エアコン電気代、「しくみ」を知れば節電に大差 あなたの使い方は消費電力を上げてしまうかも

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夏場、快適で健康な暮らしのために、また屋内での熱中症予防の観点からも適切なエアコンの使用は欠かせない。しかし、気になるのが電気代の高騰。大手電力会社の大幅値上げで、「エアコンを使うべきかどうか」のジレンマがこれまで以上に顕著になっていることがダイキンの調査でわかった。電気代をできるだけ節約するには、どんなエアコンの使い方をすればいいのだろうか。ダイキンの「空気のエバンジェリスト」重政周之(しげまさ・ちかし)氏に、エアコンの節電においてやりがちな「勘違い」を解説してもらった。

7割以上が「電気代高騰でエアコン使用を控えたい」

「今年の夏も危険な暑さに」。気象庁が2023年6月に発表した3カ月予報だ。ところが、同じく6月に実施された大手電力会社の大幅値上げによる電気代の高騰は、これまでどおりにエアコンを使用することへのためらいや葛藤を生んでいる。ダイキン工業が23年6月に実施した調査によれば、7割以上が「電気代高騰によりエアコンの使用自体を控えようと思っている」と回答しているのだ。

ダイキンによる電気代高騰に関する意識調査

確かに、エアコンの消費電力量は大きい。経済産業省の調べ※1によれば、一般家庭で最も消費電力が大きい家電製品となっている。こうした中、「節電につながる使い方とそうでない使い方がある」と話すのは、エアコンの節電術に詳しいダイキン広報グループの重政周之氏だ。

「多くの方がエアコンの節電に取り組んでいらっしゃると思います。ただ、一見効果的に思えても、実は必要以上に消費電力を増やしてしまう使い方もあります。今回実施した調査でも、節電とは逆効果になりかねない使い方を効果的な方法と誤解されている回答が多く見られました」

ダイキン工業 コーポレートコミュニケーション室 広報グループ 重政周之(しげまさ ちかし)氏
ダイキン工業
コーポレートコミュニケーション室
広報グループ
重政周之(しげまさ ちかし)氏

例えば、「風量はできるだけ『弱』で使う」、「室外機全体をカバーなどで覆い、直射日光が当たらないようにする」、「少しの時間でも使わないときは、こまめにスイッチを切る」、「風向きは下向きに設定し、人が生活する床上付近を集中的に冷やす」。この4つは、どれも逆効果となりやすいという。いわば“勘違い節電術”ともいえるだろう。

「エアコンがどうやって部屋を冷やしているか、どこで電力を使っているか、しくみを知っていただくことが大切です。そうすれば、何が効果的な節電につながるのかをイメージでき、今後自信を持って取り組んでいただけると思います」と重政氏。

「節電のためにエアコンの使用を我慢して、健康を損ねてしまっては大変です。空調専業メーカーとして、快適かつ節電にもつながる上手なエアコンの使い方を、これまで以上にわかりやすく伝えていく必要があると感じました」

※1 経済産業省「平成30年度電力需給対策広報調査事業」より

「エアコンの心臓」が消費する電力は全体の約80%

「実は、エアコンの電力の約80%は“エアコンの心臓”といわれる『圧縮機』を動かすために使われています」と重政氏は言う。エアコンは、室内機で取り込んだ空気から熱を集めて、熱が減って冷たくなった空気を室内に戻すことで部屋を涼しくしている。室内の空気から集めた熱は、室内機と室外機をつなぐ配管を流れる冷媒と呼ばれるガスによって室外機まで運ばれたあと、室外機から屋外へ追い出される。冷媒を圧縮して配管内部を循環させ、熱を集めたり逃がしたりするのに欠かせないのが圧縮機だ。

ダイキン エアコンのしくみ

「節電しようと風量を弱めておくのはお勧めできません。部屋の熱を集めるのに時間がかかるため、より圧縮機に負荷がかかってしまうからです。風量を上げると室内機の音が大きくなるので、電気をたくさん使っているように感じられるかもしれませんが、ファンを動かすモーターの消費電力は、圧縮機に比べてとても少ないのです。お勧めなのは、風量を『自動』に設定しておくことです。はじめに風量を強めて素早く熱を回収した後は、圧縮機への負荷を抑えた安定運転に切り替わり、快適な室温を維持するよう効率的に運転します」

圧縮機への負荷がかかるのは、エアコンの始動時もそうだ。だから「スイッチをこまめに切る」ことが、時間帯や頻度によっては、かえって消費電力を増やしてしまう。ダイキンが行った実験では、日中30分程度であれば、オン・オフするよりもつけっぱなしのほうが節電につながる結果となった。

「空気の通り道」がふさがれると心臓に負担がかかる

「『室内の熱を集めて外へ逃がす』というエアコンのしくみを踏まえると、『空気の通り道』をふさがないことも重要な節電ポイント」だと重政氏は話す。

ダイキン エアコンのしくみ「空気の通り道」

「『空気の通り道』をふさがないために大切なのは、室内機のフィルター掃除と室外機周りの整理整頓です。フィルターにホコリがたまると吸い込む空気の量が少なくなり、部屋を冷やす力が小さくなります。そのぶん、部屋を冷やすのに長時間、負荷が高い運転が必要になり電気代がかかります。フィルターを1年間掃除しないと約25%※2の無駄な電力消費につながるといわれています。さらに、室内機のフィルターに約3年分のホコリがたまった状態で、なおかつ室外機周辺の障害物で風通しも悪くなっていると、消費電力量が2倍以上になってしまう場合もあるのです。2週間に1回は掃除することをお勧めします」

勘違い節電術にもあったように、室外機に直射日光が当たらないようにカバーをかぶせているケースも見受けられる。しかし、吸い込み口や吹き出し口をふさいでしまうため、「空気の通り道」が妨げられ、熱を効率的に逃がせなくなる。周辺に物を置かないよう、室外機周りをスッキリと整理整頓することが、無駄な電力消費の防止につながるというわけだ。

※2 JRA4046-2004に準拠した運転条件で、フィルター掃除した場合(1145kWh)と、しない場合(1432kWh)で算出した年間電気代比率。1年後のホコリ量は2gで試算(ダイキン工業調べ)

「温度ムラ」を減らして、心臓の負担を減らす

圧縮機への負荷を減らすには、室内の「温度ムラ」を抑えることも大切だと重政氏は説明する。

「エアコンは、室内機で吸い込んだ空気の温度から室温を読み取っています。『温度ムラ』がある室内では、天井付近の空気は暖かく、その空気を吸い込んだエアコンは『室内はまだ設定温度に達していない』と判断します。人がいる床付近は十分涼しくなっていても必要以上に運転してしまい、消費電力の増加につながることがあるのです。冷房運転時、エアコンの風向を下向きにせず、水平に設定してください。冷たい空気は重く床付近にたまる性質があるので、冷たい気流を天井のほうへ水平に送ると、冷気は上から下に自然に降りていくため、比較的『温度ムラ』を抑えやすくなります」

風向を水平にすることで、エアコンの風が体に直接当たる不快感を和らげる効果も期待できるという。「温度ムラ」の少ない状態をキープするには、空気清浄機や扇風機、サーキュレーターを活用し、空気をかき混ぜることも有効だ。これらを動かすモーターの消費電力は、エアコンの圧縮機に比べれば非常に少ない。「温度ムラ」を抑制すれば、圧縮機の負荷を減らして消費電力量を抑えられるうえ、快適な涼しさを保つこともできる。

消防庁の発表によると熱中症の約4割は室内で起こっているという。環境省と気象庁は、4月下旬には熱中症警戒アラート※3の運用を開始した。自分たちの身を守るためにも適切なエアコンの使用が欠かせないこの夏、しくみを理解しながら、効果的な節電に取り組む必要性は増している。今回紹介した内容をよりわかりやすく解説している動画も活用しながら、正しい節電に取り組んでみてはいかがだろうか。

エアコンの「冷やすしくみ」と電気代の関係とは

※3 熱中症警戒アラートは、熱中症の危険性が極めて高くなることが予測された場合に気象庁と環境省が共同で発表する情報。熱中症警戒アラートが発表されている日は、外出を控える、エアコンを使用するなどの熱中症予防の行動が重要となる

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