DXの停滞を打破するヒントは「DXジャーニー®︎ 「真のDX」実現に向けて、必要なのは「航海図」

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DXの「航海図」描くヒントとなる「DXジャーニー®️」とは?
DXを実現する際、時と場合によっては想定以上の長丁場になることもある。本来は3~5年といった中期経営計画の期間内で実現したいところだが、DXの本質は企業のビジネスのあり方を根底から変えていくことにあり、腰を据えてじっくり取り組む必要がある。日本企業のDXを着実に推進するヒントとなるのが「DXジャーニー®」だ。

DXの実現には「事業の中へのデジタルの位置づけ」が必要

デジタルビジネス変革を目指してDXに取り組んではいるものの、考えていたようには進まないまま2~3年が経ってしまった――。DXを推進している日本企業の中には、こういった状況に置かれているところも少なくないのではないだろうか。

既存の主力事業の責任者にとって、直近の事業年度や3~5年程度の中期経営計画期間で成果を上げることがミッションであることが多い。そのためには、足元の業務改善を重ねていく必要がある。一方で、DX推進部署もそれに対応してより切迫感のある施策の優先順位を上げざるをえないため、抜本的なDXの必要性は理解していながらも進捗がないのである。

図 DX推進部署のよくあるジレンマ

このようなジレンマから脱却するには、DXは企業変革あるいはビジネス変革であるという共通認識をその都度確認しながら、現場、DX推進部署、経営陣が三位一体で歩みを進めていかなくてはならない。MRIではその工程を旅(ジャーニー)になぞらえて「DXジャーニー®」と呼んでいる。事業発展の道のりやストーリーの中にデジタルを位置づけ、変革のエンジンの1つとして活用する考え方である。

DX推進に求められる対応は、大きく3つある。1点目は、変革を推進するリーダーの巻き込み。2点目は、根幹となる確固たるコンセプトと実行計画の策定。3点目は、要所で達成状況を確認したり調整を加えたりするマネジメントだ。

DXを成功に導くリーダー

DXを推進するうえで、マイルストーンを1つずつクリアし、企業自体が変化をしながら最終ゴールを目指すに当たっては、ビジョンやコンセプトを社員に共有することが目標達成の近道となる。本来ならば現場のリーダー層が自分の言葉で企業変革、ビジネス変革の姿を語れるほどになると、DXは加速していく。だが実際のところ、経営層と現場のリーダー層とではビジネス上の見える景色が異なるものである。

「経営戦略とDX戦略を結びつけて考え抜くのは簡単ではありません。会社や事業全体の課題を経営者のように理解しつつ、現場の感覚も併せ持ってビジネスを牽引する必要がありますから。ただし、これに取り組んでうまくいき始めると、経営者の“ものの見方”がDX戦略に関わった人に身に付きます」(MRI研究員)

DXを通じて変革を牽引するリーダーが増えることは、DX推進での活躍に期待ができることはもちろん、企業の次世代を担う人材の育成にもつながる。大手企業の中には、DXリーダーがITという枠を超えて経営管理や生産管理、さらには自社の未来についてもコンセプトを打ち出すなど、意欲的に取り組むケースもあるという。足元の課題から具体化されている打ち手だけでなく、中長期的市場トレンドや業界のメガトレンドを踏まえながら、経営層と各事業のリーダー層が議論してDXのロードマップをつくり上げられるようになるのが理想的な姿といえよう。

5つの観点で構成されるDXジャーニー®

DXジャーニー®を進めるに当たっては「DXの構想を立てたものの思い通りに進まない」という事態を回避するため、始めに3カ月をかけてプロセスを組織横断的に検討し、合意形成を進めることが重要だという。

まず取り組むべきは、中長期的経営ビジョンに基づいた「DXニーズの深堀り」だ。DX推進組織が中心となり、各事業部長や現場リーダーとともにニーズを探っていく。同時に「DXパターン研究」で、先行事例を自社にどう応用できるかを検討する。これは主にDX推進組織が行う。両者を経て「DXコンセプト策定」を実施する。DX推進組織とDXを進める事業リーダーが変革すべき事業・機能の改革の方向性を文書やコンセプトスケッチに落とし込み、方向性を言語化・ビジュアル化する。

出発港に関係者が集い行き先や旅の目的が定まったら、次に行き先までの航海図が必要だ。つまり、DXの実行計画である。

MRIでは「DXジャーニーマップ」として実行計画を策定している。経営戦略・事業戦略、および関連する業務・システムの状況や課題を、5つの観点(UX、オペレーション、ビジネスモデル、システム、組織)で整理・拡張・再構成。互いを包括的・有機的に推進していくための道程を定めている。

その際「DX推進ガイドライン」まで落とし込むことで、全社DX推進の実効性が上がる。各事業部がDX戦略策定時に考慮すべき全社DX共通の考え方を指針として示すとともに、DX推進において留意すべき事項(推進体制、ITガバナンスの観点など)をガイドラインとして整備する。社員のDX推進に対する理解・風土醸成や、DX担当者の変更による推進力への影響を極小化するうえでも、有効な一手となる。

現在地を確認し、軌道修正するマネジメント

ここまで丁寧にやらなければならないのかと感じる方もいるかもしれないが、考え抜いた施策体系の中で、成功体験を積み重ねていくことで初めて実現するのがDXだ。旅は長いものとなる。

とはいえ、DXの取り組みを始めてから2~3年が経過し、DX投資の合理性や成果が気になる経営層もいるだろう。それらをどう判断したらよいのだろうか。経過をしっかりウォッチし、芳しくない点があればどんな手を打てばよいのかを、経営者やDXを担う中心メンバーがマネジメントできる枠組み(マネジメントシステム)をつくることが大切だという。

「システムが変われば業務も変わります。すると人材育成の方法や組織のあり方も変わるわけで、DXのステージが1つ進む(航海が1つ先のマイルストーンに到達する)ごとに、企業としてのステージが1つ変わっていくものです。その変化を見極めながら、変革に向けて有効に舵をとっていくことが重要で、それをしなければ、結局成行きで進めているだけになってしまいます」(同)

またMRIでは、進捗やKPI(重要業績評価指標)を可視化する「DXスコアカード®」という独自のフレームワークを作成している。DXジャーニー®で設定している5つの領域の縦軸・横軸に対して、施策間の関係性を踏まえて総合的にKPIを設定し、年度より短いサイクルでの評価・見直しを繰り返しながら各施策をマネジメントする。そうして次のビジネスステージへ一歩ずつステップアップし、DXの実現を目指していくものだ。

企業という船を目的地にたどり着かせるためには、さまざまな目的や背景や立場の人間をどれだけよい形で巻き込めるかが重要になってくる。かつ、それぞれが腹落ちする道程をいかに定め、軌道修正しながらも共に進んでいけるかも熟慮すべきポイントだろう。変革に向けて一歩を踏み出したビジネスは、きっと新たな成長軌道に乗っているはずだ。

>>経営課題に向き合い事業の変革を導く「DXジャーニー®」とは

>>変革に至るストーリーを描く「DXジャーニー®

>>DX を実現していく航海図「DXジャーニー®