プログラミング不要「ノーコードツール」とは何か 企業のDX推進「リスキリング(学び直し)」で注目

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アステリア 常務執行役員 熊谷 晋 氏、RPAテクノロジーズ 代表取締役 執行役員社長 大角 暢之 氏、AIinside バイスプレジデント 東北大学特任准教授 高橋 蔵人 氏
アステリア 常務執行役員 熊谷 晋 氏(写真中)、RPAテクノロジーズ 代表取締役 執行役員社長 大角 暢之 氏(写真左)、AI inside バイスプレジデント 東北大学特任准教授 髙橋 蔵人 氏(写真右)
リモートワークや働き方改革によって、業務のDXが進展している中、注目されているのが「リスキリング」という概念だ。なぜ「リスキリング」が今必要とされるのか。そして、そこで広がりを見せているという「ノーコードツール」とは何か。リスキリング・ポータルサイト「NoCode Gate」を提供するアステリア常務執行役員の熊谷晋氏、そして同社のパートナーであるRPAテクノロジーズ代表取締役 執行役員社長の大角暢之氏、AI inside のバイスプレジデントで東北大学特任准教授である髙橋蔵人氏の3人が語り合った。

 

今なぜ「リスキリング」が注目されているのだろうか。リスキリングとは、「学び直し」。変化する業務内容に対し、新しい技術や知識を身に付けることを指す。アステリアの熊谷晋氏は次のように語る。「労働人口の減少により生産性の向上が問われる中、いかにITを活用していくかは日本企業の大きな課題となっています。そのため推進されるDXですが、実際にはDX人材は大きく不足しており、非IT人材をDX人材に転換させる取り組みとして、"学び直し=リスキリング"の重要性が高まっているのです」。RPAテクノロジーズの大角暢之氏もこう語る。「2000年代以降、経営にはITが欠かせなくなりました。業務を効率化させるためにITを開発し、導入することにフォーカスしてきたわけですが、今そうした分業の弊害が出てきているのです。ITをハンドリングする人材が完全に専業になっており、ビジネスとの距離が遠くなっているということです。DX人材をなかなか採用できていない企業も多く、ITを使える人材の育成は喫緊の課題になっています」。

AI inside の髙橋蔵人氏も言う。「企業のDXにおいて、注目される1つがデータ活用です。データ活用による新たなビジネスの創出や、業務の効率化のためには、企業の皆さんが苦労して蓄積してきた知見をデータに転換し、データから新たな価値を生み出すAI開発・運用プロセスの内製化が欠かせません。そのために非IT人材のリスキリングが必要なのです」。

DX人材の育成にかかるマネーコストと、タイムコスト

では、リスキリングを進めるうえで、企業にとって課題となるものとは何か。熊谷氏が指摘する。「DX人材の育成は、費用的にも時間的にもコストがかかるのが現状です。さらに、プログラミング言語を学ぶとなると難易度も高い。そこで私たちは非IT人材をDX人材へ速やかに転換していくノーコードツールを提供し、効果的なリスキリングを推奨しています」。

ノーコードツールを使えば、プログラミング言語を使用し、ソースコードを書かなくてもソフトウェアやWebサイトの開発を行うことができるため、非IT人材でも業務上のツールを開発できる。

「AIはDX推進に欠かせません。AIをビジネスに活用すると、短期間で大きな成果を生むことがわかっています。しかし、なかなか活用が広がらない。それはAIについて正しく理解しているビジネスユーザーが少ないからです。AIを活用するには、深い知識を身に付けるのではなく、AIで"何ができるか"を理解するのが重要です。ノーコードツールがあれば、特別な知識がなくても、まずそれを体験として理解することができます」(髙橋氏)

「忘れてほしくないのは、リスキリングもDXも、ビジネスを行うための手段であり目的ではないということです。重要なのはビジネスで付加価値を生み出すというゴールであり、ほかにも解決すべき課題があります。例えば、熟練のスキルを持った人たちが高齢化し引退することで、生産性が低下するというような課題です。また、地方では若者も少ない。だからこそデジタル技術を使って、誰もが熟練者並みのアウトプットができるような仕組みをつくっていくことが大切です。そこでノーコードツールを活用し、リスキリングを進めてDX人材を内製化していくことが有効な手だてとなるでしょう」(大角氏)

ノーコードツールがビジネスを加速させる

アステリアでは、ノーコードツールを提供するだけではなく、ノーコードツールを効果的に学習できるサイト「NoCode Gate」を22年4月よりオープンさせている。熊谷氏が説明する。

「各企業の皆さんが、スムーズにリスキリングを進め、速やかにゴールを達成できるよう、網羅的に使えるような体裁にしており、これまで私たちが蓄積してきたトレーニングコンテンツのすべてを無償で提供しています。まずは知っていただき、試していただくことを基本方針としており、どんなツールをどう使えばいいのか。まずはそこから体験していただければと考えています」

実際にノーコードツールをビジネスで活用してきた大角氏がそのメリットをこう語る。

「日本のIT投資の内訳を見ると、ビジネスの付加価値を上げるための戦略的投資は約3割にすぎず、残りの7割が既存のシステムの保守運用なのです。本来であれば、この割合が逆なのが理想です。そうした状況を覆せない原因の多くはブラックボックス化した膨大なプログラミングや、それに伴う人的なやり取りです。しかし、ノーコードツールを使用することでプログラミングは必要なくなり、ビジネスに付加価値をつけるための投資に集中することができます」

髙橋氏も続ける。「私はそもそもエンジニアではなく、コンサルティングファームの出身です。しかし、そんな文系の私でも4年前にノーコードツールでAIを扱うことで、私自身がビジネスデータから価値を見いだせるAI人材になることができ、大学で次世代人材の育成に携わる教育者へと活動の幅を広げることができました。いち早くノーコードツールを使ったことで、多くの企業・団体のビジネス変革に関わることもでき、リスキリングによる新たな価値創出につなげられています」。

DX人材の育成に欠かせないツールであるノーコードツールは、今後ビジネスでどのように活用されていくのだろうか。

「現在、企業が抱える多くの課題に対して、ノーコードツールを用いたDX人材の内製化は非常に果実が大きいと思います。クルマを運転するために教習所が必要なように、リスキリングのためにはノーコードツールおよびそのトレーニングツールが必要です。私の仕事であるRPA(ロボットによる効率化)でもノーコードツールは一丁目一番地。効果的に果実を得るためにも、ノーコードツールの事例を共有していくことが大事になってくるのではないでしょうか」(大角氏)

最後に熊谷氏がノーコードツールの将来をこう語る。「ノーコードツールが発展したことで、ITの恩恵を誰もが享受できるようになりました。これからはノーコードツールがインフラのように当たり前のものになっていくはずです。とくにDXが進んでいない中小企業や地方の方にも、ぜひ活用していただければと思っています」。

リスキリング・ポータルサイト「NoCode Gate」はこちら

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