「バックオフィス業務の外部委託」伸びている理由 BPO事業が毎期増収しているコンサルの実力
国内のBPO市場規模は緩やかに上昇
BPO市場が拡大を続けている。矢野経済研究所の調査(※1)によると、2021年度のBPOサービス全体の市場規模は前年度比3.0%増だ。
※1 出典:株式会社矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査(2022年)」(2022年11月8日発表)
なぜ企業のアウトソーシングニーズが伸びているのか。福田氏は次のように解説する。
「10年以上前は、バックオフィスの単純処理を中国の企業に出すケースが多かったですね。そのときの主目的は、コストの削減でした。現在もコスト削減のニーズはありますが、近年強くなってきた要因が『人手不足』です。少子高齢化で、日本は構造的な人手不足に陥っています。また企業は貴重な人的リソースを、競争力の源泉である本業に集中させたい。そこでバックオフィス部門の足りない人員を補うため、BPOを活用して業務そのものを外部に切り出しているわけです。この傾向は当面続くと考えられます」
市場全体に追い風が吹いているが、BBSグループのBPO事業は2022年3月期の売り上げが前年度比5%増と、市場の成長率を上回る伸びを示している。BBSは監査法人をルーツに持つ、経営会計システムに強いコンサルティング会社。いわゆる上流のコンサルティングのみならず、システム開発や、実際に業務を代行するBPOまで幅広く手がけている。そしてBPO事業の柱となるのは、経理財務や人事総務の分野だ。
専門家の知見をシェアして高度な業務処理を実現
BBSはBPOセンターを日本国内に6拠点持っており、それぞれのセンターに特長がある。例えばBBSがシステムを所有して業務を請け負うセンターもあれば、顧客が使っている既存のシステムの運用まで含めて請け負うセンターもある。また、社会保険事務所と連携するセンターや、バイリンガル対応が可能で外資系企業の利用が大半を占めるセンターもある。
さまざまなニーズの中でも、とくにBBSが力を発揮するのは「高度な業務処理」だ。「例えば決算・固定資産の分野は業種によって特殊な処理が必要で、専門的な知識が求められます。当社はグループの成り立ちから公認会計士や税理士との太いネットワークを持ち、随時ノウハウを共有しているため、こうした案件もスムーズかつ確実に進めることができます。お客様からは、単純な処理のみならず高度な処理にも対応できる点を評価いただいています」。
グループ内にセキュリティー会社を有している点も見逃せない。BPOではその業務の性質上、顧客からさまざまな重要データを預かる。その特性上、物理的そしてサイバー上でも万全なセキュリティー体制の構築が求められる。この分野は高度な専門知識が必須であり、外部に委託するのが一般的だが、BBSはグループ内にGSX(グローバルセキュリティエキスパート)というセキュリティー専門の上場会社を持つため、自社で賄える。
「グループ内で協業すると、スピードやコスト面で有利になるだけでなく、『将来データ量が増えると、ここのセキュリティーを強化しておいたほうがいい』と中長期的な視点でアドバイスをもらえます。単純に現時点のセキュリティーレベルを判断するよりも、ずっと建設的に取り組めます。この点は、当社ならではの強みです」と、福田氏は胸を張る。
BBSのBPOサービスには魅力が多いが、それが顧客の成長にどのように結び付いているのか。福田氏は、サントリーグループのシェアードサービス会社、サントリービジネスシステムの事例を挙げてくれた。
「サントリービジネスシステム様からは、決算を中心に税務、財務、予算編成などの業務を請け負っています。サントリー様のグループ再編があると、単に会社コードが変わるだけでなく、業務フローも変わります。そうなったときに従来の決算期日を守れるように備えたいとご相談を受け、いったんお客様で業務を引き取り、新しい業務フローとマニュアルを戻していただくことで、スムーズな変更対応を実現できました」(福田氏)
企業を「High Value BPO®️」でサポート
BBSにしてみれば、当然、数多くの業務を受けたほうが売り上げにつながる。しかし同社が目指すのはあくまでも「顧客の成長に貢献すること」。顧客の目的を理解したうえで、業務の一部を顧客に返したほうがいいと判断すれば、そのように提案するのがBBS流だ。
例えばミサワホームからは経理財務業務を請け負っているが、BBSの人員をミサワホームに置き、ミサワホームも社員をBBSのセンターに派遣している。「BPOで相互に人の交流があるのは珍しい。こうした関係を築けたのは、お客様と一緒に汗をかいていきたいという私たちの思いに共感いただけたからだと考えています」(福田氏)。
BBSは業務効率化を図るべく、技術の向上をさらに進めて、近い将来にBPOの完全自動化を実現させる考えだ。背景にあるのは、顧客の「経営会計」――経営の意思決定に資するようにバックオフィス系データを可視化すること――の実現だという。
「経営会計とは、突き詰めると『将来のB/S(貸借対照表)を作ること』だと考えています。経理の仕訳や人件費の計算などの具体的な業務処理は、当社が支援できます。ただ、今のB/Sを読み解き、それを基に将来のB/Sを創造するのはお客様自身。どこにどのような投資をして、どの事業を伸ばすのか、お客様には経営の本質にかかる検討に専念していただけるよう努めます」(福田氏)
会計を、単にこなす業務ではなく「経営に資する、価値のある業務」にするために、BBSの挑戦は続く。