「デジタルレジリエンス」高い企業が持つ優位性 「ビジネスを止めない」ことが競争力の向上に

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
企業のDXが進む中、ITシステムの多様化・複雑化によるデジタルリスクが顕在化している。とくにシステム障害やサイバー攻撃被害によるビジネスプロセスやサービスの停止は、企業活動に大きな損失を与えかねない。有事の際も「ビジネスを止めない」ためには、高い「レジリエンス(回復力)」を備えておくことが重要だ。競争力の向上にもつながるレジリエンス強化のポイントはどこにあるのか。

デジタルの浸透で生じたIT環境のリスク

企業にとって「当たり前」となったデジタル活用。ビジネスのデジタル化を加速させる企業の内部では今やさまざまなITシステムが稼働し、日々の業務の円滑な遂行やサービスの運営を行っている。

しかしその裏で、見過ごせない課題も明らかになってきた。複雑につなぎ込まれたシステムの全体像を把握することが難しくなっているのだ。同時に、各所で発生するデータが無秩序に広がり、管理を行き届かせることも困難になってきている。

「データの分散やシステムの複雑化による最優先課題は、システム障害やサイバー攻撃など何か問題が発生したときに、その状況を確認するまでに時間がかかることです。時間が経てば経つほど、攻撃によるダメージの拡大で状況が悪化することはもちろん、サービスの停滞による機会損失につながります」

そう話すのは、システム内を流れるデータの可視化と分析を行うソフトウェアを提供するSplunk Services Japan合同会社(以下、Splunk)で社長を務める野村健氏だ。

Splunk Services Japan合同会社 日本法人社長執行役員 野村 健氏
Splunk Services Japan合同会社
日本法人 社長執行役員 野村 健

デジタルを活用して進められるビジネスが企業の原動力であることは間違いない。一方でそれは、デジタル環境に問題が起きたときには、ただちにビジネスが中断、停滞することを意味する。

とくに昨今は巧妙化するサイバー攻撃の被害に遭う企業も少なくない。攻撃を受けることを前提に、いかに早く復旧できる仕組みや態勢を整えるか。つまり「レジリエンス」を強化することが非常に重要になっている。

「年間約64億8000万円」のダウンタイムコスト差

レジリエンスの強化に取り組もうとしても、それを阻害する課題がある。野村氏が挙げるのは、組織やツールが縦割りとなる「サイロ化」と、「セキュリティ人材」の確保・育成、そしてこれらの課題を解決し、レジリエンスの強化を牽引する「リーダーシップ」の3つだ。

サイロ化の問題は、システムに異常が起きたときに部門や組織間で横の連携が取れず、原因の究明や対応が後手に回ることだ。組織ごとにデータも分断していることで統合的な分析ができず、影響範囲の特定にも時間を要してしまう。

サイバー攻撃に対応するには、セキュリティに関する知見を持つ人材も必要だ。その採用や教育にも注力していくことが求められる。そして何より、組織の壁を越えてシステム環境の全体像を可視化するとともに、それを管理・運用できる人材の育成を推進するには、経営者のリーダーシップが欠かせない。

「企業はこれまで、システムを作ることにほとんどの力を注いできました。ですが、これだけ複雑さを増している状況では、運用とガバナンスについても真剣に考えなければシステムを正確かつ有効的に動かすことができなくなっています。

企業が扱うデータを統合的に可視化し、経営トップがリアルタイムに状況を把握できること。そして障害やサイバー攻撃などの非常時には、正確な情報に基づく迅速な対応が取れること。当社ではこれを『デジタルレジリエンス』と呼び、これからの企業が備えなければいけない能力と位置づけています」(野村氏)

Splunkは、そのデジタルレジリエンスについて企業調査を実施した。レジリエンスの成熟度によって企業を4段階に分類したうえで、その成熟度別にシステムのダウンタイムコストを比べると、成熟度が最も高い企業群に対して、いちばん低い初歩レベルの企業群では年間4800万ドル、日本円で約64億8000万円(1ドル135円換算)も多くのコストがかかるとの試算が明らかになったという。レジリエンスの強化は、危機管理能力だけでなく競争力も高めて成長につながると、この調査ではまとめている。

予定外のダウンタイムの年間コスト
予定外のダウンタイムの年間コスト レジリエンスの成熟度が高レベルの組織は可視化と調査の能力に優れ、組織に対する影響の大きさに基づいて対応の優先順位を的確に判断することにより、コストを抑えているという

「例えばWebサイトは、わずか3秒間応答がないとユーザーは離脱してしまうとも言われています。システムの安定稼働は、企業の生命線とも言えます」と野村氏。デジタルレジリエンスの確保には、全社のデータを統合的に可視化するツールの導入が必要になるが、ツールを入れればすべて解決するというものではないと話す。

「デジタルレジリエンスの強化は、事業に直結する部分の投資とは異なり、目に見えません。だからこそ、経営トップがきちんとした目的と自社の進むべき方向性を示し、全社に意識を浸透させていく必要があります。

また、経営トップのもとに情報を集約し、内外に向けて直接説明できるようにしなければなりません。意思決定者に常に正しい情報が届いていれば、経験や勘に頼ることなく、危機対応の優先順位を決めることができます」(野村氏)

開発、IT運用、セキュリティを横断的に可視化

では、デジタルレジリエンスを実現し、強化するために必要なツールの条件とは何か。野村氏は、1つのプラットフォームで企業内のあらゆるデータを統合できることの重要性を訴える。

「デジタルレジリエンスを高めるためには、企業全体のITに対して、『開発、IT運用、セキュリティ』の3つの領域を横断的に可視化できる仕組みを取り入れる必要があります。それぞれの組織の壁を乗り越え、事業に関わるデータを統合できるプラットフォームであることが重要です」(野村氏)

セキュリティ、IT運用、開発の各チームが横断的に連携できることを支援
セキュリティ、IT運用、開発の各チームが横断的に連携できることを支援

3つの部門に関わるデータを別々のツールを使って集めなければいけない場合、全体を把握するには3つのツールの使い方をマスターしなければいけない。レジリエンスを確保するために、個々のツールのバージョンなども常に管理しておく必要がある。IT人材不足が叫ばれる時代に、これは大きな負担となってしまう。

Splunkが提供するデータプラットフォームは、各領域のデータを統合できるだけでなく、データから企業活動を可視化し、経営者の意思決定に使えるダッシュボードや、セキュリティの自動化技術に対応するソリューションなど、統合したデータを活用してレジリエンスを高める機能も備えている。データの統合、可視化だけでなく、その先の分析やアクションにもつなげることができるのが強みだ。

レジリエンスの強化は企業の成長にもつながる

ビールメーカーのハイネケンは、Splunkでインテグレーションしたデータを活用して、梱包システムの問題を予測している。機械学習と自動化によって、例えばナイジェリアの醸造所責任者に「梱包システムの1つが正しく動作していないため7分後に梱包ラインの終点で問題が発生します」といったアラートが自動的に出される。プラットフォーム全体で3000以上のシステムを可視化することによって、リアクティブな態勢から脱却しただけでなく、レジリエンスの向上も実現した。

また日本では、東京証券取引所が株式取引システムの運用状況の監視にSplunkを導入している。株式取引システムは、多いときで1秒間に8万件もの取引を処理しており、膨大な量のログデータが発生する。従来はそのログデータをいったんダウンロードし、性能解析用のマシンにアップロードして解析を行っていた。そのため解析には数日を要していたが、Splunkの導入によりリアルタイムでログの検索が可能になり、取引サービスの稼働状況を把握することができるようになったという。

こうした事例のように、ユーザー企業はSplunkのデータプラットフォームを活用し、それぞれの方法でデジタルレジリエンスを強化し、ひいてはビジネスのレジリエンス強化を実現している。システム障害やサイバー攻撃をはじめ、起こりうる変化への対応力を高めることは、安定した事業継続、ビジネスの成長に欠かせない要素といえるだろう。

Splunkの野村社長

「今は、顧客、従業員、投資家などさまざまなステークホルダーと対話して企業を成長させていかなければいけない時代です。そのためには、デジタルやAIの活用が不可欠で、避けて通ることはできません。

デジタルを安心して使うためには、デジタルレジリエンスを高めていくことがカギになります。Splunkは信頼できるデジタルインフラの構築をご支援していきます」(野村氏)

>「レジリエンスが強化されたデジタル世界を構築すること」を目指す。Splunkの企業サイトはこちら