シャープの挑戦「AIoTが変えるヘルシーライフ」 100年以上前から続く「モノづくりの精神」

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「強いブランド企業“SHARP”へ」 2022年、シャープの新たな代表取締役に就任した呉柏勲(ご・はくくん)CEOは、今後の経営指針として「ESGに重点を置いた経営」を打ち出した。その中でもとくに重視するのが健康関連事業を通じた「ウェルビーイング(well-being)」ソリューションの普及だ。環境変化や超高齢社会の進展によって健康への関心が高まる現代、シャープが「well-being」に懸ける思いとは。創業者・早川徳次の理念が息づく、モノづくりの精神からひもといていく。

well-beingの原点となる「誠意と創意」

社名の由来になった「シャープペンシル」やモバイルカメラ付き携帯電話など、2023年に創業111周年を迎えたシャープは、これまで電気機器を中心に、つねに革新的な製品を生み出し人々を驚かせてきた。

生活になじみ深い、数々の製品を世に送り出してきた根底に流れるのは、シャープの原点であり普遍的な経営信条である、創業者・早川徳次の「誠意と創意」の精神だ。

 


経営理念には、時代のニーズを先取りしたモノづくりを通して、社会に貢献し、信頼される企業を目指すという強い意志が込められている

呉CEOが定めたESG重視の経営方針は、創業以来シャープが目指す、社会やステークホルダーとの共存共栄をより強めていく姿勢の表れともいえるだろう。その中でもとくに注力するのが、デジタルを活用した「well-being」ソリューションの強化と普及だ。

well-beingを実現するシャープのソリューション

人々の健康と福祉に貢献するソリューションの開発は、すでにいくつも進んでいる。1つは、月経や出産など女性特有の健康課題をサポートする「フェムテック(Femtech)」分野における「生理用品IoT収納ケース」だ。女性にとって月経周期や状態の把握は、健康管理において重要だ。世の中にはさまざまな記録管理アプリが存在するが、慌ただしく過ぎる日々の中で、記録を忘れてしまうことは少なくないだろう。

こうした課題に着目したシャープは、IoT技術を取り入れた生理用品の収納ケースを開発。これは、生理用品の使用状況のセンシングと独自アルゴリズムにより、アプリで「在庫管理」と「月経周期の自動記録」を可能にする製品だ。ケースに収納した生理用品の残量を記録し、買い忘れや買いすぎを防ぐ仕組みを作ることに加え、月経周期などの把握も自動化できる。生理用品を収納ケースに入れ、使うだけで、記録する手間やストレスを手放せるというわけだ。

さらに、今後は収集したヘルスデータを基に、他のサービスや医療機関との連携も視野に入れているという。


IoT技術の導入によって、より正確に自身の健康状態を把握できるソリューション開発に力を入れている

また、食事に関する行動変容を後押しする独創的なガジェット、咀嚼計「bitescan(バイトスキャン)」も話題だ。耳にかけるデバイスが耳裏の動きをセンシング。噛む回数やテンポ・姿勢など、さまざまな観点から自分の食べ方を把握・分析し、よい咀嚼習慣を身に付けるためのアシストをする。


咀嚼行動変容に関する大学との共同研究や食育プログラムの推進など、よりよい食生活の提案に「bitescan」の活用が進んでいる

上記の生理用品IoT収納ケースbitescanは、いずれも平均年齢28歳の若手メンバーが主体の開発部で企画された製品ということも、特筆すべき点だろう。トレンドを掴む感性と発想力で、ヘルスケア領域に新たな価値を創出している。

そして、2015年の発売以来「毎日の料理にかかる負担を減らせる」と話題なのが、「ヘルシオ ホットクック」だ。独自のかき混ぜ技術や火加減制御などにより、調理のさまざまな工程を自動化でき、物理的・精神的なゆとりを生み出せる。2023年には開発グループが第9回「ものづくり日本大賞」にて「経済産業大臣賞」を受賞し、改めて脚光を浴びた。


「ヘルシオ ホットクック」は、調理工程の簡略化によってスキマ時間を作り出せる点が多くのユーザーに支持されている

世界に新しい当たり前を作る「AIoT」技術

3つのソリューションに共通しているのは、AIとIoTの融合によって家電を人に寄り添う存在に変えていく、シャープ独自のビジョン「AIoT」だ。クラウドを介してAIが学習することで、ユーザーのライフスタイルに最適化された家電を作り出すこの技術は、世界のあらゆる場所で「well-being」の実現に寄与している。

技術や製品の形を変えながら、確実に息づく創業者の早川から受け継がれたモノづくりの精神。シャープはこれからもESG経営を基盤に、人にやさしい製品の開発を通して、世界に「新しい当たり前」を作り続けていく。