「優等生」コマツを追い込んだ、2つの"誤算" リーマン危機以来の異常事態に打つ手なし?

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もう1つ頭が痛いのは、需要の縮小が3年以上続いている鉱山機械だ。石炭など主要鉱物の価格低迷を受け、体力のない中小の業者だけでなく、資源メジャーまでもが、新規の機械投資を目いっぱい後ろ倒しし、手持ちの機械をメンテナンスしながら使い続ける傾向が続いている。

コマツは2013~2015年度の中期経営計画で、鉱山機械需要は2013年を底に徐々に回復するという予測を立てていたが、2014年度は前年度比26%減。さらに、数カ月前までコマツに対し「2015年後半からは、まとまった投資を再開できそうだ」と話していた資源メジャーの幹部たちも、足元では「もう少し先になりそうだ」と、渋い顔をしているという。

こうした状況を受け、コマツは2015年度も需要がさらに30%減少するという見通しを立てざるをえなくなった。中計で見込んでいた2015年度の需要と比べると、実に70%以上の下方修正になる。

好調な地域や事業だけで補いきれず

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国内の主力拠点である粟津工場(撮影:今井康一)

さらに、アジアなど新興国事業の不振が追い打ちをかける。タイ、マレーシアは中国の景気減速の影響を受けて市場が低迷することが見込まれ、鉱山機械が中心のインドネシアも引き続き厳しい。

インドでは資源安による燃料コストの減少や新政権の公共政策に期待が持てるほか、欧米など先進国の中には調子のいい地域がないわけでもない。それでも、世界全体の販売台数は前年度よりも落ち込む見通しだ。建機の部品・サービス事業や産業機械事業はジワジワと利益が拡大しているものの、全体をカバーするには至らない見込みだ。

コマツは、主力の粟津工場(石川県小松市)で外部調達電力90%カットに向けて生産建屋を刷新するなど、国内工場を中心にコストカットにつながる投資を積極的に行っている。ただ、これも実際に利益に効いてくるのはまだ先になりそうだ。今は需要の回復期に向け、ひたすら“耐えるとき”なのかもしれない。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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