副業解禁・副業受け入れで変わる、人材活用の方法 個人が持つスキルを最大限活用できる社会へ
人的資本経営の本質は何か
個人の意識と企業文化の革新が急務
鏑木陽二朗氏(以下、鏑木) 人的資本経営はESG投資の浸透や人材獲得競争の激化も後押しとなり、最近よく耳にするようになりましたが、実は決して新しい思想ではなく、改めて注目が集まっているという認識でいます。
八反田徹氏(以下、八反田) 私も同じ意見です。人への投資は企業経営の本質そのものです。当社でも、2023年5月公表の「中期経営計画2025」で「成長への舵切り」の実現を掲げ、重要課題(マテリアリティ)の1つに「価値を創出し続ける企業文化への変革」を置き、人事制度の再構築を進めています。そこで重要なのは、多様な人材が集まり、能動的に意見を交換し、アイデアを出し合うこと。そのような組織風土に転換することだと考えています。
そして、個々の社員が能動的に、自身の力を発揮できる状態にするには、会社からのはたらきかけが重要です。当社では、D&Iの最終目的を「考え方や経験の多様性を高めること」と考え、社員全員が前向きにはたらける状態を目指して制度や仕組みの整備を進めています。
「副業・副業受け入れ制度」の活用で
多様性に富んだ企業文化の醸成へ
鏑木 多様な人材が活躍できる職場の実現に向けて、どのような課題があったのでしょうか。
八反田 課題は「古い企業文化」でした。当社は、残業をいとわず仕事一筋で頑張るというスタイルが中心で、言われたことに何とかして対応することは得意でしたが、意見をぶつけ合い新しいアイデアを創造することは不得手でした。まずは意識変化を促すために「社風の変革が必要だ」という情報発信を展開。また、組織のベクトルを合わせ、メンバーの力を引き出すことで組織の力を最大化するという管理職の役割・責任を明確にして、浸透させるために等級制度や報酬水準を見直すなど人事制度の面でも工夫しました。さらに、コロナ禍前からテレワークを導入するなど、はたらきやすい環境の整備にも注力し、今年度からははたらきがいを高めるべく、組織風土の改革に本格的に取り組みだしています。
鏑木 2023年3月から「副業・副業受け入れ制度」をスタートされた狙いについて教えてください。
八反田 社員一人ひとりの自律や新たな知見・スキルの獲得、価値観の多様化を促し、既存ビジネスを変革したり、新規事業を創出したりすることが狙いです。社員がほかの企業ではたらけるようにする「副業制度」、当社以外を本業としている方に参画いただく「副業受け入れ制度」の両方を制定しています。「副業制度」では自律的なはたらき方の実現、そして「副業受け入れ制度」では戦略分野におけるプロジェクト単位やスポット雇用での人材受け入れにより、多様な人材が集まる環境をつくり、外部環境の変化に強い組織を構築したいと考えています。
鏑木 最近は、多くの企業が副業解禁をされるなど「副業」が注目されつつある一方で、副業者の受け入れは20%程度※にとどまっています。企業が副業者の活用をイメージできていないことが要因の1つであると考えているのですが、そのような中、OKIさんについては先進的な取り組みをされていると思います。
人材獲得の多様なアプローチが
強い組織・事業成長力をつくる
八反田 パーソルキャリアさんでは、プロ人材活用支援においてどのような取り組みをしていますか。
鏑木 2011年に副業・フリーランス人材と企業をつなぎ、企業の課題解決を担う、経営支援サービスを立ち上げました。現在は「HiPro(ハイプロ)」というサービスで、経営課題の解決から、テクノロジー分野まで、多彩な経験とスキルを持ったプロ人材と企業のマッチング、企業課題の解決の支援を行っています。人材獲得の難易度が年々高まり、中途採用をはじめとした「雇用」だけでは必要な人材・スキルの獲得が難しい中、現状を打破する打ち手となるのが、副業・フリーランスといったプロ人材の積極活用だと考えています。
八反田 当社では「先端技術」や「マーケティング」に精通したプロ人材との協業を進める準備をしています。とくにマーケティング領域の最新知識が不足しているので、プロ人材のノウハウを求めて人材獲得をしたいと考えています。
個々の人材が持つ経験やスキルを
最大限に活用できる社会へ
鏑木 プロ人材活用についてはこれからさらに積極的に取り組まれていくとのことですが、改めてOKIさんにおける今後の展望をお聞かせください。
八反田 当社では“組織の変革と人材”を必要としています。とくに人材については、年齢構成がいびつで、人材不足が目下の課題として顕在化しています。従来のような採用活動だけでは対応しきれないため、副業人材の活用も含め、選択肢を増やしているところです。組織としてよりよい未来を描くためにも、さまざまなアプローチを検討していきたいと考えています。
鏑木 今、個人のはたらき方、そして企業の人材活用のあり方が大きく変化し始めています。労働力不足の中で、雇用という選択肢だけでなく、副業・フリーランス人材をスポットで活用する方法も適切に組み合わせることが非常に有効だと感じています。もっと多くの企業に個々の人材が持つ経験やスキルを最大限に活用する方法を柔軟に選択いただき、HiProはそのプラットフォームとして、さまざまな企業課題の解決に貢献していきたいと思います。
※出典:2023年6月実施インターネット調査 パーソルキャリア調べ