協和キリン「グローバル連携」を加速させた変革 Teams Roomsを普及させたIT部門の工夫
海外メンバーの常時参加でWeb会議が基本に
高度な技術とユニークな視点で高品質の医薬品を開発・提供している協和キリン。従業員数は5982人(連結、2022年末現在)で、アンメットメディカルニーズ(UMN/有効な治療方法がないもしくは治療満足度が足りない疾患に対する医療ニーズのこと)を満たす医薬品をグローバルに展開している。
「近年、グローバル展開を拡大させているため、組織の見直しを進めています。私たちの所属するクラウド&グローバルインフラストラクチャーグループも、日本だけでなく海外のメンバーが組み合わさった体制となっています」
そう話すのは、ICTソリューション部の渋谷正吉氏。国内外のコラボレーションが増えたことで、国をまたいだメンバーによるWeb会議が日常的に実施されるようになったという。
「パンデミック前の会議は対面がほとんどでしたが、海外メンバーが常時参加するようになったことで、全員が会議室にそろう状況は今後もないだろうと考えました。Web会議が当たり前になるならば、もっと臨場感が欲しいですし、参加者同士の親近感が湧くようにしたいと思ったのです」
パンデミックに突入してすぐ、Web会議を会議室でやることの難しさに気づいたのも大きかったと渋谷氏は振り返る。
「一言でまとめれば、煩わしさがありました。まずセットアップです。ハウリングが発生するので、会議室に何名かいるとマイクとそのためのケーブルをセットする必要がありました。スムーズにつながらなかったり、動かなかったりすることも多く、1台のパソコンの近くに集まらざるをえないことも多かったんです。そのために10分早く会議室に来ている人もいましたし、ネットワークも安定せず『これなら家でやったほうがいい』という声もIT部門に寄せられていました」
Teams Roomsは非言語コミュニケーションも実現
そうした課題を解決するため導入したのが、音声を自動的に最適化し、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションと同様の臨場感が得られる「Teams Rooms」だ。
「Microsoft Teamsが社内標準のプラットフォームだということと、すでに導入していた海外拠点から『特別な教育を受けなくても簡単に操作できる』と勧められていたのが決め手となりました。また、顧客である医療機関は別のWeb会議システムが使われていることが多いので、サードパーティサービスが利用できるのもポイントでした」(渋谷氏)
注目は、導入が2020年に発令された緊急事態宣言中のタイミングだったにもかかわらず、パンデミック対応だけを目的としなかったことだ。ICTソリューション部の洪 允智氏は、その理由についてこう話す。
「オフィスに人が戻ってくる可能性も考えて、持続的に快適なWeb会議ができる環境を整えるべきだと思いました。それに、緊急事態宣言中で人がいないので、導入が業務を妨げるおそれがないのもチャンスだと考えました」
ただ、問題もあった。緊急事態宣言中のため、オフィスへの出入りも自由ではなかったのだ。本来ならば会議室の寸法など細かいチェックをするべきなのにできず、写真のみで設置のやり取りを進めた。日程調整もうまく進まなかったが、Teams Rooms導入を支援したSBテクノロジーが柔軟に対応した。
「制限された状況の中で、機材のメーカーや設置業者など多数の人と緊密なコミュニケーションを図るのは大変でしたが、SBテクノロジーさんの適切な調整のおかげでスムーズに運用開始できました」(洪氏)
運用にこぎつけたTeams Roomsの使い心地は上々のようだ。
「予約さえしておけば、ワンタッチで会議が開始できる手軽さがいちばんのメリットだと思います。また、コミュニケーションには非言語的な部分が重要だということを私自身再確認できました。音声だけでなく表情や、会議室の雰囲気などからいろいろな情報が伝わってくると実感しています」(洪氏)
まるでガラパゴス携帯からスマートフォンに変わったときのように、利便性を享受しつつ存在が当たり前になっていったという。
「社内からはTeams Roomsが設置されていない会議室を使ったときに非常に不便だったという声もありました。『かえってTeams Roomsのよさがわかった』と言われて、導入を拡大していかなければと思いました」(洪氏)
IT視点を排除し、ユーザーに寄り添うITサポート
洪氏の言葉どおり、現在は当初の倍以上の会議室にTeams Roomsを導入している。見逃せないのは、ただ導入して終わりではなく、ICTソリューション部が社内への周知と啓発にかなりの力を注いでいる点だ。
まずは社内イントラネットでの告知。「出社したついでに試してみてください」と無理なく体験しやすい導線を用意しているのが巧みだ。関係部門や日本国内の拠点を対象にデモンストレーション付きのオンライン説明会も開催。テスト機の手配をして直接操作できるようにも工夫した。
「ユーザーとしては、利用方法や不具合への対処が最も不安になると思いますので、マニュアルを2種類用意しました。1種類は、その場で見られるように紙1枚のクイックマニュアルです。参加方法や共有ボタン、リモコンの説明など最低限のポイントを絞り込みました。より詳しい情報にアクセスしたい人のための詳細バージョンは社内イントラネットにアップしています」(洪氏)
導入当初は会議への立ち会いを要望されることも多かったというが、アピールする機会と考えて積極的に協力したという。
「Teams Roomsは有線でネットワークにつながっていることもあってか、通信が不安定だというクレームは今まで一度も入っていないです。無線LANからの接続では不安定なこともあるので、そこをアピールすることもあります」(洪氏)
そこまでするのは、すべての従業員に便利に使ってもらいたいという願いと、各拠点の設備担当に余計な負担をかけないようにという配慮からだ。渋谷氏は、ICTソリューション部としてのスタンスを次のように説明する。
「IT視点で考えないよう、つねに心がけています。ユーザーの目線に立ち、引っかかりそうなポイントを抽出したFAQはどんなソリューションでも用意しています」
Teams Rooms活用のイノベーション空間を創出
そうした工夫が、ユーザー体験を高め、パフォーマンスを発揮できるようにするのは間違いない。また、ICTソリューション部のスタンスがそうやって伝わることで、新たな施策が展開しやすいメリットもあるようだ。
「Teams Roomsで実現できるコラボレーションをイノベーション創出にも生かしたいと思い、会議室を活用した『イノベーションラボ』を立ち上げたのです。ホワイトボードも置いて、画面と近い所に席の輪をつくってリモート側も一体感が得られるようにしました。アピールする動画を作成し、体験ツアーを展開したところ、非常に好評です」(渋谷氏)
これらの取り組みには、導入を支援したSBテクノロジーの藤崎 翼氏も舌を巻く。
「協和キリン様はユーザーに寄り添うことで、TeamsおよびTeams Roomsの利活用を推進されています。いくら優れたソリューションでも、導入だけではなかなか十分な利活用ができません。クイックマニュアルや動画での案内など、使いたくなるような導線を用意するサポートはすばらしいですね。情報システム部門やIT部門でうまく周知・啓発できず悩んでいるお客様も多いので、SBテクノロジーとしても、今後は協和キリン様での学びを基に導入から活用までご支援していきたいと考えています」
藤崎氏が指摘するように、先進的な取り組みを次々に行っている協和キリンは、さらなる高みを目指している。
「会議室の理想形は、区切られた場所ではないと思っています。Teams Roomsをさらに有効活用して、一人ひとりが最大のパフォーマンスを出せる場所から参加しているのをシームレスに結び付け、イノベーションを生み出す場にしていきたいですね。そうすることで、私たちが目指す『人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値の継続的な創出』が実現できると確信しています」(渋谷氏)
社内をシームレスにつなぎ、社会を変える基盤としてのポテンシャルを持つTeams Rooms。単なる会議室ソリューションではなく、企業変革のドライバーとして活用される例が増えていきそうだ。
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