主催:東洋経済新報社 特別協賛:日本マイクロソフト

基調講演
顧客の振る舞いを変えるビッグデータ活用を
見える化止まりにしない
野村総合研究所 コンサルティング事業本部 ICT・メディア産業コンサルティング部
ビッグデータは、詳細でリアルタイム、かつ音声などの非構造化データを含む多様性によってサイズが大きくなる。野村総研の鈴木良介氏は「世の中の事象を変換した『データ』は増えましたが、そのままではお金になりません。データ解釈から『情報』を抽出し、顧客など誰かの『価値』に働きかけ、その振る舞いを変えて、『売上や効用』などの結果につなげるというバリューチェーンが大事です」と話す。たとえば、加速度センサーを搭載した「やせるフォーク」は、動きが速いと振動や光で知らせる。それは、動きから早食いという情報を検知。太りやすい食べ方を変えて健康という価値に働きかけ、肥満防止と売上アップを目指す仕掛けだ。中でも重要なのは「振る舞いを変える」仕組みだ。A駅近くのスーパーが、隣のB駅を最寄りにする人に割引クーポンを送ってもあまり効果はない。しかし、健康意識の高い活動量計利用者に「一駅前のA駅で降りて歩きませんか?トクホ商品を割引きしますよ」と、持ちかければ、心を動かせる可能性は膨らむ。鈴木氏は「データを使って相手の関心事をくすぐることが結果につながります」と述べた。
事例講演Ⅰ
機械学習を使った、オークファンの
価格最適化への取り組み
オークファン サービス基盤技術部部長
オークション相場検索サイトを運営するオークファンで、価格調査・予測を手掛ける得上竜一氏は「400億件のデータを分析し、未来を予測する手法をビジネスとして提供したい」と話す。たとえば、ユーザーの検索やアクセスログといった行動データなどから、各ユーザーのモチベーションを数値化した指標を算出すれば、退会防止策や上位プラン移行のプロモーションにつなげる。また、家電量販店などでは、ネットショップでの購入前に店頭で商品の実物を見るだけの「ショールーミング」対策が課題になっているが、価格設定を工夫することで、持ち帰り志向が強い商品では、ショールーミング客に対して、店頭での購買を促すこともできる。コンピュータがデータから学んだ特徴を利用して数値を予測する機械学習について得上氏は「予測したいことを明確にすることがポイント。クラウドで機械学習環境が提供されており、気軽にやってみることもできます」と述べた。
事例講演Ⅱ
朝日カルチャーセンターの事例から見る、
顧客の嗜好を掴む行動履歴とレコメンデーション
ネクストスケープ 事業本部第二SI部 アーキテクト
ネクストスケープの青木淳夫氏は、同社が構築した朝日カルチャーセンターのウェブサイトに組み込んだ、機械学習によるレコメンデーション機能を紹介した。同サイトは、CMS(コンテンツ管理システム)の手動設定によるレコメンデーション機能も使っているが、1期(3カ月)で全国約1万に上る講座すべてを手動設定するのは難しい。そこで、マイクロソフトのクラウドソリューション、Azure(アジュール)の機械学習サービスで自動化したレコメンデーションを併用した。クラウドベースのシステムにわずか2週間で実装。分析用サーバーも不要で、一般的サービスの10分の1の運用コストで、1訪問あたり閲覧講座数は1割増えた。青木氏は「機械学習による予測分析は難解なイメージがありますが、アジュールは、高度な専門知識がなくてもドラッグ・アンド・ドロップの操作で設定可能。分析結果をスムーズにサービスに反映できます」と手軽さを強調した。
事例講演Ⅲ
ナレッジコミュニケーションの口コミサイトにおける、
機械学習の効果
ナレッジコミュニケーション 代表取締役CEO
教育系サイト「ナレコム」運営やSI事業を手掛けるナレッジコミュニケーションの奥沢明氏は、機械学習による課題解決について語った。ナレコムは、ユーザーが求める情報にたどり着くまで探す手間がかかること、不正書き込み削除作業の増大、スタッフの経験と勘に頼ったSEO(検索エンジン最適化)の信頼性…という三つの課題を抱えていた。これらの対策に機械学習が有効と判断した同社は、わずか2週間でアジュールを実装、ページビュー、離脱率ともに改善した。アジュール選定の理由について奥沢氏は「検証、答え合わせをしたうえで、有益と判断できたロジックを実装できるのが強み」と指摘。さらに、日付などに気象データも加味した精度の高い需要予測、IoT(モノのインターネット)の膨大なデータからの異常検知といった使い方もできる。奥沢氏は「紹介した活用法はごく一部。アジュールの機械学習はお客様のさまざまな課題を解決することができるはずです」と述べた。
事例講演Ⅳ
「顧客時間と時間を共有する」
CRM & Digital Marketing戦略
ネットとリアルの融合をキーワードに
良品計画 web事業部部長
良品計画 web事業部 CMT(チーフ・マーケティング・テクノロジスト)
無印良品を展開する良品計画の奥谷孝司氏は「購買データだけでなく、購入前の検討、購入後の使用消費を可視化して、お客様との絆を作ることが大事」と述べ、スマートフォンアプリ「MUJIパスポート」を中心としたデジタルマーケティングについて語った。SNSで友人の評判を見て、検討、購入し、その評価をSNSに戻すサイクルができた今は「お客様に寄り添ってコミュニケーションする」ことが重要。また、せっかくキャンペーンで関心を高めてくれた顧客との関係性を維持するためにもパスポートを導入。これにより、セール期間の告知などメディア機能のほか、ログインした日時・場所のデータを蓄積した商圏地図など、さまざまなデータを取得できるようになった。
濱野幸介氏は、マイクロソフトパワーBIを使ったデータのデモを披露。一般社員にもなじみのあるエクセルをベースにしたツールで「ITの専門家ではない現場の方もデータを活用できる」ことを示した。最後に、奥谷氏は「感覚的な理解をデータで実証することは大切。データ分析から予測まで進んで、マーケティングの効果を可視化しつつ、精度を高めていきたい」と話した。