企業の成長を支える「エクスペリエンス管理」とは 顧客や従業員の声を聞き、有効なアクションへ

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クアルトリクス カントリーマネージャー 熊代 悟 氏
人々の価値観が多様化する中で、ビジネスを取り巻く課題やニーズも複雑化し、画一的な正解がない時代を迎えている。消費行動の価値基準もモノからコトへシフトする今、「企業は積極的に顧客や従業員の声を聞きながら問題を改善していく必要がある」と提唱するのが米クアルトリクスだ。同社は顧客や従業員の「エクスペリエンス(体験)」を管理するITツールを開発し、国内外1万8000社超に提供している。「エクスペリエンス管理」が重要な理由、そしてそれが企業にもたらす価値とは何か。クアルトリクス日本法人のカントリーマネージャー・熊代悟氏に聞いた。

機能面も情緒面も満たし、良好な関係を築く「XM」

近年、エクスペリエンス(体験)という言葉がよく聞かれるようになってきた。「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験=CX)」や「エンプロイーエクスペリエンス(従業員体験=EX)」などがそうだ。

「これらは『おもてなし』に通じる話だと思っています」。そう話すのは、“エクスペリエンス管理”ソリューションを提供するクアルトリクスのカントリーマネージャー、熊代悟氏だ。

クアルトリクス カントリーマネージャー 熊代 悟 氏
顧客や従業員の生の声を聞き、判断することが重要です
クアルトリクス
カントリーマネージャー
熊代 悟氏

「例えば顧客体験は、顧客目線での体験やそれによって生じる『価値』のことです。『価値』には、商品・サービスの性能や価格など機能的なものだけでなく、そのブランドや企業に対する満足感や共感、利用することによって感じる喜びといった情緒的なものも含まれます。あるコーヒーチェーンは、価格だけを見たらほかに多くの選択肢があるのに、『居心地のよさ』という体験の提供やブランディングによって、好調な業績を上げています。顧客体験の向上で競争優位性を高めた好例と言えるでしょう」

機能面も情緒面も満足させる体験を提供し、その価値を上げていくことで「一度利用して終わり」ではない、継続的かつ良好な顧客との関係性を築いていく。「おもてなし」にもつながるこの取り組みを、クアルトリクスは「エクスペリエンス管理(XM)」と定義している。

「エクスペリエンス管理は、顧客をはじめとするさまざまなステークホルダーの声に耳を傾けることから始まります。正解がない時代といわれる中で、少しでも確度の高い施策を展開していくためには、顧客や従業員の生の声を聞き、判断することが重要です。得られた声を分析してよりよい体験をデザインし、改善のためのアクションを起こしてまた耳を傾ける。このサイクルを回すことで、ニーズの変化に合わせた取り組みができると考えています」

顧客と従業員の「体験」の連動が企業の持続的成長に

「顧客の声に耳を傾ける」こと自体は、多くの企業が行っていることだろう。しかしそれは、商品の購入後に同じアンケートを皆に配るといった、画一的なものであることが少なくない。

商品やサービスを認知したきっかけは何か、なぜウェブサイトで詳細な情報を知ろうと思ったのか、購入のトリガーは何だったのか。またそれは新規の顧客なのか、10年以上の付き合いがある顧客なのか。顧客が企業やブランドと接触する瞬間(顧客接点)ごとに耳を傾け、顧客との関係性に応じて質問を聞き分けるのが、「エクスペリエンス管理」の第一歩だと熊代氏は説明する。

「今やニーズはどんどん多様化し、よいモノであれば売れる、という時代ではなくなりました。多様化した声を適切なタイミングで収集・分析し、最適化した商品、サービスを提供できるかどうかが問われています」

耳を傾けるべき相手が顧客のみではないことも見落とせない。とりわけ従業員は、企業にとって非常に重要なステークホルダーだ。顧客体験のデザインや提供を担っているうえ、生産性向上やイノベーション創出にも寄与している。

「従業員の声にしっかり耳を傾け、有効なアクションを取った場合は離職率が下がることがわかっています。当社の調査では、勤務先の企業が自分たちの声に対し、適切なアクションを取れていないと感じている従業員で、継続勤務の意向を持つ人は49%にとどまりました。逆に、会社が有効なアクションを取っていると感じている従業員の7割近くが継続勤務の意向を示しています」

これは従業員側だけの感覚ではない。クアルトリクスが実施した別の調査では、従業員体験と顧客体験の双方を連動させた取り組みをしている企業役員の90%以上が、売り上げおよび利益率の向上や従業員の離職防止に効果を実感していると回答している。つまり、顧客と従業員のエクスペリエンス管理を連動させると、企業の持続的成長につながるのだ。一見バラバラに見える顧客体験と従業員体験は、互いに関わっているのである。

調査、分析、アクションまで実現できるプラットフォーム

こうした背景の下、クアルトリクスが提供するのが「顧客」「従業員」「製品」「ブランド」の4つの体験を統合管理できるプラットフォームだ。それぞれに対する体験についてどう感じているかをアンケートやサーベイ(調査)で可視化・分析、改善のためのアクションを実行していくことができる。

このプラットフォームを使った調査で得られる「エクスペリエンスデータ(Xデータ)」と、CRMや人事システムなどの既存システムが持つ顧客情報や従業員情報、売り上げといった「オペレーショナルデータ(Oデータ)」を掛け合わせて分析することで、それぞれだけでは読み取れない課題や傾向を導き出すことが可能になる。「単純なアンケートツールと思われることがありますが、このプラットフォームの本当の価値は、集まったデータを分析して適切な人に共有すること、『聞いて分析して終わり』ではなく、アクションまで起こせることにあります」と熊代氏は強調する。

その“使用感”をイメージしやすいのが、BMWジャパンの事例だろう。クアルトリクス導入前は、30項目にもわたるアンケートを顧客に回答してもらい、月次で分析していたため、顧客対応の改善がスムーズに行えていなかった。

そこで、クアルトリクスの採用により、アンケートの設問を3項目まで削減。細かい満足度スコアではなく、展示車の見学や試乗といった顧客の体験を重視した内容に変えるとともに、回答内容がすぐに担当者へ共有されるようにした。そして、何らかのアクションが必要なフィードバックを受け取ると適切な担当者に通知し、すぐにアクションが取れる仕組みを構築。その結果、9割以上が48時間以内に対応できるようになった。必然的に顧客体験が向上し、顧客ロイヤルティの指標も改善したという。

ただし、クアルトリクスのプラットフォームを導入したからといって、すぐにエクスペリエンス管理が完全に実行でき、改善アクションが取れるというわけではない。「クアルトリクスのプラットフォームは、ステークホルダーの声を収集・分析して改善の方向性を示しますが、エクスペリエンス管理の理想像からすると3分の1くらいの役割」と熊代氏。「エクスペリエンス管理を重視する企業文化を醸成し、具体的なアクションを起こせるよう、現場の意識改革も必要です」と指摘する。

声を収集しても、アクションが改善につながらなければ体験の向上が実現しないということだ。

「実際に組織やビジネスへ落とし込み、取り組みを回すことで、エクスペリエンス管理で何ができるのか理解できます。企業文化をどう変えなければならないのか、アクションを取るうえで現場に何が足りないのかも見えてきます。SaaSのプラットフォームなので、例えば営業組織の1部門などから導入いただくケースが国内外問わず多いですね」

同社では定期的にユーザー会を開催し、導入企業間の交流を促している。先行事例の知見を共有し、導入企業同士だからこそわかる悩みを相談し合えると好評のようだ。「何から始めればいいかわからない」「顧客・従業員体験向上の取り組みはしているがうまくいっていない」という企業にとって、クアルトリクスは有力な選択肢の1つとなるのではないだろうか。

「一度構築したら簡単に変えられない情報システムとは違い、顧客や従業員の反応を見ながら柔軟にやり方を変えられるのも、クアルトリクスの強みです。アンケートやサーベイは、設問を考え、データを回収し、そして分析、と手間も時間もかかりますが、当社のプラットフォームはそうした部分を自動化し、インサイトの検討とアクションの実施に力を注ぐことができます。小さく簡単に始められるプラットフォームなので、ぜひお試しいただきたいと思います」

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