「製薬業界のSAP導入」成功させるSIerの実力 20年以上、全国の企業を支援してきた実績
製薬企業の業務変革へ、SAP導入プロジェクトの功績
SAPが今ほどメジャーではなかった1990年代中ごろ。JSOL(当時、日本総合研究所)は、大阪の製薬企業・A社から要請を受けて、SAPの機能である購買、生産、販売、会計を一括で導入、稼働させるプロジェクトを成功させた。
当時の製薬業界は、個別の業務に最適化したシステムのスクラッチ開発や、業務システムの一部をSAPで動かすケースが多く、SAPで業務を統合するケースはまれだった。しかし業務システムに対して先進的な考えを持つA社には「業務を組織単位ではなく全社最適に変えたい」「データを一元管理したい」という意向があった。これを受けて、ITコンサルティングに定評のあるJSOLが、全領域のシステム導入プロジェクトを受託することになったという。
「このプロジェクトの成功を受けて、さまざまな製薬企業でSAPの導入が進んでいきました」と振り返るのは、当時プロジェクトマネジャーを務めた今仁均氏だ。今仁氏は、企業へのSAP導入支援に数多く携わってきた実績を持つ。
「製薬企業において、システム構築自体の難易度はそれほど高くありません。ただ、製薬関連の法律をはじめ遵守しなければならない独自のルールが多く、病院向けの医薬品と市販薬で商流が異なるなどの事情があります。こうした製薬企業にまつわるノウハウが、A社のプロジェクトを皮切りに蓄積され、当社の強みになっていきました」
90年代後半には、全国の製薬企業でSAPへの関心が高まってきた。今仁氏は、東京に本社を持つB社のSAP会計システム導入プロジェクトを担当することになる。
JSOLが全業務領域を導入したA社とは異なり、B社では各業務領域を複数のSIerで受託する分業体制が敷かれた。2年がかりのプロジェクトを経て、2002年4月に会計システムが本格稼働。この際のJSOLのパフォーマンスが評価され、B社の国内グループ4社に、JSOLが全業務領域をカバーしてSAPを展開することも決定した。
「B社から『ぜひ全業務領域で依頼したい』と言われました。会計システムを予定どおり導入できたことや他社での実績、コンサルティング力を信頼していただいたのだと思います。私にとっては、プロジェクトの成功が次のビジネスにつながることを実感できた初めての経験になりました」
JSOLが選ばれるのは「3つの強み」があるから
B社のグループ4社には「なるべく低コストでSAPを導入したい」という意向があった。まずは全社の業務状況をリサーチし、構想を策定。協議を重ね、リスクを回避しながらなるべく早くSAPの効果を出すための方法を模索した。
その結果、会計と人事の領域は4社で一斉導入し、各社で業務プロセスが大きく異なるサプライチェーン・マネジメント領域は、過去事例をベースとした製薬業向けテンプレートをベースに順次導入することを提案。複数のノウハウを組み合わせることで、1年間で4社すべてに、コストを抑えつつ導入することができた。
このときから今日までJSOLは、日本の大手・中堅製薬企業のSAPシステム導入を長年受託し続けている。なぜそれが可能なのか。同社独自の強みについて、今仁氏はこう説明する。
「大きく分けて3つあります。1つ目は、製薬業界そのものや製薬企業の業務に関する知識の豊富さです。それをベースにしたコンサルティング力を生かして、全体最適の業務プロセスに誘導することができます。
2つ目は、SAPに対する知識と経験です。SAP社からつねに情報をキャッチアップし、知見を蓄積しているのが強み。SAPの機能の進化は極めて速いため、それを逃さない体制が重要です。
3つ目は、プロジェクトを計画どおりに完遂する実行力と推進力です。SAP導入は、現行業務の踏襲要請や組織間の調整などにより、稼働までに困難に直面する例が多くあります。当社がそうならないのは、多くのSAP導入経験を基にした方法論を持っているから。複数の課題を調整し、プロジェクトを計画どおり完遂する力を持っています」
SAPの導入プロジェクトを開始してから20年以上経つ現在もこの3点を意識し、磨き続けているという。
顧客との信頼をベースに、付加価値を生み出す人財たち
SAPシステムの構想策定から保守運用までワンストップで担うJSOL。製薬企業への実績をベースに、今では食品業界や消費財業界にも対応している。
「食品・消費財業界は商流が非常に複雑で、とくに販売・物流は整理が難しい領域です。この点も、当社独自のノウハウで解決してきました。大手企業を中心に、着実に信頼を積み重ねてきた自負があります。近年は、金属加工機械メーカーなど製造業へのSAP導入支援も開始しました」
最近は業務をシステムに合わせる「Fit to Standard」の思想の下、顧客から「自社独自のシステムを作り込むのではなく、SAPの標準仕様に合わせたい」という声が上がるようになった。そのため、どのソリューションをどう組み合わせるべきか柔軟に考える、コーディネート力が重要になっているという。
「昨今は、先行き不透明な経営環境やDXの潮流などによって、顧客からの期待も変わってきました。当社としてはSAPを可能な限り標準の状態で導入し、ビジネスシーンの変化に強いシステムを構築したいと考えています。自動化はもとより、SAPに蓄積された大量のデータと外部データを組み合わせるなど、新しいデジタルソリューションを取り込んで進化させていきます」
個別の領域にとらわれず、付加価値を提供するSIerとして支持されてきたJSOL。今仁氏は、「当社には、信頼でき、尊敬できる真摯な仲間と、多くの領域で力を持つプロフェッショナルがいる」と語る。人財力が、数々のプロジェクトを成功に導くカギとなっていることは言うまでもないだろう。
「私自身の専門は会計システムで、それ以外の領域はわからないことばかりでした。しかし、何か相談すると資料を送って一緒に考えてくれるメンバーや、専門領域について解説してくれるメンバーなど、たくさんの人に助けられてここまできました。JSOLには、一致団結して顧客の期待を超える価値を提供しようと努力する風土が根付いています。この考え方に賛同し、顧客にとっての真のパートナーとなるために一緒に働きたいという仲間を求めています」
JSOLは、一つひとつの課題に取り組んで顧客との信頼関係を築きながら、挑戦の機会を手に入れられる職場だ。プロフェッショナルたちが生き生きと輝き、働きがいを自ら見つけ出す。そんな環境が、良質なビジネスを生み出し続けている。