「カスタマーサポート内製化」が事業に与える影響 肝は「問い合わせが来る前」である納得の理由

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RightTouchの代表取締役である、野村修平氏と長崎大都氏
世界的に見ても質が高いと評価されている日本のカスタマーサポート(CS)。しかし、コストセンターと見なす企業も少なくない。こうした中、問い合わせ前からエンドユーザーの困り事を把握し、満足度や成約率を向上させようという動きがある。その背景にあるのがCSを取り巻く状況の変化だ。企業が注目するCSの可能性と新たな価値とは何なのか。カスタマーサポート支援に特化した事業を提供するRightTouchの代表取締役である、長崎大都氏と野村修平氏に話を聞いた。

CSの業務改善を阻む3つの壁

誰もが一度は利用したことがあるであろうカスタマーサポート(CS)。顧客と企業の貴重な接点だが、一方でコストセンターとも見られがちだ。なぜCSは過小評価されてしまうのか。RightTouch代表取締役の長崎大都氏は、その実情をこう語る。

「CSの業務改善が事業にどう貢献するかが可視化されていないうえに、業務改善を阻む壁が3つあります。1つ目は“システムの壁”です。大きなコールセンターでは自社向けにカスタマイズしたシステムを導入していますが、社会の変化や技術の進歩に合わせて変えようとすると莫大なコストと時間がかかり、自分たちで改善できません。

RightTouch 代表取締役 長崎 大都氏
RightTouch
代表取締役 長崎 大都

2つ目は“オペレーションの壁”です。今やCSは外注が基本で、その価格体系はオペレーターの人数に応じて決まります。少ない人数で回せるようにすると外注側の売り上げが減るビジネスモデルであるため、業務改善による効率化のインセンティブがない構造なんです。

3つ目は“部門の壁”です。CS部門は電話などの問い合わせが来た後の改善に責任を持つケースが多く、逆にWebサイトはマーケティング部門が管轄しており、電話が来る前の改善をするための打ち手もデータもCS部門が持っていない状態です。Webページ1つを改善するにも他部署を巻き込む必要があり、改善に半年かかってしまう、なんてことがざらにあると思います」

そして今、CSを取り巻く状況は急激に変化しているという。長崎氏とともに同社代表取締役を務める野村修平氏はこう指摘する。

「緊急事態宣言以降、ユーザーが実店舗で質問するのが難しくなり、コールセンターの需要が増加しましたが、通常に戻った現在でもその勢いは続いています。一方で、オペレーター以外の職種の時給が上がり、オペレーターの採用難も起きています。需要増と採用難の掛け算が起きているんです」

サイト内の導線改善で自己解決を先回りしてサポート

CSという顧客接点の重要性に気づき始めている企業もあるという。野村氏は企業の意識の変化に気づいたきっかけをこう語る。

「もともと、長崎と私は当社の関連会社であるプレイドに在籍していたのですが、そのとき2人で担当した案件で、プレイドが提供しているCX(カスタマーエクスペリエンス)プラットフォーム『KARTE』を使いたいというご要望がCS部門から3件も続きました。

RightTouch 代表取締役 野村 修平氏
RightTouch 
代表取締役 野村 修平

KARTEのユースケースの9割はマーケティングなので、2人とも『ここに何かヒントがある』と直感しました。そこで先方のCS部門役員や部長の方々とディスカッションを重ねて見えてきたのが、サポート改善の大きなヒントは『問い合わせ前』のデータ活用にあることだったんです」

今やほとんどの企業はプロダクトやサービスの公式サイトを作っている。コラムやFAQ、チャットボットなど、ユーザーの疑問解消に役立つコンテンツの充実を図っているはずだ。しかし、そこに課題があるのだという。

「コンテンツが充実したサイトやFAQは、いわば“辞書”のようになりがち。見る側に、欲しい情報を探す意欲と技術が求められます。今のエンドユーザーは自己解決の意欲が高く、電話による問い合わせは最終手段と考える方が多いため、ネット上で解決できないと諦めて離脱してしまうことも少なくありません。これは大きな機会損失です。だからこそ、①エンドユーザーの課題を先回りして把握し、②適切な情報をマッチングするというアプローチで、課題解決へと先導する必要があります」(長崎氏)

実際にネット上では、サイト内で迷ったエンドユーザーはFAQやさまざまなページを行き来する。それでもわからなければ、問い合わせるかサイトから離脱するかの2つの道へと進む。だからこそ、課題解決しやすいようサイト内の導線を整備し、2つの道の分岐前からサポートする。そのための手段として誕生したのが、「問い合わせ前」に着目した「RightSupport by KARTE」なのだ。

CS部門の業務を内製化できる新たな武器

同プロダクトの特徴について、長崎氏はこう語る。

「多くのエンドユーザーはサイトを見てから電話をしますが、その方がどのページを見ていたのかを把握するのは困難です。デジタルマーケティング部門でアナリティクスツールを導入している企業も多いですが、『CSに必要な情報が取りにくい』『CS部門に利用権限がない』といった障壁があり、CS単体での改善ができていない会社が多いと思います。

CS部門が求めているのは『なぜ問い合わせが起きてしまうのか?』の答えであり、RightSupport by KARTEは自己解決のボトルネックを見つける仕組みを提供しています。さらにサイト自体を変えることなく、適切なタイミングで適切な情報を提示し、適切なページに誘導することが可能になります。このように、CS部門で自ら原因を特定して手を打ち、改善するというPDCAサイクルを内製化できるんです」

例えばある保険会社のCS部門が同プロダクトを導入すると、保険の申し込み前だけでなく、申し込み後にも問い合わせが非常に多いことがわかった。その中の多くが「申し込みできているか不安」という内容だったため、申し込み時に「申し込み完了」の情報を完了ページで表示し、エンドユーザーとのコミュニケーションを充実させた。

「実店舗におけるいい接客とは、お客様一人ひとりに適したタイミングでお声がけし、課題を把握して解決に導くこと。これがネット上でも可能になるのです。開発に当たって、データやITに詳しくない方でも見やすく、CS部門の文脈に沿った、使いやすい作りを心がけました。

うれしかったのは、導入いただいた企業の方に『出社したらまずRightSupportを開いて課題を確認し、改善策を考えます。自分たちの武器を手に入れて、自走できるようになりました!』とおっしゃっていただいたこと。社長賞を取ったというお話もよく耳にします。サイト内で疑問や課題が解決したエンドユーザーの成約率が高いことが可視化され、CS部門の事業貢献が社内でも評価されているようです」(野村氏)

可視化した情報を現場のオペレーターにつなぐ

一部の企業ではCS部門のインフラにもなり始めているRightSupport by KARTE。CSの課題はほかにもあるという。その1つがコールセンターの中心的な業務「電話応対」だ。

「導入企業のコールセンターを見学させていただく機会が多いのですが、いつもオペレーターのスキルの高さに驚きます。ただ各社共通の課題として、エンドユーザーの問題や用件が理解できた後の応対スキルは高いものの、用件を把握するまでに大きな時間がかかっていました。そこでわれわれが持っている問い合わせ前のデータをオペレーターに渡せれば、問い合わせ体験を大きくアップデートできるのでは?と思ったんです」(長崎氏)

こうして生まれたのが、2023年10月にローンチされたRightConnect by KARTEだ。エンドユーザーがサイト上で自己解決できずに電話で問い合わせをすると、オペレーターは連携された問い合わせ前のデータを基に、即座に用件を把握してサポート応対を進められるようになる。また、同データを使って課題内容に適したオペレーターチームにつなげることもできるため、ミスマッチによるエスカレーションも抑制できる。

オペレーターは課題の特定やつなぎ直しに時間を割く必要がなくなり、課題解決に集中できるという仕組みだ。現場の負担を軽減するプロダクトは採用難解決の糸口にもなるだろう。

RightConnect by KARTEの使用イメージ

「CSの真の価値とは、企業が精魂込めて作ったプロダクトやサービスの本来の価値をエンドユーザーに届けることだと思います。決してコストセンターではない。RightSupportやRightConnectが、CSの働き方を変えるためのOSのような存在になれたらうれしい」と結んだ両氏。ネットでの申し込みや手続き、買い物が当たり前となった今、唯一の顧客接点ともいえるCS。その可能性を生かす方法に、今後多くの企業の注目が集まりそうだ。
⇒RightSupport by KARTEについて詳しくはこちら
⇒RightConnect by KARTEについて詳しくはこちら