従業員の環境行動によるCO2削減量を可視化 環境リテラシー向上を促すソリューション
従業員の環境行動変容を促す
「Green Program for EmployeeTM」
近年、脱炭素社会の実現に向けた動きが活発化し、企業にとっても気候変動への取り組みは、喫緊の課題となっている。また、企業の評価においても、事業の業績という財務観点に加えて、ESGやGX等の非財務観点での取り組みが重要視されはじめ、脱炭素に向けた取り組みは、企業価値を高める上でも不可欠な要素である。
昨今の働き方の変化や多様化を背景に、従来のオフィスをターゲットとした取り組みだけでなく、日本のカーボンフットプリントの約6割を占めると言われている家計消費にも目を向ける必要が出てきた。これからは、個々人の環境意識をより高めていかなければならないフェーズにきているのではないだろうか。
そうした中、NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアは「Green Program for EmployeeTM」を開発した。NTTコミュニケーションズの宮田吉朗氏は、次のように説明する。
「50社を超える企業にヒアリングを行ったところ、脱炭素の取り組みが従業員に浸透しない、環境教育の機会はあるが従業員が行動を起こすまでには至っていない、成果の可視化が困難という大きく3つの課題が挙がりました。これらの解決のため『従業員』に焦点を当てたITサービスを通して、一人ひとりの環境意識向上や、行動変容を促し、その成果を把握することが企業の脱炭素活動の促進と企業価値の向上につながると考えました」
Green Program for EmployeeTMは自身のCO2排出量や削減量を可視化することで環境に対する意識を高め、知識を習得してアクションを促す一連の流れをサポートするプログラムだ。プログラム内で提供されるアプリケーションの利用状況や従業員の意識、行動から環境施策の効果について定量的に把握できるので、社内外への発信や新たな社員向け施策の検討にも活用できる。
脱炭素活動を加速するデータ分析機能「Stats」
共同開発を行うNTTコムウェアでは、客観的に自社のパフォーマンスや他社と比較した位置付けを把握するための「Stats」機能を開発。NTTコムウェアの梅澤伸也氏は開発経緯を振り返る。
「企業の環境への取り組みを定着化させるためには、自社内情報から傾向を分析するだけではなく、他社との比較により客観的な自社の立ち位置を知ることが大切です。『Stats』機能は、環境意識や行動データについて他社との相対比較が可能です。環境への取り組みを進める上での方向性やアプローチの検討に活用していただけます」
「Stats」機能があれば、利用企業全体もしくは業種内での比較・相対評価ができるため、利用企業全体における自社のCO2排出量ランキングや、自社の1人当たりのCO2削減量と平均値との乖離の確認が可能だ。
1社ではわからない「全体の傾向」、「業界特性」などから自社の立ち位置を把握し、適切な対策を検討することができるため、脱炭素活動をより促進することが狙いだ。
13社が参加した
「ONE TEAM CHALLENGE」で見えてきたこと
従業員を起点とした脱炭素活動を加速させるべく、2023年7月に環境省の推進するデコ活の一環として「ONE TEAM CHALLENGE」を開催。業界を超えた13企業1348名が参加し、各社21日間にわたり、従業員のCO2排出量の可視化や環境配慮行動に取り組んだ。
また、蓄積されたデータを集計し、現状を把握、横断的な分析も行った。集計結果として、約3万回の環境配慮行動があり、約15トンのCO2削減を達成。実施後のアンケートでは、参加従業員の約8割が環境意識の向上を実感したと回答があった。
「データを集計・分析した結果レポートを基に参加各社と振り返りを行い、参加者からは『環境行動データを可視化することの効果を実感した』『期間終了後もエコアクションを続けており、行動の定着が見られた』『従業員の意識により再配達回数の削減など、さらにCO2削減に貢献できる』など多数の声をいただきました。今後は脱炭素活動に意欲的な企業と共に、企業同士の交流会や有識者セミナーなどの開催を通じて、従業員の環境行動変容を促し、脱炭素社会の実現につなげていきたいです」(梅澤氏)
「エコアクション」データの新しい活用価値の創出
NTTコムウェアの芝田豊綱氏は、Green Program for EmployeeTMとGreen Program for EmployeeTM Statsの活用について展望を教えてくれた。
「エコアクションによる成果の定量的な把握は、企業が統合報告書などで社会に対し発信する材料となり、従業員のエンゲージメントや企業のブランディング、採用活動にも好影響を与えると考えています。同業他社とのエコアクションの相対比較から次に打つべき施策も見えてきます。蓄積されたデータを、環境に配慮した新しい事業や商品の発案や考察に活用するなど、データの二次活用も視野にいれています。また、カーボンクレジットの流通等におけるパートナー企業との連携・共創も推進していきます」
経済的価値と、カーボンニュートラルという社会的価値の両方を追求し、現在もさらなるアップデートを試みている。「エコアクション」による定量的成果が企業評価に結びつく日が来るかもしれない。
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