2期連続最高益「不動産開発ベンチャー」の勝算 高付加価値物件を生み出し続ける「開発力」
開発スピードの速さで
ニーズに素早く対応
不動産投資市場は、かつてなく目まぐるしい動きを見せている――これが、フェイスネットワーク代表取締役社長、蜂谷二郎氏の見立てだ。
「今まで、不動産投資市場の波は5年周期くらいでした。ところがコロナ禍以降、半年から1年で波が来ています。とくに乱高下しているのがホテルやテナント物件です」
同社が主戦場とする東京の住宅市場も、荒波の影響を受けている。全体的には活況を呈しているが、二極化が進行している。キーワードは「ニーズ」だ。
「時代に合わせてニーズは変わります。少し前はオートロックなどの機能性が重視されましたが、今は居室内で、プライベートと仕事をうまく分けるために、小さな書斎などが求められるようになりました。
こうしたニーズに応えている物件の人気は高く、逆にニーズを満たさない物件は空室が発生する傾向にあります。当社は比較的早く対応できていると自負しています」
その理由として、蜂谷氏は開発期間の短さを挙げる。
「大型物件の場合、開発に2~3年かかるのが一般的ですが、当社の手がける物件は8割以上が1〜1年半で完成します。“今ここにあるニーズ”をスピーディーに形にできるのは当社の強みの1つです」
ワンストップ体制で
入居率97.6%を達成
なぜ、スピーディーに物件を開発することができるのか。
「ワンストップサービスを実現しているからです。土地の仕入れから設計・施行、入居者募集、不動産管理まですべてを自社で行っています。これは、なかなかない事業体制です」
不動産機能やゼネコン機能を関連会社に持つ企業はあっても、自社内ではないため意思疎通が難しいと蜂谷氏は指摘する。
「当社では、プロジェクトごとに全セクションの担当者が集まる会議を頻繁に行うことで、タイムラグの発生を抑えています。ただ、この会議のメリットはそれだけではありません。
例えば設計担当者と不動産管理担当者が考える優れた物件の条件は、それぞれ異なる場合があります。繊細でおしゃれな物件を設計しても清掃・メンテナンスがしやすいとは限らないわけです。しかし、設計者が不動産管理担当者とも議論を交わしていれば、管理のしやすさや経年劣化も考慮したうえでデザインを検討できる。『20年先も資産価値が落ちない』よう物件の状態を保てる可能性がより高くなります」
資産価値を長期にわたって維持すれば、当然入居率が高くなる。
「自社管理物件の入居率は97.6%(22年3月現在)に達しています。『ここに住みたい』と入居者に選ばれる物件を生み出し続けるのが当社の使命です。そのため、当社はつねに入居者にフォーカスし、そのニーズに応えられるものづくりをしています」
広告宣伝費が表す
販売戦略
しかし、同社の物件は決して条件に恵まれた立地環境ばかりでなく、変形地や狭小地も多い。蜂谷氏は続ける。
「その土地や想定される入居者の生活動線を熟考した優良な物件を開発すれば、入居希望者は必ずいらっしゃいます。だから当社の社員の約半分は設計と施工で、土地の仕入れや営業は全体の1割もいません。その分、価値を追求したものづくりをしているんです」
実際、23年3月期第3四半期の広告宣伝費は売上高のわずか0.1%程度だ。販売のためにはほとんど広告宣伝をしていないという。だが、買い手は東京のみならず全国に広がっている。
「当社の物件は完成前に売れてしまうので、メディアに物件情報がほぼ出ないんです。
しかもリピーターと紹介がほとんどで、複数の物件を所有されている方も多くいます。そんな状態なので、とくに上場前はお客様から『こんな会社があったんだ』とよく驚かれました」
ニーズに合わせた小口化商品
株式分割を発表
そうやって顧客との関係性が深まるにつれ、蜂谷氏は、より幅広いニーズに対応したいと考えるようになった。そこで新たに開発したのが不動産小口化商品だ。
「当社の物件は1棟平均で約8億円ですので、すべてのお客様が購入できるとは限りませんでした。そこで投資単位を1口100万円、5口から購入可能な小口化商品にすることで、お客様の資産状況に合わせた投資を可能にしています」
23年1月末には、23年3月期の業績予想の上方修正を発表。同時に、株主還元については、年間配当を1株当たり42円から84円に増額することと株主優待制度の廃止、加えて、23年3月31日を基準日として1株を2株に分割することを発表した。
「おかげさまで2期連続最高益達成の見込みが立ち、株主の皆様にしっかり還元できるようになりました。株主優待制度の廃止は直接配当に力を入れるためです」と蜂谷氏は説明する。
東京の住宅市場が二極化しているように、今後は不動産投資事業者も淘汰されていくと予測する蜂谷氏は、「本物だけが残っていく時代になるはずなので、ぜひ当社を見定めてほしい」と胸を張る。
価値提供に重心を置く姿勢とものづくり精神が、どのような針路をたどっていくのか、今後に注目だ。
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