「感染症との戦い」の現場を支えるロシュの検査薬 アワードの開催で感染症の研究や対策にエール

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ロシュ・ダイアグノスティックス本社オフィスにある検査室のジオラマ
ロシュ・ダイアグノスティックス本社オフィスにある検査室のジオラマ
 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、「感染症」への関心はここ数年で急速に高まった。だが、感染症の脅威は過去も現在も変わらず、つねに身近に存在している。そうした中で、人類と感染症との戦いを長年にわたり陰から支えてきたのが、世界有数のヘルスケアカンパニーであるロシュだ。このコロナ禍において、PCR検査用の試薬をいち早く発売した企業としても知られる。同社の感染症分野での取り組みについて、国内で診断薬事業を手がけるロシュ・ダイアグノスティックスに聞いた。 

人類と感染症との戦いは続いている

感染症とは、細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入し増殖することによって起こる病気のことだ。人から人へ直接または間接的に感染を広げ、古くはローマ帝国時代のマラリア、中世のペストや天然痘、第1次世界大戦期のスペイン風邪、そして近年の新型コロナウイルスなど、数々の感染症パンデミックは、人類に降りかかった苦難として歴史に刻まれている。

そして今なお、その脅威は終わっていない。世界保健機関(WHO)がまとめたグローバルヘルスの脅威トップ10のうち6つが感染症に関連しているほか、世の中を見るとデング熱や結核、梅毒などのようにいったん下火になった感染症が再び問題視されるケースもある。こうした事実からも、人類と感染症の戦いが続いていることは明らかだ。ロシュ・ダイアグノスティックス マーケティング本部の近藤雅紀氏はこう説明する。

ロシュ・ダイアグノスティックス マーケティング本部 近藤雅紀氏
マーケティング本部
マーケティンググループ
近藤 雅紀 氏

「感染症は病原体によって、症状が軽度のものから命を脅かすものまでさまざまですが、これまで人類が制御した感染症も少なくありません。ただ、かつて不治の病と恐れられた結核を例に取ると、日本は2021年になって『低蔓延国』入りしたばかり。つまり、一般的に克服したと認識されている感染症であっても、感染者がいないというレベルにまで完全に制御するには至っていません。振り返っても明らかですが、感染症は人の歴史と共にあり、人がこれから生きていくうえで避けることができない疾患なのです」

新型コロナウイルスのように、新たに出現する事例もある。とくに近年は人間の活動範囲や地球環境の変化に伴い、新興感染症の特性にも変化が見られるという。

「新興感染症の多くは、動物の病原体が人に感染したときに発生します。近年は気候変動や環境破壊によって、従来は接触機会がなかった動物と接触する可能性が高まりました。また、農村地域から都市への移住、グローバル化など人々の生活域の広がりもあり、新興感染症の発生確率が上がるとともに、短期間で世界各地域に拡大しやすくなっているといえます」(近藤氏)

※2019年におけるグローバルヘルスの脅威として、インフルエンザパンデミック、抗生物質への薬剤耐性、エボラ、デング熱など感染症関連の6つがトップ10入り。
出所:世界保健機関(WHO)「Ten threats to global health in 2019」

 

感染症の研究や対策に光を当てるアワード開催

人類の英知をもってしても、感染症の根絶は一筋縄ではいかない。それでも現在われわれが過度におびえることなく日常生活を送れているのは、感染拡大の抑止に打ち込む人や組織の存在があるからだ。

そうした存在の1つがロシュである。同社は血液や細胞組織などの検体を用いた臨床検査に使われる薬や機器を取り扱い、病気の早期発見や特定、治療方針の判断、治療後の効果を調べるところまで、医師の診断をサポート。感染症も注力領域の1つとして、肝炎、性感染症、HIV、結核など幅広い検査薬を提供してきた。

検査薬はウイルスの感染拡大防止に不可欠な武器だ。しかし、感染症分野の研究や取り組みについて、平時に注目を浴びることは少ないと言っていい。

そこで、国内の感染症研究や対策に貢献する人たちに光を当てるべく、ロシュ・ダイアグノスティックスは22年に「Roche Infectious Disease Award (ロシュ感染症アワード)」を立ち上げた。「臨床検査が社会に与えるインパクトは大きく、解決できる課題の範囲は非常に広い。感染症に立ち向かう研究者や医療従事者の皆様にエールを送り、多くの人に目を向けてもらうために何かできることはないかと考え、このアワードを設立しました」(近藤氏)。

初開催の昨年は、新型コロナウイルスに関連する研究や取り組みを対象に募集。全国の医療機関や企業から応募があり、その中から11の賞を決定した。「受賞者の方々の笑顔を見て、手応えを感じるとともに、感染症医療をもっともり立てていきたいと感じた」と近藤氏は力を込める。今年度のアワードは、新型コロナウイルスだけでなく敗血症や肝炎にも対象を広げる。

ロシュ感染症アワード 2022年度の表彰式の様子
2022年度のアワードは11の賞を決定、表彰した

3年にわたり続くコロナ禍だが、今では行動制限も緩和され以前の日常を取り戻しつつある。しかし今後またどんな感染症が現れるかは、誰にもわからない。日々感染症の最前線に立つ人たちを支えるロシュ・ダイアグノスティックスは、人類と感染症との戦いにおいて引き続き大きな役割を担うだろう。

PCRの先駆者として新型コロナウイルス検査の拡充に貢献

1896年にスイスで創業したロシュは、医薬品と診断薬・機器の2つを事業の柱に、世界150以上の国や地域でビジネスを展開。研究開発費は年間約2兆円にも上り、業界トップクラスを誇る。「私たちは『Doing now what patients need next』をパーパスに掲げ、人々がより健やかに自分らしい人生を送るための支援を目指して事業を展開しています」と、ロシュ・ダイアグノスティックス代表取締役社長兼CEOの小笠原信氏は説明する。

ロシュ・ダイアグノスティックス 代表取締役社長兼CEO
代表取締役社長兼CEO
小笠原 信 氏

特筆すべきは、コロナ禍において、感染の有無を調べるPCR検査の研究用試薬を、感染拡大の初期である2020年2月4日に日本でも発売したことだ。当時の国内で感染が確認されたのは20例ほどだったことを踏まえると、その対応スピードには目を見張る。

「PCRは1983年に米国の科学者が考案した技術です。当時はあまり評価されていなかったといわれるこの技術の全事業権をロシュが取得。96年にはPCR検査用自動測定装置を発売し、肝炎などの検査に活用されてきました。このようにPCR技術を商業的に育ててきたからこそ応用が利き、新型コロナウイルスの検査薬を迅速に世に出すことができたのです」(小笠原氏)

コロナ禍で一般的に利用されたPCR検査。その試薬を迅速に発売できた背景には、PCR技術に対するロシュの先見の明と研究開発へ注力してきた歴史があったのである。

「私たちは10年後、20年後の医療、そして検査のあり方を見据え、より有用な新しい検査薬をいち早く世に出していきます。『検査を通じて自分自身の今を知ることで、人生において自分らしい決断ができる』という信念の下、先進的な診断ソリューションの提供を通して、予防・診断・治療・予後のすべてのステージで人々に寄り添い続けます」(小笠原氏)