競争の激しいIT業界で勝ち残るための選択とは 強みを生かし、シフトチェンジで躍進を狙う
すでにある強みを伸ばし、さらなる成長に向かうJSOL
東京・九段下駅から徒歩1分という好立地にありながら、レトロモダンなデザインが特徴的な九段会館テラス。このオフィス棟に入居しているのが、ITコンサルティングからシステム構築・保守運用を行うJSOLだ。2006年に、日本総合研究所の三井住友フィナンシャルグループ外の顧客に向けたIT事業の分割によって、ITサービス専業の「日本総研ソリューションズ」が発足。その3年後、NTTデータグループの資本参加を受けて同社が誕生した。 NTTデータ執行役員を経てJSOLのトップとなった永井氏は、就任時の心境を次のように明かす。
「JSOLに着任する前、何よりもまず会社の現状把握を急ごうと考えました。ネガティブポイントを直して成長に向かうのか、それともポジティブな部分をより伸ばしていくべきか、迷っていたからです。しかし実際に自分の目で見てみると、JSOLの強みはすでに各分野に備わっていることがわかりました。これらをさらに伸ばしていき、かつ社会に伝えていくという前向きなアプローチを取ることができれば、今まで以上に大きく成長していける会社だとわかり、安心しました」
強みを生かすための“シフトチェンジ”
では、その強みとは何か。永井氏が真っ先に挙げたのは「人財力」だ。前身である日本総合研究所は、三井住友フィナンシャルグループに属する。金融機関のシステムは「絶対に止まってはいけない」ことが大前提だ。JSOLにも、業務コンサルの視点と品質を最優先に考えるカルチャーを引き継いだエンジニアが多く在籍している。
「IT関連の仕事というと、人の手や目を介さない、スマートで洗練された業務内容をイメージされることがあります。しかし、システム開発業務はチームワークや顧客との相互理解が肝要で、仕事の大部分は人とのコミュニケーションが占めているともいえます。JSOLは、ここがとても強いんです」
もちろん、技術力も強みの1つだ。JSOLには、長年蓄積してきた業務ノウハウやテンプレート、フレームワークにおける開発ノウハウがある。エンジニアはそれを武器にして顧客と深いコミュニケーションを重ね、適した提案をしていくことで、各業界におけるより深い業務知識を吸収することもできる。一般にITシステムの導入というと、標準的なパッケージに業界ごとのテンプレートをアドオンするケースが多いが、JSOLには特定の“得意業界”がある。「例えば医薬品業界や放送業界では確固たる地位を築いていて、テンプレートの数や質は他社に負けないと自負しています」(永井氏)。
人財、技術、マーケット。これらの強みをもっと生かすには、どうすればいいのか。永井氏は「スピードアップが成長のカギ」と語る。
「今は、とにかく変化のスピードが速い時代。一昔前とは比べものになりません。だから、顧客企業のニーズに合わせて高品質なシステムを開発することに長い時間をかけていると、その間に顧客側が変化してしまう。必要なのは、より効率的な開発だと考えています。もちろん、これまで築いてきた強みを捨てる必要はありません。新車に乗り換えるのではなく、ベースはそのままでシフトチェンジするイメージです」
社員が自律的に動けることが、スピード感の肝
JSOLは現在、シフトチェンジするための施策を複数展開中だ。永井氏は次のように語る。「社会環境は流動性、不確実性の中にあり、普遍的で明確な目標やプロセスはそもそも存在しません。この流動性、不確実性を見極め、個々の社員が『自律的』『主体的』に判断し、臨機応変にビジネスを進めていくことが、スピード感を持った経営の大前提です」
正しい選択のための判断基準=価値観を明確にし、それを共有することが経営の役割となる。そして、その判断基準や価値観を浸透させるための施策の1つが経営理念の改定だ。それぞれのステークホルダーに向けたメッセージを整理し、社員向けの「バリュー(私たちの価値観)」に加え、「パーパス(社会の中での存在意義)」「ミッション(顧客への約束事)」を定めた。これらは一見、スピードとは関係ないように思えるが、トップが方向を示すことが重要だという。
「最もスピードが速いのは、現場の社員一人ひとりが自律的に判断して動ける組織です。ただ、それぞれが別の方向を向いて動くと、組織としてバラバラになってしまい、結果的に一歩も前進していないという事態を招きかねません。ですから必ず、判断基準や価値観のすり合わせを小まめに行っていきたい。経営理念として会社が向かう方向性を明示していれば、それが大きな目印となって、社員一人ひとりが自律的に判断できるようになります」
強みの人財も、さらなる強化に向けてスピードアップを図る。即戦力獲得を狙いとする、キャリア採用の強化だ。顧客のニーズも多様化している現在の状況によりマッチするには、多様な考え方を持つ社員が欠かせない。
「即戦力となる優秀なエンジニアに興味を持ってもらうには、JSOLのよさを知ってもらうことが第一歩となります。一人ひとりが自律的に働ける環境であることを、ぜひお伝えしたい」と語る永井氏。パーパスを定めたことで、社会貢献性の高さを社員がより強く実感できるようになっていくとみている。
単に高いスキルやノウハウを持っているだけでなく、仕事に対する志を持った社員が集うJSOL。新オフィスを舞台に、独自の強みをさらに加速させていく。