損保CEOが語る、リスクマネジメントの新常識 複雑なリスク環境に、企業はどう備えるか

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AIGジャパン・ホールディングス ジェームス・ナッシュ
AIGジャパン・ホールディングス株式会社
AIG損害保険株式会社
代表取締役社長 兼 CEO
ジェームス・ナッシュ
英国ラドリーカレッジ卒業。PKF社を経て、1985年、保険会社ガイ・カーペンターに入社し、日本法人社長やアジア太平洋CEOを歴任。2021年1月よりAIGジャパン・ホールディングス代表取締役社長 兼 CEO、同年12月よりAIG損害保険株式会社代表取締役社長 兼 CEOを兼務

世界の損害保険市場においてユニークな存在感

――AIGはグローバルに保険ビジネスを展開していますね。

ナッシュ AIGは100年以上の歴史を持ち、世界の約70の国や地域で事業を展開する世界有数の保険会社です。

日本では、1946年に外資系損害保険会社として業務を開始し、幅広い業種のお客様にサービスを提供してきました。

――日本の保険市場をどう見ていますか。

ナッシュ 日本の市場は、保険の普及率が高く、整備されています。しかし、世界が変化していく中で、個人や企業がリスクを正確に評価し、予防・軽減するためのデータに基づく手法が確立されていません。その原因として、補償への理解不足によって、より効果的・効率的な保険加入が行われていないことや、リスク分析体制が十分に確立されていないことが挙げられます。

――AIGのパーパスを教えてください。

ナッシュ AIGのパーパスはお客様が「新たな可能性を創造する」ことをサポートすることです。世界が複雑化し、リスクも多様化していますが、リスクの裏側には大きなチャンスがあります。例えば、テクノロジーの進展により、サイバーリスクが高まる一方、生活が豊かになり、ビジネスは成長します。われわれは、そうした変化に潜むリスクを洗い出し、お客様の成長の可能性を見いだすお手伝いをしています。

守るべき資産が「有形」から「無形」へ

――企業はどのようなリスクに直面しているのでしょうか。

ナッシュ サプライチェーン、テクノロジーなど、世界はより緊密に、つながっています。

以前は土地などの有形資産を持つ企業が世界をリードしていましたが、今、世界経済の牽引役はデータや知的財産などの無形資産を豊富に持つ企業です。企業はそれぞれが持つこうした無形資産に対するリスクを認識し、その軽減に努める必要があります。万が一のときには、こうしたリスクが事業主や役員の賠償責任につながるおそれもあります。

――個人も企業と同様に新しいリスクにさらされているのでしょうか。

ナッシュ 状況は似ています。不正アクセスによる個人情報漏洩は、まさに個人の無形資産が抱えるリスクです。自動車や住宅もIoT化で利便性が高くなったものの、このような動きによって個人においてもリスクがさらに複雑化しています。

リスクを予防するコンサルティングに注力

――複雑化するリスクに直面する企業や個人に対し、AIGはどのように貢献していますか。

ナッシュ 常に新たなリスクを予見して、保険商品を開発しています。例えばサイバー関連の保険は1999年、サイバーリスクへの意識が高まる前に米国で発売しました。役員賠償責任保険や環境汚染賠償責任保険にも実績があり、事故発生時も、世界各国で豊富な経験を積んだ損害サービスチームが知見を生かして保険金を速やかにお支払いします。

また「リスクを理解し予防すること」にも注力しています。事故を未然に防げれば、全員にとってWIN-WINです。代理店にリスク予防の知見を習得してもらうべく、リスクマネジメントの資格制度(ARC=AIGリスク コンサルティング)を取り入れています。リスクアドバイザーの役割を持つ当社のプロ代理店ネットワークが、単なる保険商品提供の領域を超えたリスクコンサルティングを提供しています。

――AIGだから提供できる価値とは何でしょうか。

ナッシュ 保険代理店の皆様と共に中小企業を支えるDNAが強みです。日本企業の99%以上は中小企業ですが、中小企業におけるサイバー保険の加入率は2021年以降増加しているものの、依然として低い状況にあります。当社は、全国に広範なネットワークを展開し、地域に即した専門知識やグローバルレベルの知見で、全国の中小企業のニーズに合う、きめ細かいリスク分析やコンサルティング・サービスを提供しています。AIGには、ARC資格を持つ専門性と経験を備えた代理店が多く、中小企業の皆様が自らのリスクを把握できるよう支援しています。

AIGロゴ

ダイバーシティとイノベーションでお客様を支える組織に

――今後、保険ビジネスはどのように変化していくでしょうか。

ナッシュ 今後もいっそう複雑かつ予測不可能な世界になり、多様なリスクへの理解と備えや専門的なリスクへの柔軟な対策が必要です。その結果、保険商品の種類も増え、個別の企業のリスクと財務政策に沿った法人分野の損害保険は必須となるでしょう。

――CEOとしてどのような組織づくりを目指していますか。

ナッシュ AIGは、変化の激しい時代にお客様がビジネスを拡大し、新たな可能性にチャレンジするためにサポートを続けます。

私はCEOとして、イノベーションを推進し、業務効率を高める一方で、国籍やジェンダー、年齢などを問わず、お客様本位で考える社員は誰であろうとこの会社で成功できるようダイバーシティにも取り組みます。そしてお客様、社員をしっかり支える会社をつくり、次世代に引き継ぐことが私の責務です。
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