不動産の枠を超えて「未来環境デザイン企業」に 「3つの事業の柱」を組み合わせ地域社会に貢献

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レーベンクリーンエナジー 代表取締役社長 谷口 健太郎氏 MIRARTH ホールディングス 代表取締役 兼 グループCEO 兼 グループCOO 兼 社長執行役員 島田 和一氏
創業50年を迎えた昨年、タカラレーベンは持株会社体制へ移行し、社名を「MIRARTH(ミラース)ホールディングス」に変更した。あえて「タカラレーベン」の名を冠さなかったのには、不動産総合デベロッパーの枠を超えて「人と地球の未来の幸せに貢献したい」という大きな志があるからだという。新体制の発足から1年が経った現在のビジネスの進捗と、今後に向けた挑戦とは。同社代表取締役の島田和一氏と、不動産事業に次ぐ「第2の柱」として期待されるエネルギー事業をリードするレーベンクリーンエナジー 代表取締役社長の谷口健太郎氏に話を聞いた。

不動産の領域を超えて「未来環境デザイン企業」に

2022年10月に旧タカラレーベンが「MIRARTH(ミラース)ホールディングス」としてスタートを切ってから1年。代表取締役の島田和一氏は、「『MIRARTH』の認知度も徐々に上がってきていると手応えを感じています」と語る。

新社名はMirai(未来)と Earth(地球)に由来する。社名変更と同時に公表したパーパスには「サステナブルな環境をデザインする力で、人と地球の未来を幸せにする。」を掲げた。不動産総合デベロッパーの枠を超えて、「未来環境デザイン企業」へと進化していく決意を込めたものだという。

タカラレーベンはマンションブランド「LEBEN(レーベン)」などを手がける不動産総合デベロッパーとして認知度が高い。持株会社化などに当たっては、一般的には知名度の高いブランド名や社名に「ホールディングス」を加えるというのが王道だが、同社はあえて、創業時の社名(宝工務店)に由来する「タカラ」や「レーベン」を入れなかった。「外していいのか、相当悩んだ」(島田氏)としながらも、そうしなかったのは、将来を見据えた成長戦略として、事業ポートフォリオの拡大を続けてきた背景があるからだ。

MIRARTH ホールディングス 代表取締役 兼 グループCEO 兼 グループCOO 兼 社長執行役員 島田 和一氏
MIRARTHホールディングス
代表取締役 兼 グループCEO 兼
グループCOO 兼 社長執行役員
島田 和一氏

「大きなきっかけとなったのがリーマンショックです。当時、収益の大部分を不動産事業、とりわけ新築分譲マンション事業に依存していたことから大きな痛手を負い、回復までには時間もかかりました。その教訓から、不動産事業のみの一本足打法ではなく、事業ポートフォリオの多角化を推進してきたのです」

その1つが、再生可能エネルギーを活用した事業だ。11年から、マンションの屋上にソーラーパネルを設置した「太陽光発電搭載マンション」の供給を開始し、13年にはメガソーラー事業に参入。16年にはタカラレーベン・インフラ投資法人が東京証券取引所インフラファンド市場に第1号として上場を果たした(23年2月、TOBに伴う連結子会社化により上場廃止)。不動産事業を軸に据えながら派生する領域へ着実に事業を拡大してきたわけだ。

持株会社体制への移行に先立つ22年4月には、こうして不動産の枠を超えて広がってきた事業セグメントを再編。「不動産事業」「エネルギー事業」「アセットマネジメント事業」の3つの事業と、その他事業にセグメントを区分した。コア事業である不動産事業、第2、第3の柱とするエネルギー事業とアセットマネジメント事業を中心に、事業成長に向けて迅速な意思決定ができる体制を構築している。

日本全国で地方創生の取り組みを加速

1972年の創業から現在までの51年間で、不動産市場や地域社会を取り巻く環境はさまざまに変化してきた。少子高齢化に伴う人口の減少や、都市部への人口集中による地方の過疎化、外部要因による不透明な経済環境といった課題への対応が求められる中で、MIRARTHホールディングスは近年、多角的な事業展開によって日本全国で地方創生への取り組みを加速させている。

例えばコア事業である不動産事業では、新築分譲マンションの供給エリアが4年前の全国31都道府県から40都道府県まで拡大した。再開発の実績も積み重ねており、中心市街地活性化法に基づく再開発事業の全国認定第1号となるプロジェクトを行った富山県富山市では、現在までにマンション12棟を供給。コンパクトシティ化推進の成功モデルと評価される街づくりに寄与している。

最近では神奈川県小田原市の商業ビル跡地の再開発計画を発表し、28年3月までに商業施設が一体となったタワーマンションを建設する予定だ。中心市街地のにぎわいを再生し、地域活性化への貢献を目指す。

小田原のタワーマンション(完成イメージ)
小田原市に建設予定のタワーマンションのイメージ

インフラファンドやJ-REIT、私募ファンドなどを運用するアセットマネジメント事業では、国営公園として初めて民間資金を活用した整備・管理手法(Park-PFI)による認定を受けた複合型天然温泉リゾート「アクアイグニス淡路島」(22年7月オープン)で、グループ会社のタカラアセットマネジメントが事業資金の運用管理を行っている。

アクアイグニス淡路島
22年7月に開業したアクアイグニス淡路島

「地方創生への関心が高まっている一方で、各自治体の財源には限りがあります。かといって当社のようなデベロッパーがアセットを保有して事業を行うのも難しいところ。そこで、金融機関や投資家から資金を調達し、当社が運用管理を受託するようなスキームを提案しています」と島田氏。引き続き、地域の活性化や価値向上に寄与する同社グループの取り組みが期待される。

※国土交通省近畿地方整備局プレスリリース(令和2年11月20日)より

エネルギー事業を不動産に次ぐ主軸に

エネルギー事業は、同社の事業ポートフォリオにおける「第2の柱」として、不動産事業に次ぐ主軸と位置づけている。同時に、同社が注力する地方創生の取り組みにおいても大きな役割を担う事業だ。

レーベンクリーンエナジー代表取締役社長谷口 健太郎氏
レーベンクリーンエナジー
代表取締役社長
谷口 健太郎氏

「『MIRARTH』の社名、そしてパーパスに込めたサステナブルな環境づくりを実現するために重要なのがエネルギー事業であり、大きな使命感と可能性を感じています」と、同社グループで再生可能エネルギーを活用した発電事業を手がけるレーベンクリーンエナジー 代表取締役社長の谷口健太郎氏は力を込める。

MIRARTHホールディングスは13年以降、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に対応したメガソーラー発電所を積極的に開発し、23年3月時点での総発電量は約360MW(メガワット)に達した。

一方、12年に始まったFITは買い取り期間が順次終了する。そこで同社が進めるのが、PPAモデル(電力販売契約)を中心とした「脱FIT」ビジネスだ。

PPAは企業などの需要家と契約し電力を供給するビジネスモデルを指す。需要家の敷地内に発電施設を設置する「オンサイトPPA」と敷地外に設置する「オフサイトPPA」があるが、レーベンクリーンエナジーではすでに大手商社や電力会社と提携し、オフサイトPPAで需要家のニーズに応える体制を整えつつある。将来的には、電力の地産地消ができる地域マイクログリッドの実現も構想している。

さらに脱FITに向けては、従来の発電施設の売却から施設を保有しながらの売電へと転換し、ストックビジネスの拡大を図る。タカラレーベン・インフラ投資法人のTOBもその取り組みの一環だ。

また、23年4月に発電を開始した「富士山朝霧バイオマス発電所」では、牛ふんを利用したバイオマス発電による電気を小売事業者を介して地域住民へ売電することで地産地消を推進。生成された液体肥料を販売するなど、牛ふんの処理問題にも寄与していく考えだ。

富士山朝霧バイオマス発電所
富士山朝霧バイオマス発電所

「このほか、農業と再生可能エネルギーを組み合わせる営農型発電などのスキーム構築にも着手しています。FITの終了後でもさらに当社の優位性が発揮できると自信を持っています」(谷口氏)

3つの事業の柱の総合力で「地域社会のタカラ」を目指す

23年10月、MIRARTHホールディングスは30年をターゲットにした長期ビジョンを策定した。そこで掲げた「地域社会のタカラであれ。」というキャッチフレーズには、地域社会への貢献にいっそう邁進していく同社の姿勢が感じ取れる。

「大都市一極集中というよりは、日本全国の地方創生をお手伝いするような仕事をしていきたいと考えています。地方都市はさまざまな課題を抱えています。その解決は容易ではありませんが、当社の不動産事業、エネルギー事業、アセットマネジメント事業という3つの事業の柱を組み合わせた総合力によって、地方創生に貢献できると思っています。『地域社会のタカラであれ。』というキャッチフレーズの実現のために本気で取り組んでいきます」(島田氏)

さまざまな事業のシナジーを最大限に発揮することで、地域の活性化に寄与していくMIRARTHホールディングス。不動産総合デベロッパーから未来環境デザイン企業という企業像の実現へ、着実に歩みを進めている。