GXで構築する脱炭素と強靱さを兼ね備えた未来 エネルギーの安定供給と地球環境保全の両立へ

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石炭・石油・天然ガスなど化石燃料への依存から脱却し、クリーンエネルギー中心の経済・社会構造へ転換を図るグリーントランスフォーメーション(以下、GX)。日本のGXもさらなる加速が必要だ。エネルギー資源を海外からの輸入に頼り、その脆弱性が指摘されてきた日本のエネルギー構造はGXでどう変わるのか――。政府が2月にまとめた「GX実現に向けた基本方針」(以下、GX方針)は、今後10年のロードマップを示している。

世界各地で気候変動(地球温暖化)の影響とされる異常気象が相次ぎ、温室効果ガスの排出削減は世界共通の課題だ。日本も2050年のカーボンニュートラル達成を宣言、30年度に温室効果ガス46%削減(13年度比)という中間目標を掲げている。

省エネの徹底、再生可能エネルギーの拡大と次世代技術の開発・普及

まずは、省エネの徹底が必要だ。省エネは、カーボンニュートラルや生産性向上とともに、エネルギーコストの抑制にも資するものであり、重要性は増している。政府は、家庭向けには断熱窓への改修や高効率給湯器の導入など住宅の省エネ化に対する支援の強化、企業向けには複数年の投資計画に切れ目なく対応できる省エネ設備投資に対する支援を創設することなどの政策を推進するとともに、省エネ法による規制も活用しながら、家庭・業務・産業・運輸の各分野において、規制・支援一体型で大胆な省エネの取り組みを進めていく方針だ。

そのうえで、期待されるのは、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(以下、再エネ)だ。発電電力量全体に占める再エネ比率を20年度の約20%から30年度に36~38%に引き上げ主力電源化する、というエネルギー基本計画の目標達成が、新たなエネルギー構造のカギとなる。

そのため、公共施設、住宅、工場などへの太陽光パネルの設置拡大や洋上風力発電の立地調整のための地元理解の醸成などに取り組み、最大限の導入拡大を推し進める。また、塗布や印刷で作ることができる太陽電池など日本発の次世代技術の開発普及も重要だ。

化石燃料との混焼が可能で、燃やしてもCO2を出さない水素・アンモニアも次世代エネルギーとして注目されている。技術実証も進められており、25年の大阪・関西万博では水素やアンモニアで発電した電力を会場に供給することを目指している。

カーボンニュートラルの実現と安定供給、両立の要は

30年度温室効果ガス46%削減達成には、化石燃料以外のエネルギーによる発電割合を6割程度に高めることが必須だが、水素・アンモニアは30年度に電源構成1%程度を目指し、技術開発を進めている状況であり、30年度の再エネ比率を36~38%とすると2割強不足する。

この2割について、GX方針では、出力が安定的で、かつ発電時にCO2を出さない原子力の活用を挙げている。安全性の確保を大前提として、エネルギー基本計画に記された30年度の原子力比率20~22%の確実な達成に向けて、再稼働を進めるとともに、既存原発の運転期間延長や、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発、建て替えの具体化に取り組む方針を示している。

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出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2010年度、2020年度確報値、2030年度におけるエネルギー需給の見通し

もちろん、安全神話に陥ってしまった過去を反省し、規制にとどまらず安全性の向上を目指すことや、国が前面に立って対応し、国民とのコミュニケーションを深化、地元の理解も得ることが重要だ。

産業革命以来の化石燃料依存から脱却する大変革となるGXの成否が日本の将来に与える影響は大きい。GXでどのような形のエネルギー需給体制を構築するのか。議論の深化が求められている。