリット

「よりよい5G体験」とは何か。5Gというと「高速大容量通信」のイメージが強い人もいるかもしれないが、実は、「多数同時接続」「超低遅延」も“5Gならでは”の特徴だ。

「多数同時接続」によって活用が広がる業界はさまざまだ。例えば物流では、倉庫内の多数の機器の制御や、物品状況の把握ができるようになる。また4Gの約10分の1程度と通信の遅延を極めて少なくする「超低遅延」は、高い安全性が求められる自動運転や遠隔医療などで効果を発揮する。ゲームの挙動がスムーズになり、スポーツや音楽イベントを低遅延でライブ配信することももちろん可能になる。

「すでに消費者の間でも、『よりよい5G体験』へのニーズは高まっています。日本でも企業の関心は非常に高まっており、昨年(22年)から現在にかけて問い合わせがかなり増えています」(オルシニ氏)

企業の関心が高まっているのは、「よりよい5G体験」の実現によって、最先端のテクノロジーを活用したビジネス創出が期待できるからだ。自動運転や遠隔診療、ゲーム、動画だけでなく、モバイル金融サービスや製造業などで顕著な、熟練技術者不足やスキルギャップの問題を解決する産業用AR(拡張現実)も発展するだろう。「5Gはイノベーションのプラットフォームとなる」とオルシニ氏が強調するのもうなずける。

「5G SA」が変革の原動力となる納得の理由

では、「よりよい5G体験」を実現するネットワーク容量拡大のために何をすべきなのか。オルシニ氏は5Gのパフォーマンスを最大限に引き出すことができる「5G SA(スタンドアローン)」の展開が必要だと語る。

「現在日本の5Gは、基本的にNSA(ノンスタンドアローン、5G NSA)で構成されています。4Gネットワークを前提としているため、5Gの大きな特徴である『高速大容量通信』が十分に発揮されず、『多数同時接続』『超低遅延』にも対応できていません。5G SAは、5G専用の技術と設備で構成されていますので、通信速度・容量のさらなる向上に加え、『多数同時接続』『超低遅延』が実現し、用途に応じて仮想的にネットワークを分割するネットワークスライシングなどの高度な通信機能を提供することも可能になります。まさにビジネス変革の原動力となるのが5G SAなのです」(オルシニ氏)

NSA(ノンスタンドアローン、5G NSA)とSA(スタンドアローン、5G SA)の比較
NSA(ノンスタンドアローン、5G NSA)とSA(スタンドアローン、5G SA)の比較

この5G SAネットワークの構築において、エリクソンは多くの実績を誇る。そもそも265ある世界の5G商用ネットワークのうち、エリクソンは6割近い155を提供しており、21年4月にはいち早く欧州最大級の商用5G SAネットワークを運用開始。現在、グローバルで26の5G SA商用ネットワークを展開している(23年9月末現在)。

さらに見逃せないのは、5Gの目玉技術で、駅や繁華街など人口密集地での通信品質を高める技術「Massive MIMO(マッシブ マイモ)」でもエリクソンが存在感を発揮している点だ。

「Massive MIMOは、サイズが大きいなどの理由で、日本での普及率は10%程度にとどまっていました。そこで当社は、何年にもわたって大規模な投資を行い、 ASIC(集積回路)を独自に開発してMassive MIMO無線機の小型化・軽量化に取り組んできました。初期の無線機は約60kgでしたが、最新機種は12kgと5分の1になり、低消費電力・高パフォーマンスも実現しています」(オルシニ氏)

エリクソンのMassive MIMO最新機種
エリクソンのMassive MIMO最新機種は一人で持ち運びできるようなサイズ・重量感

産業界ではすでに「5G SA」が真価を発揮

5Gの真のパフォーマンスを引き出し、「よりよい5G体験」の提供につながるエリクソンのソリューションは、すでにさまざまなユースケースを創出している。

「工場の自動化を目指すスマートファクトリーの取り組みや、貨物手配や積み降ろしなどの港湾オペレーションにおける自動化の取り組みなどで導入いただくケースが増えてきています。安定した通信が求められるからこそ、信頼度が高く、セキュリティーや接続性がしっかりしているローカル5Gの需要が高まっています」(オルシニ氏)

スマートファクトリーのイメージ
スマートファクトリーのイメージ

例えば、早く精度の高い地震速報サービスを展開するミエルカ防災との協業では、実証実験において、エリクソンプライベート5G(ローカル5G向けのエリクソン製品の名称)を介した公衆網やインターネット経由の速報により迅速な緊急地震速報の配信に成功した。精密機械を取り扱う工場で活用すれば、数秒早く精密機械を停止できるため、高価な機械の損傷を防ぐことが可能だ。もちろん従業員の安全確保もしやすくなる。

エリクソンプライベート5Gのデモ展示
エリクソンプライベート5Gのデモ展示

また、コニカミノルタと協業での実証実験では、エリクソンプライベート5Gを介して、従来のLTEでは実現しなかった4K画像の超低遅延伝送にも成功。鮮明な画像を基に遠隔操作が可能となるため、幅広い分野でユースケースが広がっていくだろう。

「5G SAネットワークの真価がさらに発揮できるように、各種ソフトウェアに簡単にアクセスできるAPIの公開も進めていきます。それによってDXの加速を促すとともに、収益性の確保にも貢献していきます。また、データトラフィックやIoTデバイスの急増を見据え、カーボンニュートラル実現のために消費エネルギー量の大幅削減にも力を注いでいきます」(オルシニ氏)

言うまでもなく、インフラの整備は経済成長に欠かせない。日本の5G人口カバー率の突出した高さは、デジタル社会のイノベーションを加速させるうえで、グローバルにおいても大きなアドバンテージだ。それをより有効にするエリクソンのソリューションは、あらゆる産業で有用性が高いといえよう。

今日の一般ユーザーの期待に応え、産業の発展につなげていくためには、今、「よりよい5G体験」を基にしたビジネスを加速させることこそが、目の前のイノベーションにつながる近道となる。

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